ノアニール②
「ええ、きっと大丈夫ですよ」
とノアニールさんが私に手を差し伸べた。
「荷物をお持ちします」
「い、いえ、これくらいは自分で持ちます!大丈夫です!」
何から何まで人に頼る訳にはいかない。
自分でやれることはしなきゃ…
「そうですか。なら、日が暮れるまでに宿へと行きましょうか?」
とノアニールさんは手を引っ込め、私を案内するように歩き出した。
私もそれについて行くように歩き出す…はずだった。
…でも、身体が動かない。
「…どうかしましたか?」
私の様子にノアニールさんが心配して立ち止まり、こっちを見た。
「…い、いえ。急に身体が…あれ…?」
よく見るとアクエリアスの全体が少し青く光っていることに気がついた。
…もしかして、アクエリアス?
『だめだ…』
「えっ…?」
アクエリアスの言葉に思わず訊き返す。
『こいつについて行ったらだめだ…』
…えっ?
アクエリアスの言葉に思わずノアニールさんを窺う。
ノアニールさんは何事もなかったようにただ私を見つめていた。
アクエリアスの声は私にしか聞こえない。
少しノアニールさんを警戒するようにアクエリアスにその真意を聞くため、剣を軽く爪でコンコンとする。
『…こいつからは何やら殺気を感じる。おそらくミキヒコの仲間なんかじゃない…』
アクエリアスの言葉にもう一度ノアニールさんを見た。
そして、思わず後退りする。
「おや?どうかしましたか?」
ノアニールさんの表情から優しさが消える。
「…あなたは本当に六倉さんの言っていた人なんですか?」
…さっきもあんな目に遭ったんだ。
アクエリアスの言葉にノアニールさんを疑わずにはいられない…
「…どうやら、あなたには強い味方がいるようですね。もしかするとあの人はこういうことも想定していたのでしょうか?」
ノアニールさんの言葉に更に二歩三歩と後退りした。
「…じゃあ、やっぱり六倉さんの知り合いというのは嘘なんですね?」
恐る恐る訊いた。
「いえ、嘘じゃありません。私は確かにロックさんからあなたのことを頼まれていました」
ノアニールさんが首を横に振って否定する。
「…なら、どうして?」
「簡単なことです。私がロックさんを裏切ったということですよ」
そう言って、私に向けてノアニールさんが手を伸ばした。
するとたちまち私を囲むように炎が立ち上がる。
「きゃっ!?」
その熱さに思わず地面に座り込む。
『ヤバい!逃げろナナミ!』
「に、逃げろって言われてもこんな炎に囲まれたら逃げようがないよ!」
炎は高くまで燃え上がっている。
逃げ場なんてない。
咄嗟に剣とコナンさんから貰った食料の入ったボンサックを大事に抱きかかえて目を瞑った。
熱さが身体中に伝わる。
火は激しく燃えていて、私の制服に今にも燃え移りそうなのが目を閉じていても感じた。
「恨むなら己のファーシルの血を恨むことですね」
炎越しにノアニールさんが冷酷な口調で言った。
…もう、ダメだ。
諦めるようにその場に蹲る。
『ナナミ!』
アクエリアスの必死の声が頭に響く。
その時だった…
私を今にも燃やそうとしていた炎が一瞬にして消えたのだ。




