ノアニール①
それから繁華街をひと通り歩き回った。
隈なく歩いたかと言われれば疑問だが、人を探すという点では充分だと自分でも評価する。
そして、再び広場へと戻ってきた。
また、さっき座っていたところに腰掛けて水を飲む。
空を見上げると先程よりも随分と日が傾きかけている。
「どう?何か感じた?」
腕に抱きかかえている剣に問いかけた。
周囲には私の姿しかないので、今は遠慮なく声を出す。
『いや、全く感じない。ミキヒコのやつちゃんと助っ人を手配していたのか?』
とアクエリアスの言葉に少し不安を覚える。
それを察したのかアクエリアスが続けた。
『…大丈夫だ。ミキヒコならしっかりと先を読んでいる筈だ。あいつがこの町にいると言ったのなら必ずいる』
とアクエリアスが断定してみせた。
それにこくりと頷いた。
とはいえ、日もそろそろ暮れそうになってきている。
…必ず会えると信じてはいるが、今日は無理かもしれない。
そのときはこの広場で一晩を過ごそう。
また、変なのが寄ってこないか心配だけど、今はアクエリアスもいるし、宿に泊まるお金なんてないから仕方がない。
と少し諦めかけて俯いていた時だった。
目の前に誰かの足が見えた。
…誰!?
思わずバッっと顔を上げる。
するとそこには一人の黒髪の男性が立っていた。
その男性の格好は町の人とは違って、魔導士が着る白いローブのようなものを身に纏っている。
ルーラー…?
もしかして、この人が六倉さんが言っていた人?
男性は私と目を合わせるとにこやかな笑顔をみせた。
六倉さんよりも随分と若い男性だ。
「もしかして、あなたの探し人は私ではありませんか?ミス・ナナミ」
その言葉に思わず歓喜してしまう。
「そうです!あなたが六倉さん…じゃなかったロックさんの言っていた人ですか?」
と嬉しさのあまり、勢いよく立ち上がって訊ねた。
「ムツクラさんでも分かりますよ。はい、初めまして私がロックさんからあなたのことを頼まれていたルーラーのノアニールです」
とノアニールさんが私が安心できるような笑顔と口調で説明する。
「…良かった。やっと会えた…」
安堵しすぎて再び石の上に腰掛けた。
「すみません…私も早く来なければと思っていたのですが色々と立て込んでいて、さっきこのメキラに着いたばかりなんです」
ぶんぶんと首を横に振った。
「こうして無事に来てくださっただけで充分です。良かった…本当に良かった」
「その様子だと大変だったようですね…今日はこの町の宿に泊まって、明日の朝からファーシル城を目指しましょう」
とノアニールさんが優しく私の頭を撫でた。
「随分と汚れている様子ですし、宿でシャワーを浴びて綺麗にしないといけませんね」
その言葉に更に心が安堵する。
少し自分の匂いを気にしていたのでノアニールさんの口から出たシャワーのワードはかなり嬉しい。
「そうだ!?六倉さんは?六倉さんは大丈夫なんですか!?」
再び立ち上がって、ノアニールさんに問いかけた。
「…わかりません。こちらの世界に来た瞬間、イシスに奇襲されたことまでは私も知っていますが、そのあとのことまでは…ただ、あの人なら大丈夫だとは思います。それはあの人をよく知る私が保証しますよ」
その言葉に再び安堵する。
「私たちがファーシル城を目指して着く頃には、おそらくあの人もファーシル城に到着していますよ」
「…そうですよね。きっと大丈夫ですよね…」
少し不安はあるけれど、きっと六倉さんなら大丈夫だと自分に言い聞かせる。




