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SEVENS OCEAN  作者: おきゆむ
5.ブルー
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36/76

なないろのブルー③

「…あの、すみません。私、今お金持っていなくて、必ず返しに来ますから、それまで待ってもらえますか?」


と店主にそう言って頭を下げた。


「いや、もう頂いてるよ。あの男は自分の分と一緒に多く代金を置いて行ったのさ。いやぁ、あまりの格好良さに男の私でも惚れてしまいそうだよ」


店主はそう言って大笑いする。


…何から何まで助けてもらった。


また、会えることがあったら、何かお礼をしないといけないなと思った。


とはいえ、今の私に人に何かを出来る余裕なんてある筈がない。


そのためにも早く六倉さんの言っていた人と合流しないと…


…そういえば名前を聞くのを忘れていた。


せめて、名前だけでも知りたかった…


「…すみません。さっきの人って知っている方なんですか?」


と店主に訊ねる。


「いや、初めて見る顔だったな。きっと旅人だなあれは…」


店主の返答に少しがっくりする。


「あれはおそらく、なないろのブルーだ」


私と店主の会話を聞いていたのか、一人の男性客がジョッキを片手にそう言った。


ジョッキの中からは強いお酒の匂いがする。


「なないろ!?なないろってあのなないろか!?」


客の言葉に店主が驚きの声を上げた。


「…なないろ?」


私は首を傾げた。


「知らないのかい?なないろと言えばかつてルーゴフェルベ帝国の支配から数々の王国や町を救った英雄である海賊団レインボーフラッグの幹部のことじゃないか!」


店主がそう熱弁する。


海賊団レインボーフラッグ?


六倉さんからは聞いたことがない言葉だった。


「あの青い髪はその海賊団レインボーフラッグの幹部なないろの一人であるブルーだ。俺は一度、やつらの戦いをこの目で見たことがあるから間違いないぜ」


と客の男が自慢げに語った。


ブルー…


それがあの人の名前。


「そんな凄い人なんですね…」


客の男の話に感想を口にする。


「…いや、正確にはだっただな」


店主が腕を組みながらそう言うと、客の男も共感するように何度か頷いた。


「レインボーフラッグは七年前に解散しているんだ。団長の白雪しらゆきの死によって…」


客の男がそう言って、ぐいっとお酒を飲む。


「…レインボーフラッグがいなくなってから、再びルーゴフェルベ帝国の圧力が増した。このファーシルも例外ではないというのに、未だに王位争いが続いている…いよいよこの国もお終いだな」


店主がそう言って頭を垂らした。


…私はその王位争いの当事者だ。


なんてことは口が裂けても言えない。


まあ、言ったところで店主も客も信じやしないだろう。


「悪いことは言わない。お嬢ちゃんはファーシルを出た方がいい。そうだなヴィアレタンとかいいぞ。あそこは自由だ」


前に六倉さんから聞いた話を思い出す。


ヴィアレタンは世界で最も栄えた王国でそのあまりの豊かさに移住を求めてたくさんの人が訪れると。


でも、私はこのファーシルを出る訳にはいかない。


ロック…六倉さんとまた再会して、ファーシルの城に行かないと…


きっと、そのために六倉さんは私をこの世界へと連れてきたのだから…


…でも、私が行って何かが変わるのだろうか?


違う世界ですら普通に暮らせなかった心弱き人間に一体何が出来るの?


もしかしたら、私はナリア姫ではなくどこかで間違えられてしまったのではないだろうか…


とまたネガティブ思考に心が染まりかけていることに気がついて思わず首をぶんぶんと振った。


「ん?どうかしたかお嬢ちゃん?」


店主が不思議そうな顔をしてこっちを見ていたので、慌てて何でもないと否定する。


「そうだ嬢ちゃん。色々とメシをこしらえてあげるから少し席に座って待ってな」


と言ってカウンターの中へと店主が戻っていった。

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