なないろのブルー①
「てめぇ、何をしやがった!?」
床に倒れている男とは違う方の男が吠えた。
さっきまで私の腕を掴んでいた男は訳が分からないといった表情で床に倒れながら驚いている。
「…どうやら痛い目に遭わないと分からないようだな?」
無理矢理、私を奴隷にしようとした男が少し警戒気味に喋る。
「…さっきは油断したが次はそうはいかねぇ」
と倒れていた男がゆっくりと立ち上がる。
「や、やめてください…争うなら外でお願いします…」
やや、遠慮気味に店主が抗議する。
おそらく店主はあまり金色の髪をした男の怒りを買いたくはないようだ。
「だそうだ。どうする?」
青い髪の男の人が三人に向かって問いかける。
「上等じゃねぇか、表で吠え面をかかせてやる!」
一度は床に倒された男が物語とかであっさり負けてしまう者が言うような台詞を吐いた。
見た目の強さとかは私には到底分からないけれど、何故かこの青い髪の男の人が負けるとは絶対に思えなかった。
金色の髪の男が先に、そのあとについで二人の男たちが店の外へと出る。
そして、青い髪の男の人を外で待ち構えていた。
青い髪の男の人は自分が座っていたカウンター席に置いてあるボンサックと大きい剣を手に取り、カウンターテーブルにお金を置いてから出口へと向かった。
「あ、あの…」
私は一体どうしたらいいのか分からず、店の外へと出ようとしている青い髪の男の人に話し掛けた。
「すぐ終わる。そこで待っていろ」
そう私にひと言告げてから、あいつらが待つ店の外へと出て行った。
店の中にいた客も興味があるのか店の外を窺うように出口付近へと移動する。
私もその人たちのように店の中から様子を窺った。
金色の髪の男の前に二人のがたいのよい男たちがいて、向かい合うように青い髪の男の人が立っていた。
その光景に固唾を呑んだ。
「随分と威勢のいいことだな?私に逆らうとどうなるか体で教えてやろう」
がたいが良い手下の後ろで、金色の髪の男がアクエリアスを右手で振ってパンパンと自分の左の掌に当てた。
…自分では戦わないくせに口だけは達者だ。
ほんと、性格が悪い…
「その剣はあの娘の物だろう?返してもらおうか」
と青い髪の男の人が右手を出した。
「ふん!あの娘は私の奴隷になるんだ。奴隷の物は主人の物だ!」
金色の男が身勝手な言葉を叫ぶ。
「…奴隷商人か奴隷管理者かは知らないが、随分と小汚い方法で金を稼いでいるようだな?」
「小汚くて結構。今の世の中じゃ、まともな商売じゃ稼げない。私が悪いんじゃない、この国が悪いんだ」
男の開き直ったような言葉に嫌悪感を抱いた。
…でも、それだけこのファーシルが荒んでいる証拠だ。
「違うな」
しかし、青い髪の男の人があっさりとそれを否定した。
「この国が荒んでいるのは確かだ。だが、お前の心が腐っているのはこの国のせいではない。まともな商売でも頑張れば稼げるさ。ただ、お前はそれから逃げて楽を選んだだけだ。人を売買するなんていう外道がする行いにな」
その言葉に金色の男の表情がますます醜いものになっていく。
「ごちゃごちゃとうるさいやつだ。この方に楯突くとどうなるかすぐに教えてやる」
青い髪の男の人を見下ろすように手下の一人が拳を鳴らしながら近づいていく。
体格差は明らかだった。
さっき店で床に倒れた男とは別の男だ。
その男の方が強そうに見えた。
それでも青い髪の男の人が負けるイメージがしない。
と次の瞬間、がたいの良い男が宙を舞って後ろ向けに地面に激しく叩きつけられた。
「あ、兄貴!?」
もう一人の手下の男が突然の出来事に驚きの声を上げた。
「…な、何!?」
その後ろで見物していた金色の髪の男がその光景に怯んで後退りする。
一体、何が起きたのか私にも分からない。
気がつくとあの男が飛んでいた。
「二人まとめてかかって来い。剣は使わないから安心しろ」




