ファーシルの教え①
町に着いて初めて町の中を見た時、イメージしていた異世界ファンタジー漫画や小説に出てくる風景とは少し違う印象を受けた。
建物が思いの外、私の知っている世界に近い感じがしたのだ。
といっても日本の建物ではなく、どちらかといえばヨーロッパの建物に似ている。
正直、ヨーロッパのどの国にも行ったこともなければ詳しくもないので、テレビでたまに観たことがあるくらいだし、実際比べると全然違うかもしれない。
あと、馬がついていない馬車が町の中にある道を走っていた。
でも車とは違う。
馬がいないだけの馬車という表現が正解だ。
おそらく「ルウ」の力で動いているのだろう。
前に生活において「ルウ」の力は必要不可欠だと六倉さんが言っていたことを思い出す。
更に「ルウ」の力で荷物を浮かせて運ぶ人もいた。
町を少し歩いているうちにこの町には人が住む住宅街と商売を営む繁華街のような場所に分かれていることが分かった。
「…アクエリアス?」
やや小さめの声で胸に抱えている剣に問いかけた。
しかし、相変わらず返事がない。
仕方ないので六倉さんが言っていた人物と合流しようととりあえず繁華街を彷徨うことにした。
遠くで見た時も大きな町だなと思ったけれど、実際に町の中を歩くと見た目よりも随分と大きくて栄えている。
町を歩いていると、すれ違う人たちが私をチラチラと見てくるのを感じた。
町の人はこの世界のイメージに合う服装をしているのに対して、私は学校の制服にそれと不釣り合いの剣を抱きかかえている。
私の世界で言えば、町中で一人コスプレをしているようなものだ。
この世界の服装に関しては、六倉さんの骨董品店にもいくつか男物と思われる服が飾られていた。
なので、初めて見た時にはさほど違和感はなかった。
服装に関しては異世界ファンタジーものに出てくるような服装にどちらかといえば近い。
でも、それよりもそれぞれに個性があるようにも思えた。
六倉さんが言っていた人を早く見つけなきゃ…
町を歩いているうちに段々と強いアウェイ感を感じてきて、肩身が狭い気持ちになってきたのだ。
せめて、アクエリアスと話せればそんなことは思わなかっただろう。
「ねぇ君、面白い格好をしているね?どこから来たんだい?」
と不安に苛まれそうになっていた時、ふと背後から声を掛けられた。
振り返るとそこには一人の男性が立っていた。
金色の肩まである髪に少し上品そうな服装を着ている男性だ。
突然、知らない人に話掛けられて思わず戸惑ってしまう。
向こうの世界にいた時でもいきなり誰かに話し掛けられるなんて無理なのに、まして今はこっちの世界だ。
普通に対応出来るわけがない…
「あはは、どうやら怖がらせてしまったようだね?何やら困っているように見えたからどうしたのかなと思って声を掛けたんだ。怖がらなくていいよ」
私が何も言えずに困惑していると、男性は優しい言葉を掛けてくれた。
パッと見た時は少し怖い印象を抱いたが、人は見かけで判断出来ないんだなと反省する。
…この人が六倉さんの言っていた人?
恐る恐る訊ねてみる。
「…あの…ロックさんって方をご存知ですか?」
「…ロック?知らない名だな。そのロックって人を探しているのかい?」
…どうやら違ったようだ。
「…いいえ、ロックさんの知り合いの方を探していて…ご存知なかったらいいんです。ありがとうございました」
と軽く頭を下げて踵を返して男性から離れた。
「ち、ちょっと待って!」
再度、男性が私を呼び止めた。




