森を抜けて町へ
アクエリアスの光が消えてからしばらく経った。
未だアクエリアスは何も話さない。
このまま、ずっと話さなくなったらどうしよう…
と寂しさが込み上げてきたが、それを目の前の現実が吹き飛ばした。
森を抜けられる…
前方の草原の風景がはっきりと見えたので最後は走って森を抜け出した。
森を抜けた瞬間、草原の丘の下に広がっている町が目に飛び込んでくる。
それに高揚しながら、その町を見下ろした。
あの町に行けば、六倉さんが私のことを頼んでくれている男の人がいる筈だ。
そのことに少し安堵する。
まあ、すでにアクエリアスがいるからそれだけで充分に心強い。
でも、あれから何度か問いかけても全く返事がない。
どうしちゃったんだろ…
このまま、もう話せなくなるなんてないよね…?
私は首をぶんぶんと横に振って、頭の中の不安を掻き消した。
…駄目だぞ私。
悩んでいても仕方がないでしょ?
とりあえず今は一人で町に行って、六倉さんが言っていた人と合流しよう。
やや急な斜面の草原を転ばないようにゆっくりと歩いていく。
少ししたところで立ち止まり、後ろを振り返った。
そこにはさっきまでいた森がそびえていた。
たった一夜だったけれど、何日も森の中にいたように感じる。
内容はどうあれ私はここを抜けた。
その経験をプラスに考えたい。
…でも、正直言うと不安はいっぱいある。
例えば森の中でどうしてもトイレがしたくなり、生まれて初めて茂みで済ませた。
幸い小さい方だったけれど、この先はそうはいかないだろう。
それにそのうち女性特有のアレもくる。
そんな当たり前だったことが、こんなに困難になるとは思わなかった。
どんなに私のいた世界が恵まれていたか今になって思い知らされる。
当たり前だ…ここはファンタジー小説のように綺麗なことだけが描かれる世界ではないのだから…
自分ではよく分からないけれど、服も体も随分と匂いがしてきていると思う。
次はいつお風呂に入れるかなんて分からないし、着替えだって持っていない。
そう思うとゾッとした。
町でお風呂か着替えのどちらかでもいいから叶うことを願うばかりだ。
そして、再び前を向いて町へと歩き始めた。
きっと、何とかなると信じて。




