赤い光を辿って
背中が木の表面のでこぼこが少し痛いけど、冷たい地面よりはマシだった。
『今は何も考えずに休め…』
頭に入ってくるアクエリアスの言葉に小さく頷いて私は目を閉じる。
するとアクエリアスから温かみを感じて、私はそれに身を委ねるようにすぐ眠りについた。
『まあな。酷い傷までは治せないが、その程度なら俺様でも出来る』
…ロックさんが言っていた通りアクエリアスは本当に私の役に立った。
森の中に入ってすぐの頃に役に立つとは思えないと思ったことを謝りたい。
「…ごめん」
『…何で謝る?』
「何でもない」
と思わず剣をぎゅっと抱きしめる。
すると剣が何だか赤面しているように感じた。
『…は、早く立て!先を急ぐぞ』
アクエリアスに言われて、スッと立ち上がる。
体はすっかりリフレッシュしていた。
…これなら森を抜けられる気がしてきた。
昨日の弱気な自分はもういない。
私にはアクエリアスがいる。
ロックさん…ううん六倉さんの期待にも応えたい。
六倉さんは私を16年も見守ってくれた人だ。
今度は私が頑張らないと…
『道は俺様が示す。その間はナナミに話すことは出来ないからな。ゆっくりでいいから確実に前へ進め』
「うん、分かった。やってみる」
私がそう答えるとアクエリアスの鞘の赤い水晶が光り出す。
そして、前方を一直線に指し示した。
この赤い光を辿っていけば森を抜けることが出来る…
アクエリアスに言われたようにゆっくりと足元を確認しながら、前へと進んだ。
◯
あれから何時間歩いただろうか…?
時計がないから時間が分からない。
まあ、そもそもこの世界に私の知っている世界と同じ時間が存在するかどうかも分かりはしない。
ただ、ひたすら赤い光を辿って進んだ。
流石に疲れも出てきて、喉も乾いたしお腹も空いた。
だけど、不思議なことに喉の渇きもお腹の空腹感も寝て起きたらすっかり忘れてしまっていたのだ。
おそらくアクエリアスの力のお陰なのだろう。
なので、まだ歩ける。
とりあえず、再び夜が来るまでには町に辿り着きたい。
そう、心の中で願った時だった。
赤い光の先に何やら違う景色が見えた。
まだ、遠くだけれど、木々の向こうに小さく町が見えてきたのだ。
思わずアクエリアスを抱きかかえたまま小走りで進んだ。
町だ…!
思っていたよりも早かった。
きっと、アクエリアスがまっすぐに道を示してくれたおかげだ。
「アクエリアスのおかげで町が見えてきたよ。ありがとう」
遠くに見える町を見てアクエリアスにお礼を言った。
しかし、アクエリアスは何も答えない。
アクエリアスが言っていた通り、光を照らしている間は私には話せないのだろう。
一緒に喜びを分かち合えないのは少し残念だ。
…でも、町にはまだ辿り着いていないのだから喜ぶのはまだ早い。
とあと一踏ん張りだと自分に言い聞かせて、残りの道のりを確実に一歩一歩進んだ。
かつて、こんな歩いたことがあっただろうか?
足の裏がすでに悲鳴を上げている。
靴ももうボロボロだ。
でも、今日の私は歩みを止めなかった。
遠くに見えていた町がどんどん近づいていく。
それが、嬉しくて自ずと歩くスピードが少しずつ早くなる。
もう少しだ!
そう思った矢先、今まで前方を照らしていたアクエリアスの赤い光がふと消えてしまう。
「アクエリアス!?」
思わず立ち止まり抱きかかえている剣に問いかける。
しかし、返事はない。
もう町は見えているので道を示すのをやめたのだろうか…?
赤い光を出しているときは話せないとアクエリアスは言っていた。
…でも、赤い光が消えた今もアクエリアスが何も答えてくれないことに不安を覚える。
私の傷を癒したり、ずっと道を示したりして疲れてしまったのだろうか?
アクエリアスの頑張りに応えるためにも、ここで止まるわけにはいかないと再び町へと歩き始めた。




