俺様はアクエリアス②
見ての通りって…私が訊きたいのは何で剣が話せるのかだ。
「…アクエリアスはロックさんのことを知っているの?」
『勿論だ。俺様はあいつに向こうの世界に連れて行かれたからな。あの骨董品店で飾り物として置かれていた…退屈過ぎてマジで死にそうだった』
…マジで?
向こうの世界の言葉使いが染み付いているのだろうか…?
アクエリアスの口調がどこか親しみを感じるのはそのせい?
そういえば骨董品店にこんな剣が飾られていた気もする…
「アクエリアスは私の名前を知ってるんだね?」
『まあな。ロックから…いや、ミキヒコと一緒にお前をずっと見守っていたからな』
ミキヒコ?…六倉さんか。
向こうの世界でロックさんと一緒だったのなら、アクエリアスにとってロックさんより六倉 三喜彦の方が親しみがあるのだろう。
なにせ、ロックさんが私を連れて向こうの世界に行ったのが、たしか私が一歳になる前からだから年月で言えば16年だ。
「…そっか。やっぱり私はこの世界の人間だったんだ…」
アクエリアスの話を聞いてそれを実感する。
少し前まで、それを望んでいたにも関わらずそんなことを口にした自分が身勝手に思えてきて更に自分が嫌いになった。
『さてと…弱音を吐いている暇なんてないぜ。いつ追っ手が来るか分からないからな。さっさとこの森を抜けるぞ。考えるならそれからにしろ』
とアクエリアスが私を叱咤する。
『とはいえ、今は夜だ。夜が明けるまでは待った方がいいな』
「…私、森を抜けることが出来るかな?」
話す相手が出来たことについ不安を口にした。
『俺様がいるから大丈夫だ。何もミキヒコだってナナミが一人で町に辿り着けるなんて思っていないだろうよ。だから、俺様を預けた』
「…そうなの?」
ロックさんは初めから私が根をあげることを予測してアクエリアスを私に渡したんだ…
でも、それはそれでますます情けなくなる。
『まあ、気にすんな。向こうの世界とは勝手が違うんだ。無理もない』
アクエリアスは向こうの世界を知っている。
基本は骨董品店に飾れていただけの剣だから、おそらくロックさんから色々な話を聞いていたのだろう。
ロックさんももしかしたら私の見守り役として向こうの世界へと行ったのなら、誰か話し相手が必要だったのかもしれない…
今の私みたいに…
「ありがと…」
さっきまで邪魔だと思ってしまっていた剣が、今は凄く愛おしい。
『とりあえず俺様を抱きかかえながら木にもたれて休め。朝になったらすぐに出発だ』
「…わかった」
アクエリアスの指示に何の疑問も抱かずにその通りに動いた。
元からファンタジー症候群の私だ。
剣が話すくらいすぐに受け入れてしまう。
アクエリアスを抱きかかえて木にもたれて座る。
背中が木の表面のでこぼこが少し痛いけど、冷たい地面よりはマシだった。
『今は何も考えずに休め…』
頭に入ってくるアクエリアスの言葉に小さく頷いて私は目を閉じる。
するとアクエリアスから温かみを感じて、私はそれに身を委ねるようにすぐ眠りについた。




