丘の上の骨董品店②
店に入った瞬間、店内に飾られている様々な骨董品たちが目に飛び込んできた。
更に何とも言えない店の独特な世界観が私の心を踊らせた。
まるで、ここは外とは別の世界のようだ。
そう感じてしまうくらいこの部屋の雰囲気はファンタジー感に満ち溢れていた。
店頭のショーウィンドウに飾られた海が描かれている七つの絵。
いつもここに来るとその七つの海の絵を見ては勝手に世界観を創り上げて、妄想に浸っている。
店内に並ぶ骨董品たちはその妄想の世界の中に出て来そうな物ばかりだった。
しかも、それは私が初めて店に入る前からイメージしていたものだったので、いざ店の中に入らせて頂いた時は正直驚きを隠せなかった。
まさにイメージ通りの世界感を骨董品から感じたからだ。
とはいえ私の妄想は店頭に飾られている絵から創り出されたものであるから、ここに飾られている物がイメージ通りでも不思議ではない。
ただ、それでも私はそれに不思議な縁を何かしら感じていたかった。
そうすることで少しでも現実から自分を遠ざけられるからだ。
骨董品が飾られている店内を奥に進むと、赤いカーテンが見えてくる。
六倉さんがそのカーテンを左右に開けると奥に別の部屋が現れた。
案内されるようにその部屋へと進む。
すると、そこはまるで私にかけられていた魔法が解けてしまったように至って普通の空間が現れた。
普通といってもあくまで骨董品店の雰囲気を崩してはいないし、アンティーク感があるテーブルや椅子はきちんとある。
ただ、先程のように私の中にある妄想の世界観を崩さない雰囲気では最早なくなっていた。
「さあ、お掛けになってください。冷めないうちにどうぞ」
六倉さんの言葉にアンティークテーブルの上に置かれたティーカップに目が止まる。
ティーカップからは既に注がれていたコーヒーの湯気が立っていた。
一礼してからテーブルの椅子を引いて腰掛ける。
六倉さんは私が座ったことを確認すると、この部屋の奥にある扉を開けて更に奥の部屋へと入っていった。
そして扉が閉まる音がしたあとで、私はゆっくりとカップを手にしてコーヒーを口にした。
熱過ぎずぬる過ぎない丁度良い心地よさが口の中に広がり、心にほんの少し安らぎを覚える。
私がここに通うようになった当初は店頭のショーウィンドウの七つの海の絵を見るだけで、店内なんて恐れ多くて六倉さんに誘われても断って逃げていた。
しかし、何度かそれを繰り返したあとで、六倉さんが今日のような作戦で私を店の中へと誘ったのだ。
コーヒーが既に淹れてあるからというだけでは、私の臆病者の性格からして、すみませんと何度も謝ってから逃げ帰っていただろう。
だけど、そのあとで六倉さんが更に私を誘惑したのだ。
「七つの海の絵のことをもっと知りたくはありませんか?」
その一言が私の心の中に潜む臆病や恥ずかしいという感情を更に上回るほどの好奇心に火をつけてしまったのだ。
そして、誘惑に負けた私は店の中へと招待されてコーヒーをご馳走になりながら、七つの海の絵の話を六倉さんに聞かせてもらった。
ショーウィンドウに飾られたあの七つの海の絵は「エヴァ」と呼ばれる想像の世界にある七つの海を描いた絵だ。




