ファーシル王国①
家路とは違う方向の道を歩き、上り坂を進んで丘の上にある骨董品店に辿り着く。
すると、ショーウィンドウ越しに七つの絵が私を出迎えてくれる。
その絵たちに心から安らぎを覚えた。
すぐにショーウィンドウに近づき、絵を見る。
昨日、六倉さんに「エヴァ」の世界の七つの大陸と七つの海について詳しく教えてもらった。
なので、昨日ここで見た時よりも一段と絵に深みを感じられるような気がした。
絵の一枚一枚にはどの海を描いたものか書かれていない。
でも昨日、地図を見せてもらって絵の配置が大陸の位置と一緒だと気づく。
上段に二枚、中段に三枚、下段に二枚。
おそらく、その考えで間違いないだろう。
石海、白海、銀海、竜海、神海、滅海、虚海。
左上から順番にそうだと思って絵を見直す。
七つ全て見直し終えて、改めて並びに確信が持てた。
それぞれの味がよく出ている。
素人ながら偉そうな感想が湧いてきた。
この絵は一体、誰が描いたのだろう?
もしかして、六倉さん…?
絵の端や額に何か名前のようなものが書かれていないか隈なく絵を探る。
しかし、名前やイニシャルのようなものは一切なかった。
もしかすると絵の後ろに書いてあるかもしれないけれど、流石にそれは見れないので諦める。
「やっぱりこの絵は六倉さんが…」
と思ったことをついつい口にしてしまった矢先、背後に気配を感じた。
「残念ながらその絵を描いたのは私ではありませんよ」
ギョッとして振り返る。
すると悪戯っぽく笑う六倉さんがそこにいた。
「…び、びっくりするじゃないですか!?」
と思わず苦情を口にする。
「おや、七海さんも声を荒げたりするんですね」
なるほどといった表情で六倉さんがうんうんと頷いた。
「…もう。六倉さんじゃないなら、この絵は誰が描いたんですか?」
「うーん、そうですね…きっと七海さんにはそのうちお話ししますよ。だから、今は内緒です」
と六倉さんが右の人差し指を口に当てる。
その返事に少し残念がる私がいた。
それを悟られたのか六倉さんが優しい表情で口を開く。
「その代わり、違うお話をお聞かせしますよ。さあ、中へ」
六倉さんの誘惑にあっさり降伏して、私は店内へと誘われる。
そして、いつもと同じ部屋に招かれた。
今日はまだコーヒーを淹れていないのでと、六倉さんが奥の部屋へと消えていく。
部屋に一人きりになった時、ふとさっき六倉さんが言ったことを思い出す。
「おや、七海さんも声を荒げたりするんですね?」
正直言って自分でも驚いた。
それが普段から出来ていたら、私はこんな私ではなかったかもしれない。
最近では家でもあんなに声を出したことがあっただろうか?
いつからか感情を表に出せなくなってしまった。
六倉さん相手だとそれが出来る。
…いや、六倉さんの人柄がそうさせるのも勿論あるけど、それだけじゃない。
ここが…この「エヴァ」の世界観を感じられるこの場所がきっと私をそうさせるのだ。




