第9話 僕の羞恥心
前回のあらすじ
家に、突然来た女神・ファリスにありえない質問をされた。
「アスタル、あなたはもしかして異世界転生者?」
「!!」
緊張が体中を駆け巡った。
「その顔は、図星か?」
ファリスさんはほくそ笑みながら、僕の目を見た。仕返しのつもりだろうか。
「・・・そうですね、あってますよ」
僕は目を俯かせながらファリスさんの質問に答えた。
・・・なんだ。なんだ、この胸のざわめきは。
喉の辺りが詰まるのを感じる。お腹の辺りに酸素が行ってない様な、そんなよく分からない痛みがする。
「?、何を笑っているの?」
ファリスさんが唐突にその言葉を口にした時、僕は少しゾッとした。
「あぁ、別になんでもないですよ」
そうか、僕はまた笑ってしまっていたのか。
僕は平然の顔で答えた。だが、体中には心臓の音がずっと響いていた。
まさか、僕は緊張している?。この時間をストレスに感じているのか?。
・・・なんでだ?、僕は元の世界の話は、ゼノンにも村の人にもこの世界の母親にもしている。
それなのに、このファリスという女神の元の世界の話をされて、何を焦っているんだ・・・。
「アスタル・・?」
心配そうな声が聞こえ、僕は顔を直ぐに上げた。
ファリスさんは、ほくそ笑んでいた顔は既にやめていて、眉を心配そうにひそめていた。
「!ど、どうしました?」
僕は、急いで顔を笑顔にした。
「大丈夫?」
ファリスさんの心配そうな顔を見て、僕は思い出した。
そして、この胸のざわめきの原因が分かった。分かってたけど忘れていただけだったと、気づいた。
「ファリスさん」
「なに?」
ファリスさんはまだ心配そうな顔をしていた。女神の中でも群を抜いて優しいのだろう。
「僕は、勇者には、なりません」
「!!・・・・そう」
ファリスさんは、最初は驚いた顔をしたが、すぐに納得した顔になった。
「ならない、というよりも、なってはダメなんですよ。僕みたいな人間は」
「そんな事ない!、アスタルは良い人だ!」
ファリスさんは、机越しに身を乗り出し全力でそう言ってくれた。と思う。
「ははっ、ありがとうございます。でも、そういう事じゃないですよ。本当にただの身勝手な理由です」
「じゃあ!」
「でも、だからこそ、僕はならないんです。僕が勇者にならないのは、僕が異世界転生者だからです」
ファリスさんは、首を傾け「どういう事よ?」と訊いていた。
それは、そうだ。説明しないといけない、本当に恥ずかしくて、話すのはいやだけど・・・。
「あ、その前に質問なんですけど、僕がいた世界ってファリスさんも行った事あるんですか?」
「いや、行ったことはないわ。行けないって言った方が正しいわね、色々と神界もめんどくさいのよ。」
なるほど。じゃあ、あの質問はしても無駄か。
「ありがとうございます。じゃあ、早速、僕の話をしますか。」
ファリスさんは、唾を呑み背筋をピンッと伸ばした。真面目に聞く様子だ。本当に性格が良い女神さんだ。
「僕がいた世界は、この世界に比べるとつまらないものですよ。人同士の戦争もある。この世界もそうだと思いますけど、国のトップ連中の汚職もある。魔法もないし綺麗な場所も段々と無くなっていってる、そんな世界ですよ」
「そ、そう・・・」
「でも、それと比例するように娯楽も凄く多いんです。アニメに漫画に、僕はよく分からないですけどお酒が美味しいらしいです。それに単純なご飯もおいしい。あと、ゲームもある」
ぶっちゃけ、ゲームはあんまりしたことないけど、好きな人多いらしいし娯楽って言ってもいいよな?
「アニメ?マンガ?」
ファリスさんはきょとんとした顔していた。あ~言い換えないとダメか。
「絵本が超面白くなった感じです」
「なるほど」
ファリスさんは納得した顔した。もしかして、絵本とか好きなのかな?。
「まぁ、ざっとそんな世界ですね。遠目で見ればバランスが良い世界ですよ。良いモノも在れば悪いモノも在るって感じです」
「・・・・それを言ったらこの世界もそうよ。」
ファリスさんは目線を下げ悲しい顔をしながらそう言った。
確かにその通りだ。魔物に人がたくさん殺されているんだろうな、女神であるファリスさんが僕レベルの人間に懇願するって事はそうなんだろう。
「ま、今言った事はそんな関係ないんですけどね。」
ファリスさんは首を傾げた。
「僕がいた世界の話をしただけですよ。」
「そ、そう・・・」
ファリスさんはよく分かっていない顔をしながら頷いた。
「ここからは、本当に僕の話です」
嫌だが、言うしかないんだよな・・・。
「僕は前の世界では、なんもない人間だったんですよ。っていうか、若干いじめを受けてた位です」
「・・・・・大丈夫だったの?」
ファリスさんは、又、眉を心配そうにひそめた。その顔は僕の心に刺さるようだ。
「あ、ちゃんと解決はしましたよ。なんなら、やり返しもしましたし、引きずっているわけでないのでご安心を」
ファリスさんは、ほっとした顔になり、「よかったー」と優しく笑った。・・・刺さるな。
「でも、僕がなんもない人間っていうのは事実なんですよ。体も鍛えていたけど、どんなに鍛えても3流どまり。趣味と言える趣味もない、そんな人間でした。」
「そんな人はいっぱいいるよ。アスタルが重く考えなくてもいいんだよ」
とファリスは僕に安心させる様に言うと、手に置いていた僕の手を優しく握ってきた。
ファリスさんの手は優しさを感じた、下心も浮かばないほどに本当に安心する。
「ありがとうございます」
僕はファリスさんに握られいた手を優しく振りほどいた。
「あっ、ごめん」
ファリスさんは申し訳ない顔をした、僕の方こそ申し訳ない。
「でも、この世界に来た僕は違いますよ。」
僕は席を立ち、背伸びをした後にマッスルポーズをした。アレだ、なんと言ったか、サイドチェストとだったか?。・・・筋トレも結構していたのに本当に名称が分からない、これもなんもない僕らしいな。
「見てください!この筋肉達!狂乱していますよ!。しかも、ボディービルダー顔負けの体をしているのに、もの凄い俊敏に動ける!。そして!!、この身長です!そろそろ2メートルに行きそうな勢いですよ!。海外の血が入っていない純粋な血でこれは凄いです!!」
「そ、そう・・・凄いね?」
ファリスさんは、困ったような顔をしながら拍手をしてくれた。女神だからこの凄さも分かんないだろうな。
「そして、顔も良い!!、男を感じられる顔ですよ!。村の女の子達には嫌われていますけど!!」
「う、うん」
アレ?、僕が思ってるよりこの顔はイケメンじゃないのか?、僕的にはイケメンと思うんだだけどな~、文化の違いってヤツ?。
そして、僕は顔をニコッと笑顔にしながらファリスさんい向かってこう言った。
「僕からしたら、この『凄い』は全部が作り物です。この顔も筋肉も身長も声も力も、全部が作り物の様にしか僕には思えない」
「え・・・そんなことはないよ。」
「比べてしまうんですよ。前の自分と今の自分をね。そして、いつも思う。゛あ~偽物なんだな゛って」
鏡や窓に自分が反射する時に、ふいに前の自分の姿と今の姿が重なる。
今の体に埋もれるほどに小さく見える、前の体。
その時に、情けなくなる。
その時、ファリスさんは無言で俯いたままだった。
「友達と喋っている時も、この世界の母からの愛を受けていた日々も、この綺麗な村も全部が偽物に思える。楽しくないとかじゃなくて、ただ、単純に――」
「恥ずかしいって?」
ファリスさんは俯いたままだ。ファリスさんの声は優しくはなかった。
「・・・・そうです。」
「恥ずかしいから人を救わないって事よね」
ファリスさんの白銀の髪が揺れていた。ファリスさんは肩を震えさせていた。
「バカじゃないの!!!」
ファリスさんは怒りの目を僕に向け、叫んだ。
そうだ。僕はバカだ。この世界で18歳、日本で死んだ時も18歳。36年も生きているのに恥ずかしいという理由で僕はこの村に残っている。
何かを成し遂げる?、何かを助ける?、才能に有無を言わせて豪遊する?。
僕からしたら、全てが恥ずかしい。
借り物の力。一人だけチートモードで遊んでいるのに心を動かせる、そんな事は出来ない。
「僕はバカですよ。・・・でもね、殺気を向けられるほどではない気もしますけど」
ファリスさんから向けられているモノは怒り。だが、流石は女神と言ったところだ。神の名称を保持しているだけある。ファリスさん方したら怒り。だが、人間にとってはそれが殺気を彷彿とさせるほどの迫力、僕も強いからなんとか怒っていると認識できる。
「お前が言ったことは、歴代の勇者に対する侮辱だ。万死に値する」
怒っているだけじゃなくて、どうやら、ただの殺気だった様だ。
「口が悪いね~女神さんは」
僕はバカにするようにニヤけた。
「言ってろ」
ファリスさんの背中から大きな白い翼が出現した。見たのは二度目か、一瞬思考が止まる程に美しいな。
だけど、的が増えただけだ。
「ファリスは良いヤツだから言っておくけど、僕の借り物は゛力゛もあるから」
「!!・・・転生者の特性!」
ファリスさんは目を見開いた。
転生者の認識があるという事は、僕以外じゃないのか・・・、しかもスキルの存在も知ってるとなると。
まぁいいか、ファリスさんはもう敵だ。僕の心を脅かす者は神であろうと敵でしかない。
僕は死ぬまで、静かに暮らす。
で、どうするか。相手は今までに類を見ないほどの強敵、女神だ。どんな攻撃をするかが分からない。
最悪、即死魔法がある。だが、ファリスさんは剣に宿った神だと言っていた。
つまり、剣に本体はいるという事になるはずだ。今の線で行くと即死魔法はないな。
だが、油断は出来ない。
少し惑わすか。
「恥ずかしいからやらないって僕は言ったけど、ファリスもまぁまぁ恥ずかしいと思うけどな~」
「はぁ~~??、適当言ってんじゃねーぞ」
ファリスさんは片方の眉をひそめ、僕を睨んだ。
怒りを誘っても、攻撃はしてこない。武器も出さない、という事は剣に宿った女神ではなるが、剣聖などの類ではないって事か。
「服装の話ですよ」
「!!なっ!」
ファリスさんは見るからにあたふたした。大きな翼もパタパタと挙動が安定しない。
「おかしいでしょ、その服装?。包帯しか巻いていない胸に、長いスカート?みたいなファッションって恥ずかしくないんですか?。しかも、テーブルの下を覗いたときに股を隠していたけどそれは恥ずかしんですか?」
「!!いや、これは、この服しかなかったから使ってるだけだ!!」
「そんな事言って、本当は可愛いと思ってるんでしょ?」
ファリスさんは見るからに顔をみるみると赤くさせて今にも沸騰しそうだ。
「ファリスさんって、袖とか破ってギザギザにするタイプですか?、流石にそれはないかー」
ファリスさんの頭から湯気が出ていた。もしかして、本当にやってたタイプ?。
「そのとき。。。流行ってたから・・・人間界で・・・」
ファリスさんは小さくそう呟いた。やってたタイプだったか。
可哀そうだが、僕はこの時にわざと嘲笑った。
「はっずかし~~~」
ファリスさんのその時の顔は、顔を赤くしていたのはもちろんの事で、目に涙を浮かべたまま口をパクパクとさせていた。
よし、動きが止まった。攻撃を仕掛けよう。
「お、おまえも――――」
「はい?」
訊くふりをして突っ込もう・・・。
「お前も、同じなれば気持ちが分かるんだーーーー!!!」
ファリスさんはそう叫んだ
「なっ!!!」
その時、突然、ファリスさんの手が光った。家中がその光で満たされた。
!!!、まずい!!目を閉じてしまった!!。攻撃が来てしまう。
僕は体を咄嗟に屈めた。
「~~~ビ――ム!!!!」
ファリスさんは我も忘れて叫んだ。
ビームって言ったか?、まずい!屈んだのは失敗だ、的が定まっただけだ!。
「やばい!!」
その時、後方から音がした。
パリィイン!!!
「!」
「!」
窓が割れた音だ。恐らく、ソファーが置かれておる場所だ。
「うちの子に何をする気かぁ!!!」
鬼の様な怒号が家中に響いた。その声には聞き覚えがある声だった。それもそうだ。
「お母さん!!、なんで!?」
母の声だった。
「家を出るふりをしてずっと外から見ていたのよ!!」
それも、なんだかな。だが、今はそれに助けられた。
「顔は可愛いけど、あんなハレンチな格好してるから心配になったのよ!」
「は、ハレンチ?」
ファリスさんの恥ずかしそうな声が聞こえた。
「ハレンチじゃないもん、可愛いもん!!」
ファリスさんがそう叫んだと同時に、僕の目が回復した。
ファリスさんは目を閉じて光のビームを撃っていた。
「まずい、しゃがんで!!」
母がいる方にビームの軌道が向いていた。
「分かってるわ!!」
母はすでにしゃがんでいた。僕が強いのもこの人血だろうな。
「!!!」
ファリスはビームを飛ばしたが、そのビームはソファーの方の窓に飛んでいき、外に飛んでいった。
「あ、あぁ」
ファリスさんは見るからに狼狽えていた。
「形勢逆転だな」
僕と母はファリスさんに詰め寄った。
どうしようか、すぐにでもヤれるが、ファリスさんは良い側だ。優しく話を聞いてたし・・・・話?
ちょっと待って・・・・。
僕は母の方に顔を向けた。
「お母さんって、ずっと―――」
「グワーーーー!!!!!!!」
その時、外から叫び声がした。
「!!アスタル!この声って!」
母が血相を変えて僕の肩を掴んだ。
「ッ!!」
その時、ファリスが翼をバタバタとさせ、羽を飛ばした。
思わず、目を閉じてしまった。
目を開けるとそこには部屋中に散らばった白い羽だけでファリスさんの姿はなかった。
「逃げやがった!」
「アスタル!そんな事より!!」
「ああ!!!」
僕は変な返事の仕方をしてしまった。焦っていたのだろう。この世界で唯一出来た友達の叫び声が聞こえたのだから。
僕はすぐに家の玄関のドアをあけ、外を見た。
外はこれとって変わりようがなかった。白い雲に青い空に草木が風でなびいていた。家で起こっていたことが嘘な様だった。
「あれ?いない・・・」
嫌な予感がした。もしかして、あの白いビームは当たって物を消すビームだったのか?・・・嘘だろ、だったら・・・。
僕は自分の足元に目を向けた。俯いていた。
その時、家の壁にもたれている少女が目に入った。
「!!!君、大丈夫!?」
僕はその少女の肩をさすった。
だが、少女は目を見開き口をパクパクとさせているだけだった。
僕の体が大きいから驚いてしまったんだ。だが、そんな事でやめるわけにはいかない。
「驚かせてごめん、だけど、答えてほしい。ここの近くで僕の胸辺り位の身長の青年とか見なかったかい?。僕の友達で今さっきここにいた筈なんだ!」
だが、少女は先ほどと変わらず口をパクパクとさせ驚いた顔しているだけだった。
まさか、目の前で人が消えたから恐怖で声が出なくなっているのか?。
「うそだろ・・・」
僕は肩を落とした。
その時、ふと、思った。
「あれ?君はこの村の子じゃないよね」
目の前の少女がこの小さな村で見たことがないと言うことに気づいた。
「あ・・あ」
「ん?・・・アレ?」
この少女をよく見てみると、少女ではないという事が分かった。
目安で言ったら17歳ぐらいだろうか。身長も僕がデカいから分からなかったが、150Cm位だろう。
言い方がアレになるが、少女にはありあない巨乳だ。
髪は金髪で肩に付きそうな位長いが、女性にしてはショートカットヘアーと言ったところか・・・。
長いまつ毛に、くっきりとした丸い目、キリっとした鼻、ぷるんっとした小さな唇、かわいい部類の顔をしている、けど、美人さも感じる。
・・・なんだ、この胸のざわめきは。
女性には所々に面影を感じる。雰囲気も似ている気がする。
僕は女性の体と顔を瞬きをしながら見比べ、驚いた顔をした女性に質問をした。
「・・・もしかしてだけど、お兄ちゃんとかいる~??」
僕は、額から冷や汗を滲ませた。顔も引きつっていると思う。
「あ、アスタル?」
女性は女性の声で僕の名前を震えた声で言った。僕の名前をそりゃ知ってるはずだ。だって、アイツに妹なんていなんだから、なんなら僕と同じ一人っ子だ。
「ぜ、ゼノン?」
僕はゼノンの肩を触っている自分の手が震えているを感じた。
「」
ゼノンは驚いた顔をしたまま、小さく頷いた。
僕の平穏な暮らしは?
。。。面白ければ、ブックマーク、評価をお願いします。
感想!!!アドバイスお願いします!!
この物語はフィクションです、実際のモノとは関係ありません( ^ω^)・・・




