悲劇の連鎖
「なんだよ……これ……。」
俺は村の状況を見て絶句した。
村の家々には火が燃え盛り、辺りには死体が折り重なっており、一部の死体は燃え盛り、死体の焼けた匂いが辺り一帯に充満していた。
直ぐ近くには魔法のヒントを教えてくれた熊の獣人が身体中に刺し傷を負って絶命していた。
どうやら、俺よりも先に村の状態に気づいて山から降りてきたけど直ぐに何者かに殺されたようだ。
「うっ……。」
あまりの凄惨な村の状況に吐き気を覚えつつ俺は足を進めた。
この状態では生存者を探すのは難しい上、これを行った犯人に見つかるかもしれない。けれど足を進めないと自分が死ぬかもしれないからだ。
「家の方にもいかないとな……。母さんたち、大丈夫かな…。」
取りあえず、家族の心配をしながら自宅に動くことにした。
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「くそ………。どこもかしこも火が回っていやがる…。」
ルーナは家に向け歩いていた。
歩いている間にも多くの人間が死に絶えていた。肉屋のおじさんも死んだ、話したことはなかったけど挨拶をした獣人が死んでいた。死んだ死んだ死んだ……!!
「くそっ!!なんだ、何なんだこれは!?」
俺はこれを行った犯人に対して凄まじい怒りを感じて、顔を歪めた。
そうこうしているうちに自宅についた。
「やっぱり、燃えていたか……!」
自宅は他の家々と同じように燃えていた。そして、近くにはクリオラが身体中に血を流しながら倒れていた。
「クリオラ!?大丈夫か!?」
「この声……お兄、ちゃん……?」
ルーナは慌ててクリオラに声をかけるとクリオラは微かに声をだした。
どうやら、犯人はクリオラを殺し損ねたらしい。
(よかった……。本当によかった……。)
ルーナは心の中でクリオラの無事に安心し、緊張していた顔を歪めて笑った。
だが、
「お兄ちゃん……。私、目が……見えないの…。」
「なっ!?」
俺はクリオラの発言に驚きクリオラの眼を……いや、目があった場所を見た。そこに目は……なかった。
そう、クリオラの両目を何者かにくり貫かれていたのだ。
「クリオラ、今助けるからな!《ウィンド・ヒール》!!」
ルーナはクリオラに本に書かれていた風低級回復魔法を行使した。
俺の手から穏やかな風が生まれ、クリオラの傷があるところに集まっていく。
俺は今まで攻撃魔法の練習を多くしてきたため、あまり回復魔法の練習をしてこなかった。そのため、これが今使える最高な回復魔法である。
くそっ、こういう時の為に回復魔法の練習をしとけばよかった。
しかし、
「何でだ!?なんで回復しない!?」
クリオラの傷は回復しなかった。
さらに、魔法が当たっているところから網状の傷が広がりクリオラの体はまるで蜘蛛に絡めとられた蝶のような状態になっている。
(まさか……呪詛か!?)
呪詛、それは無属性魔法の一つであり相手に他の属性魔法よりも強力な状態異常を付与する魔法だ。
更に、この魔法の厄介なところは回復がとても難しく、防ぐことも難しいという特性にある。
カースは魔力が複雑に絡み合ってできる特殊な魔法のため、解呪するにはこの複雑な魔力の流れを解析する必要がある。
(俺には……解呪は無理だ……!でも、クリオラは助けたい。どうしたら…!)
「ねぇ…、お兄ちゃん…。」
この余りにも理不尽な状況の中悩んでいた俺に命を絞りだすかのような細い声でクリオラが話しかけてきた。
「どうしたんだ!?」
「お兄ちゃん……。私を……、殺して……。」
「なっ!?」
クリオラから語ったのは『自らの命を兄であるルーナが終わらせて』という内容だった。
「ふざけるな!自分の命を粗末にするな!」
何で悪くもないクリオラが死なないとならない。俺にとってこの転生した先の家族は優しく、暖かなものだ。それを自らの手で握り潰すという行為は断じて嫌だ!
「いいの…、私はもう…助からないのでしょ…?」
「………!」
「なら……、大好きな家族の手の中で……、死にたいの…。」
(クリオラはもう生きているのがやっとという状態だ。そんな状態で……、苦しんで死ぬのは…嫌だろう。)
「……わかった。《ウィンド・ピアス》』
俺は今にでも泣きそうな顔をしながらなクリオラの心臓を目掛けて《ウィンド・ピアス》を打ち込んだ。
「ありがとう……、お兄ちゃん……。」
「クリオラ……クリオラァ!!」
その言葉を残してクリオラは苦しみが取り除かれた顔で絶命し、その瞬間ルーナはダムが決壊したかのように泣き始めた。
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「うぅ……、」
クリオラ……、何で俺はお前を殺してしまったんだ……?俺は一時間程泣き、涙が枯れ果ててしまった。
「…………、母さんたちを……、探さないと……。」
俺はまるで亡霊のようなふらふらとした足取りで他の家族を探し始めた。
「おい、楽しんだか?」
「へへっ、当たり前じゃねえか。」
「!?」
村の広場の近くに来たとき男の話し声が聞こえた。
片方の男は丸く突き出たお腹と欲望でギラギラとした目が特徴のヒューマン。もう一人は短足で低身長のドワーフの戦士。どちらも村で見たことがない人間だった。
(あいつらが……、犯人か?)
だとしたら許せない、捕まえてこんな状況を作ったかを問いただしてやる…!
「あら、あなたたちは何か良いものでも手に入れれたのかしら?」
「私としては、悪魔たちとそれに与するものたちを浄化できました。」
井戸の方から若い二人の男女が歩いてきた。片方は露出が多い服を着た妖艶な魔法使いのヒューマンの女性。もう片方は聖職者の格好をした美丈夫のヒューマンの男。
この二人とも、この村の村人ではない。
「いやぁ、あの『セレナ』とかいう女はかなり楽しめたな!」
「…………え?」
何で……こいつらは俺の母さんの名前を知っていんだ…?て、声を出しちゃったけど、幸い、相手には聞こえてなかったようだ。
「かなりの美貌を持っていましたし、娼館にでも奴隷として売り渡せばかなりの高額になっていたでしょうに……。何せ古代のエルフたちの国の王族である『ハイ・エルフ』でしたのに……。グシウスは楽しみすぎです。死んでしまったら何の意味もないでしょうに。」
「ギャハハハハ!!そりゃあないぜダンタロッサのオッサン!」
(なん……、だと……?)
母さんが……死んだ?
グシウスと呼ばれたドワーフとダンタロッサと呼ばれたヒューマンは笑いながらセレナが死んだことを俺にに突きつけてきた。
「いやはや、私としては大罪人である『オレガノ』を浄化できてよかったです。何せ彼は『劣等種族』であるエルフと結婚したのですから。その息子であるえっと……なんて名前でしたって?」
「はぁ……、『カイ』よ、トリスタン。」
「す、すみません、コーレナさん。その悪魔の子を殺せたのは更に良いことです。」
「私としてもあの『クリオラ』というエルフの目を取れたのはいいことです。幼いエルフの目はきっと良い魔道具になるでしょう。」
「目をくり貫いただけでは死なないのでは?」
「傷を癒さない呪詛のかかった呪詛武器のナイフで抜き取った上、切り刻みましたから問題ありませんよ。」
(くそ野郎どもが……!)
トリスタンとコーレナの話し声を聞き、俺は手から血が流しはじめた。クリオラの幼く、小さな命は残忍な大人の手で潰されてしまったことに怒り、マグマのようにドロドロと煮えたぎる怒りがルーナの手を強く握ったからだ。
「おい、君たち。」
「………主殿が話しをする。」
村の焼けていなかった物見櫓の近くから狼の獣人の男と黒目黒髪の男がでてきた。
(………なんだ?)
俺はそっと聞き耳を立てる。
何か情報がないか調べないと……!
「僕たちはこの村に住む悪魔たちを殺す事ができた。これで、この世界は少しは平和になるだろう、」
「あら、当たり前じゃないユウ。スコールもそう思うでしょ?」
「……我は暗殺者。王より依頼されたため付き従っているにすぎず。」
「………あ?」
「まぁまぁ、お二人とも静かにしてくださいませ。」
「そー言うオッサンも大量の魔族を闇市場に流して飛んでもない利益を出してるんだろ?」
「これより、僕たちは王都に帰ろう。何、僕は勇者にして英雄だ、大いに歓迎されるだろう。」
(……ふざけるな!!)
俺はユウと名乗る男の話しが終わり、相手が動き出す前に村からでて、東の山に入り魔法の練習をした切り株の場所に戻ってきた。
(つまり、俺らはあいつら……勇者どものせいで父さんや母さん、兄さんに妹、そして村のみんなが殺されたと言うのか?)
(みんなを苦しめて殺し、俺から全てを奪ったあいつらは悪だ。)
(許さない、許せない。あいつらは俺が…俺が…!)
「復讐してやる…!あいつらから全てを奪って、みんなと同じ苦しめて、無惨に殺してやる…!」
ルーナが勇者たちに復讐を誓ったその時、
「おい、おとなしくしろ!!」
「ひひっ、こいつは上物だ…!ハーフ・エルフのガキだ!貴族の変態どもに売り渡せばかなりの金になるぞ!」
突如、俺の周りを十数人の盗賊たちが取り囲んだ。会話を聞く限り、どうやら盗賊たちの目的は俺の体のようだ。
(あぁ、熊の獣人のおじさんが言っていた盗賊か…。)
一方の俺はほとんど関心がなかった。何せ俺の願いは『勇者への復讐』。こんな雑魚には興味がない。
「おい、おとなしくしろよ?」
「抵抗しなければ命だけは助けてやる。」
盗賊たちは下品な笑みを浮かべながら俺に近づいていく。
「へへっ、あと少し、あと少しで大金が……!」
「《夜風・夜刀》」
盗賊の一人が俺の体に手が触れようとした瞬間、俺は魔法を発動させ、
「………へ?」
突然、黒い風のようなものが男の片手が宙をまった。
「ぎぃあああああああああ!?」
盗賊の男は踞り、なくなった片手をもう片方の手で押さえ込んだ。が、
「ガヒュ…」
ルーナの風魔法が盗賊の頭を宙を舞い、命を絶った。
もう……、人を殺すこと、人を傷つけることに躊躇いをなくそう。躊躇っていたら勇者たちに復讐出来ない。
「なっ、て、てめぇ!なにしやがッ!?」
俺に怒声で話しかけてきた男は心臓を黒い風が貫通し、歩こうとした勢いのままたおれた。
「俺は今、とてつもなく気分が悪い。」
「ひ、ひぃ!?」
「な、何なんだ、あのガキは!?」
のんびりとした口調で俺は盗賊に話しかけ、恐怖をあたえた。
盗賊たちは俺の余りにも無感情な殺人に恐れ、後退りした。この瞬間『狩るもの』と『狩られるもの』の立場が逆転した。
「死ねよ。死んで許されない罪を懺悔しろ。」




