悲劇の始まり
東の山。それは村から東の方にある鬱蒼とした小さな山の事だ。
この山は木々が多く、また薬草も多く自生しており、少ないながらも魔力に汚染された動物や植物などの『魔物』も存在する。
村の人たちはここから木を斬り倒し生活の足しにしたり、工芸品を作ったりして生計を立てている人が多い。魔獣を狩って生活している俺の家の方が珍しいのだ。
「さて、今日もやりますか。」
俺は切り株の上に持った来た袋を置きその中からオレガノから貰った本を取り出した。
オレガノは元は貴族などが通う『魔導学園』の教師をしており、この本は退職のさいに同僚から貰ったものらしい。
(さて、取り敢えず)
「ウィンド・ショット!!」
俺は右手を一本の木に向け、風魔法を発動させ、白い風の球を射出させ、木を軽く揺らした。
風中級魔法[ウィンド・ショット]風の球を生み出し射出する魔法。攻撃魔法の少ない風魔法の中で、数少ない攻撃魔法の一種である。
他の属性よりも攻撃性が低い風魔法の中でも一番低層にあり、あまり使う人がいないものの、工夫次第では強力な攻撃ができるため、魔導学園では初段のテストで使われている、とオレガノがそう言っていた。
「やはりダメか…。」
(てか、白い風ってなんだよ。)
中二病じゃないぞ、俺は。
ルーナは知らないことだが、魔法は使う人の心のあり方によって大きくかわる。
例え同じ攻撃魔法を撃っても性格が過激な人のほうが威力が高かったりするのだ。
更に、その人の心理状態によっても魔法の色が大きく変わる。
例えば普通に火属性魔法を放つと赤い火が出るが、悲しい時は若干青色がかった色に変動するのだ。
(さて、ここからどうやって威力を出していこうか……。火力だけなら魔力を多く注げばいいけど直ぐにガス欠になってしまう。となると、どうするか…。)
「ああ、くっそ、わからないな!」
「ん?どうしたんだべか?」
「誰だ!?」
俺が頭を抱えて悩んでいる時、たまたま熊の獣人が話しかけてきた。突然のことで声を荒げて反応してしまった。
「お、おらだべおらだべ。」
「なんだ…びっくりした…。」
その熊の獣人はたまに村で会うこともあり、ルーナは警戒をといた。
「それで、あんたは何しに来たんだ?」
「そりゃあ、木を斬り倒しにきたんだべ。やっこさんは何しているんだべ?」
「魔法の練習だよ。」
俺と熊の獣人はそのその後数十分程会話をしていた。よし、ちょっと聞いてもいいかもな。
「おっさん、ちょっと聞いてもいいか?」
「ん?なんだべさ?」
「木の板を貫く時、おっさんはどうする?」
ルーナの問いに熊の獣人は頭を悩まさせながら一つの答えをだした。
「おらだったら、まず固定して錐を回転させてあなをあけるだべかな?」
「ありがとう。」
「うんにゃあ、別にいいんだべさ。ああ、ここら辺にたまに盗賊が現れるから注意するんだべー!!」
そう言って熊の獣人はそのまま山の奥の方にはいっていった。
(成る程『錐』か。ちょっとやってみよう。あれをイメージしながら…)
「ウィンド・ショット!!」
錐をイメージしつつ、魔法を撃つために構えて、ルーナは風中級魔法[ウィンド・ショット]を打ち出した。
バキッ、ベキッ、バギッ!
木々を貫いていきながら白い風の球が飛んで行った。
「よし、成功だ!!」
やったぜ。何せこの魔法が上達せず、ここ数日足止めを食らっていたから凄い嬉しい!
「さて、次の魔法は……。」
切り株に置いてある本を手に取った瞬間
バギッ!ベキッ!
「ブモオオオオオオオオオオオ!!」
折れた木の枝を踏みつけながら体長二メートル程の頭にたんこぶができた赤い目をした猪がやってきた。どうやら、さっきの魔法で折れた木々の一つが当たったらしい。
「ブモオオオオオオオオオオオ!!」
猪は凄まじい声を上げながら俺に突っ込んでくる、が。
「ウィンド・ピアス」
「ブモオオオオオオオオオオオン!?」
俺は冷静に風中級魔法[ウィンド・ピアス]が眉間に当たり、そのまま猪は倒れた。
(び、びっくりした…。てか、間違えて適当に魔法を唱えちゃったけど…使えるのか…。)
今回、内心驚いていた為、魔法名を間違えて唱えてしまったのだ。それでも魔法は先程の強力な[ウィンド・ショット]が打ち出すことができた。
(俺は魔法をイメージで捉えているからイメージできる題材さえあれば使えるのか…。いいこと知ったな。ん…?何だこの感じは…?)
俺が魔法について考えているとき、妙な感覚に襲われた。
エルフは獣人程ではないが第六感が優れており、無意識に『何か』を察知してしまうのだ。
(それに……この匂い……まるで木を焼いているような匂いは…。山火事か?いや、山頂を方から煙が出てない…、まさか…!)
ルーナは考えている中で最悪な予想。それは『村が何者かに焼き討ちにあっていること』。それを確かめる為にルーナは全速力で村の方におりていった。
その間、木の枝や木々にぶつかり怪我をしながらも走って行った。そして、最悪の予想をうらずけるかのように村に近付く程煙の匂いが強くなっていった。
「はぁ、はぁ…、みんな、大丈夫!?」
俺は何とか鬱蒼とした木々を抜け息を荒げ、傷をおいながらも、何とか村につくことができた。
そこで俺は
「ーーーーーえ?」
地獄をみた。




