奴隷解放
「……ここにもないな。」
俺は小屋の一つを荒らし、中には宝が無いことを確認して小屋を出る。
これで五件目なのに、出てきたのが食糧庫や寝床やらで未だ金貨の一枚も出て来てない。魔力的に見ても、幻や魔法陣は描かれていなかったから物理的に隠されていることは間違い無いだろう。
となると、あるとするならば……
「地下か。」
俺は地面を脚で踏み鳴らしながら考える。
恐らく、あの盗賊の頭領は部下に金を奪われないようにと隠している。更に目に見えない場所である地下に隠せば更に奪われる可能性が低くなるだろうな。
となればあり得るとすれば……いや、定石的に考えて……。
「おい、キュール。」
「お、見つかったのかルーナ?」
「いや。だが、お前から見て一番大きい小屋……盗賊たちの頭領の小屋はどれだと思う。」
俺はたまたま近くを通りかかったキュールを呼びつけて質問し、キュール少し考えて一つの小屋を指差す。
「あの小屋だ。一つだけ木によりかかっていなかったし、一番大きくて内装が無駄に豪華だった。けど、金目のものは何もなかったぞ?」
「いや、そこぐらいしか考えられない。良くあるだろ、『木の葉を隠すなら森に隠せ』、だったか。もし金貨の入ったものがあるのなら手元に置いときたいだろ?」
「けど、何も……あぁ、成る程な。」
キュールは納得した顔をして首肯する。
どうやら俺の考えと同じ考えに至ったようだな。なら、さっさといくか。
「おじゃましまーすと。」
俺とキュールは中を確認しながら頭領の小屋の中に入っていく。
中はかなり荒らされているが……これはキュールが探している時に荒らしたのだからノーカンだ。
と、そんなことよりも探さないとな。
「なあ、ルーナ。確かにここが頭領の小屋だとは思うけど……ここにあるとおも
「シッ!静かに。『ウィンド・ボール』」
「ムグッ!?」
俺は少し五月蝿いキュールに向けて『ウィンド・ボール』をぶつけて外に弾き飛ばしたあと、木の床を踏み鳴らす。
すると、僅かに良く音が響く地点を見つけれた。
俺がキュールを外に出したのは音の響きを確認しているのに他の音を出すキュールが少し邪魔になったからだ。
「いってぇ……何するんだよ!?」
「すまないな。少し音を調べてた。……見つけたぞ。」
「……!」
「俺が踏み鳴らしているところを斧で破壊しろ。」
「へへっ、了解……!」
俺が少し床を踏み鳴らした後、キュールの横にズレ、斧を振り上げたキュールが床を粉砕する。
すると……
「やはりここか。」
俺らの目の前に地下に続く階段が現れた。
「取りあえず行こうぜ、ルーナ。」
「……わかってる。」
俺と斧を背負ったキュールはそのまま地下に降りていく。
(……?)
ふと、俺は奇妙な魔力……いや、明確な匂いを感じた。
これは……血の匂い……!
「おいルーナ、この匂い……!」
「分かってる……!すぐに向かうぞ!」
俺とキュールは急ピッチで階段を降りて、地下室にたどり着く。
そこには幾つもの牢屋があった。
その牢屋の中には鎖に繋がれたヒューマン、獣人、エルフの若い女性たちが簡素な服を着て此方を恐怖の目で見ていた。
どうやら……ここが奴隷として売りだそうとしていた商品置き場か……!
よくよく考えて見たら商品に傷がついてはいけないから頭領が管理していた、って事を失念していた。これは俺のミスだな。
俺としては興味がないがそのほぼ全員が綺麗で整った顔立ちをして、スタイルは基本的に良く、良くないやつらでもロリ体型と言えば何とかなるようなものばかりだ。
てか、ガキもいる。何故いるかは知らん。そんなことよりもさっさと傷を治さないと!
「おい、大丈夫か!?」
「は、はい!」
「今、回復させるから安静にしてて!」
「う……うん……。」
キュールは斧を振り、牢を粉砕して牢屋の中に入っては鎖を叩き壊し、傷のついている人たちは俺が軽い傷の場合は『ウィンド・ヒール』と言う風下級魔法、酷い傷の場合は『ウィンド・ハイヒール』と呼ばれる風上級魔法で簡単に回復させていく。
予想よりも体の衰弱が激しくない。ここにきてそこまで月日がたっていないと思う。
けど、まだ血の匂いがこびりついていやがる。この正体を判明させないと少しだけ嫌な予感がする。
「おい、俺は少し奥のほうに行くから少し上に戻ってジャスミンたちを呼んでこい。あいつらなら回復魔法とか使えるだろ。」
「分かった。すみませんが少し仲間を連れてきますから待っていて下さい!」
全員に聞こえる声で話したキュールは外に出ていった。
さて、俺も行くか。
「あ、あの、お兄ちゃん……。」
「ん、どうかしたか。」
俺が奥に向かおうとしたとき、俺が傷を癒したエメラルド色の髪をしたエルフのガキが声をかけ、足にしがみついてきた。
……俺はあんまりガキに、特に今話しかけてきた五、六歳くらいのガキには関わりたくないんだが……。
「奥に……お姉ちゃんが連れてかれちゃった……!お姉ちゃんを、助けて……!」
「……はぁ……。」
「えっ、きゃあ!?」
俺はその精一杯に頼み込んだガキの髪の毛をわしゃわしゃする。
何、当たり前の事を言っているんだか……。
「助ける、じゃない。助かる、だ。お前のお姉ちゃんは俺が死んでいない限り絶対に助かる。お兄ちゃんとの約束だ。」
「う、うん……!」
優しげな笑みを浮かべた俺の言葉にエルフのガキは嬉し涙を流し始めた。
……これだから俺はガキが嫌いだ。だって、俺が救えなかったクリオラの事を嫌でも思い出してしまうから。そんなガキが悲しい涙を流すのは最も嫌な事の一つだ。
そして、俺は俺が今できることをするだけだ。最善を尽くして、このガキのお姉ちゃんとやらを助ける。
俺は、奥に再び歩き始めた。




