尋問と裏の商人
「はーい、どうぞ。」
「ぎゃああああぁぁぁぁぁ!!」
「[ヒール]。」
アリーゼが魔道具の火で熱した刃に脚を切られ、喉が張り裂けるような男の傷を中途半端に癒す。
襲撃から約一時間、男は意外なことに口を開けなかった。
俺でも精神に来るものがかあるのによく平然とやれるな。実際、リーニャとエラは外で吐いてるし、キュールとウォルフ、アルンは外で警戒してると言う名目でこの尋問室から出いて、エリカとディアは近くの川で釣りをしている。
因みに行者さんは意外なことに耐性があった。何でも、馬車の中で拷問することはそこそこあるらしい。
「まだ口を割らないのですか?」
「へ、へへっ……お前らに与える情報なんてねぇ……!どんなに責められようが割らないからな……!」
あぁ……これは自棄になっているな。
ごく稀にあることだが、拷問の中で死ぬことを望みすぎて口を割らないこともあるらしい。特に、火を使う拷問では多いらしい。
なら、仕方ない。
「おーい、エラ。」
「……何?」
「ちょっと自白系の毒ある?」
「……ある。ちょっと待って。」
エラは腰にかけたポーチ型のアイテムボックスを漁り、極彩色の液体が入ったビンを俺に投げ、キャッチする。
「さて、これを……。」
「んぐ!?」
ビンの蓋を開け、強引に男に飲ませる。
これ、肌に付着するだけでも強力な自白作用があるっぽいけどそのまま飲ませたらどうなのか俺は知らない。
ま、最終的に殺すし問題無いよな?
「さて、話しますか?」
「あ、あぁ、話すよ。」
「では、話して下さい。」
男は寝起きのエラのようなトロンとした目をしていて、話し始める。
あー、これ、幻覚とかを見せて話させるような自白剤なのか。
俺が受けた仕事の中に違法麻薬を造っていた奴らを殺した時についでに麻薬の製法と効果の書かれた羊皮紙を目を通していた。
たしか、その麻薬も幻覚を見せるようで今目の前でペラペラと話そうとしている男と同じような目をしていたらしい。
それと効能が似ている。恐らく、この自白剤の材料の一部に麻薬の材料が入っているのだろう。
「まず、貴方たちのアジトは何処にあるのかしら?」
「たしか、ここから直ぐの川の近く、騎士どもの目が通らない場所だ。」
「そこにいる人数は?」
「いない。大口の依頼だったから全員できた。」
「依頼者は?」
「シリウス・ダンタロッサのダンタロッサ商会だ。」
その言葉を聞き、俺は目を見開く。
ダンタロッサ……!母さんを娼館に売り飛ばそうとしていたグズか……!あいつ、まさか今度は俺たちを狙っていたのか!?
「どう思いますか、ルーナさん。」
「……あり得る、としか言いようがない。」
俺は強引に冷静となり、ジャスミンの質問に対する見解を言う。
俺はこの数ヶ月間もの間、情報屋に頼んで表社会、そして裏社会から次のターゲットのダンタロッサについて調べていた。
シリウス・ダンタロッサはダンタロッサ商会と言う大きな商会を経営しており、主に奴隷の販売を生業としている。性格はおおらかなで、子供受けが良いことで有名だ。……これが表社会から見たダンタロッサの情報だ。
裏では誘拐等で拐った人を売る違法奴隷の販売を一部の大貴族たちにしており、貴族でも手を出せない状況にして好き放題やっているらしい。本来の性格は傲慢で金に目がない。また、麻薬を製造している奴らと手を組んで麻薬の販売をしているらしい。らしい、と言うのはフェイスレスでも調べきれなかったからだ。
……これが原因の一つとなり、俺は現在金欠になっているけどな。
俺個人から言わせてみれば、このシリウス・ダンタロッサこそが『ウッド』の販売元だと睨んでいる。何せ、金儲けにしか興味のないカスだ、使用者がどうなるか知ったことでは無いだろう。
「あり得る、と言うと何か知っているのですか?」
「あぁ。少し情報屋に頼んで調べてたんだ。」
「その結果は?」
「真っ黒。違法奴隷や麻薬販売までしている。」
「なっ!?」
俺の冷静な言葉にアリーゼが驚きの声を上げる。
ま、外面が厚いし普通の冒険者や商人、ましてや学生には判断出来ないだろうな。
「あの人は勇者と共に行動した健全な商人だ、そんな事があり得るのか!?」
「あり得る。極めて優秀な情報屋からの情報だ、信用に足り得る。」
「そんな、ことが……。」
俺は『ウッド』の件や故郷に行ったことは言わなかったが、それでもアリーゼは崩れ落ちる。
こいつ、まさか勇者どもが全うな人間だと思っていたのか?
「それでは、最後の質問です。今、どれだけの資産を抱えてるいますか?」
「お前らと一緒に流そうとしていたエルフ奴隷三人、獣人の奴隷八人、ヒューマンの奴隷が十一人に商人を襲って奪った馬が三匹、あと金貨八十枚に金貨五百枚。銅貨二千枚だ。あと金細工が幾つかだ。」
「……そう、ならもういらない。」
ジャスミンはごみ……いや、汚物を見る目で男を見ながら熱していたナイフを手に取り、首を切り裂き、絶命させる。
予想以上にこいつらはごみくずだったな。てか、あんなに穏やかな声音で滅茶苦茶キレていたぽい。ジャスミンを怒らせることだけは止めよう……。
「行者さん、川辺に沿って走ってください。」
「皆、行くよ!」
ジャスミンが行者さんに行き先を教え、アリーゼが全員を馬車の中に乗せる。
てか、アリーゼたち、妙に尋問なれしてたな。何でだろう。
「そういえば、アリーゼたちって何で拷問慣れしてたんだ?」
「私たち、実は冒険者なのよ。キュールがBランクでそれ以外はCランクなんだ。」
「……成る程な。」
それなら納得だ。
冒険者たちには尋問専門の冒険者がいるくらいにそういった依頼は多い。そういうことも関係しているかもな。
「リーニャは尋問系の仕事は嫌いニャ。精神的に来るものがあるニャ……。」
「……私も嫌い。つい殺しちゃうから。」
リーニャとエラが男をその辺の草むらに蹴り落としながら少しげんなりとした顔をしながら言う。
この仕事は好き嫌いがはっきりとわかる仕事だからな、仕方ない。
因みに俺も率先してやりたいとは思っていない。良い仕事がないとき、復讐のための訓練としてやることはあるけど。
「つーか、好きな奴はいるのか?」
「どうだろう。確か、フェンリル獣国には尋問専門のSランク冒険者が入るって言う噂は聞いたことはあるけど。因みに俺はやらない。チマチマ生殺しとか、やりづらいからよ。」
「ボクはたまにやるよ。そっち系の素質もあるっぽいから。」
「俺たちもたまにするな。」
「あ、俺も。」
木箱で寝転がりながらアルンとキュールは眠そうに言い、エリカ木箱に座りながら杖に体を預けてながら言い、ウォルフとディアはサイコロ賭博をしながら答える。
「ま、それでも俺はいいけどな。」
俺は木箱に横になる。
さて、暇だし眠るか。馬車が止まったところがアジトだろうし。




