獣国の戦士たち
「では、行ってくるでな。」
「……いってくる」
「いってらっしゃいませ、ルーナ様、エラ様。」
「頑張って下さいね、ルーナ様、エラ様!」
「頑張りなよ、ルーナさん、エラさん。」
「頑張って下さい!」
「君たちなら優勝を狙えるから!」
「不可能なんてどこにもない!頑張りなさい!!」
早朝の校門、俺は仲間たちに見送られ、学校の外に出る。
あれから数日たち、前金をもらい準備を整えて今日、俺たちは現地に向かう事となった。
ドリスの話では経費削減のため、俺たちのチームはフェンリル獣国の第二チームと、アネモたちはその隣国、ドルトマス王国の第一チームと一緒の馬車に乗ることとなる。(俺たちのチームは第二。実力はこっちのほうが高い。解せぬ。)
「お、リーダーも来たようだな。」
「悪い、遅くなったか?」
「遅く無いよ。ボクたちが早かっただけ。」
「私としては早くくるつもりはなかっただけど……同居人のエリカが急かしてね。」
「だってぇ……。」
「……眠い。」
(……不安だ。)
俺は他の仲間たちの会話を聞いて少し不安を感じる。
正直に言って、俺たちは纏まりがない。
急造のパーティーだし仕方がないというところもあるが、今回はパーティー戦、チームが一丸となって戦う事となるのにここまで纏まらないとなると負ける可能性も出てくる。
(……でも、こっちのほうが良いかもな。)
だが、これは相手を出し抜ける材料にもなる。
チーム戦なのに纏まりがないチーム、これなら個人で分断させて複数人で強襲するば勝てる、と相手に誤解させれる。
俺たちは個人で複数を相手にすることも可能だしな、むしろこっちのほうが俺たちとしても闘い安いかもな。
「あ、来ましたよ。」
「おっ、あれか。」
ガラガラという馬車の車輪の音を聞き、自然と俺たちの視線もそちらに向く。
「貴殿方がブリンガル魔導学園の第二チームですね?」
「ええ。」
「では、お乗り下さい。」
俺たちは行者に促され、馬車に乗り込む。
馬車の中は広く、多くの荷物が置かれており、そこら辺に置かれている木箱の上にフェンリル獣国の代表たちが座っている。
「んんん……?ニャんだお前たちはニャ。」
何処かお気楽そうな笑みを浮かべた茶髪の猫の獣人の女の子が俺にしゃべりかけてきた。
てか、こっちの世界で初めて見たな、『~ニャ』っていう語尾をつける人。
「聞いていなかったのか?一応、ブリンガル魔導学園の第二チームなんだが……。」
「うーん、リーニャには難しい話は分からないニャ。キュール、何か知ってるかニャ?」
「学園長がそんな事言っていたな。よっこらせと。」
木箱を幾つか並べて寝ていた白熊の獣人の青年が飛び起き、俺たちの顔を見てニヤッと笑う。
こいつ、それなりに強いな。制服の上だから分かりにくいがかなり筋肉質で技術よりもパワーファイトを得意としていると見える。
「おい、お前ら。こいつらはかなり強いぞ。俺でも数秒程度しか持たない一級品の怪物だ。」
「「「「………!」」」」
キュールの言葉を聞いたリーニャ、そして奥でサイコロ賭博をしていた鹿の獣人、黒猫の獣人、灰色の狼の獣人の三人が僅かに自分たちの得物に手をかけ、俺たちも釣られて僅かに臨戦態勢をとる。
こいつら全員が敵となると闘う方法としてはまず、馬車を粉砕して外に出し、その後、それぞれがカバー出来ないように分断、各個撃破の戦術をとったほうがいい。
――――とまぁ、ここまでは相手も読んでいるだろうし、手の内を探るために少し手を抜くのも良さそうだな。
「まぁまて。俺たちも争うつもりはない。争うのなら戦場で、だ。取りあえず、交流会として―――」
剣呑な雰囲気の中、キュールは近くの木箱から食料を幾つもの取り出し、別の箱からは酒―――葡萄酒と言うよりも麦酒を取り出し、床に並べ
「交流会兼宴会と洒落混みましょうか。」
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「―――でさぁ、そいつら脱糞しながら逃げちまったんだよ、こっちの後始末を考えろっての。」
「「「「「「ハハハハハハハハハハハハ!」」」」」」
俺たちは鹿の獣人の青年――ディアの失敗談を聞きながらエールを飲む。
キュールに聞いた話だが、昔惨敗したブリンガル魔導学園とフェンリル獣国の代表たちが惨敗祝いにはっちゃけようとしたらしく、思い付いたのがこの馬車での宴会だったらしい。
ここでは種族とか国とかの事なんて関係なく文化交流が出来るから案外楽しいものだ。
それにしても、この馬車、妙に振動が少ないな。魔力を感じてないから魔道具の類いでは無いことは分かるけど……。
「リーニャさんたちって向こうではどんな授業をしているのですか?」
「うーん、リーニャたちは基本的に闘うことばかりをやらされるニャ。闘って闘って闘って、強い戦士に成ることがリーニャたちの目標なのだニャ。」
「ボクたちは様々な事を一通り学んでから専門的な科目に別れるから、様々な事に対応出来るけど、その道の専門家には少し遅れをとってしまうね。」
「………それに、貴族たちが幅を聞かせているから貴族と平民で争いが起きることも珍しくない。」
「リーニャたちの学校は『弱肉強食』が信条の実力主義ニャからそういう面倒なことが起きなくて助かったニャ……。」
木箱の上では女子たちがそれぞれの学校の違いを話しているようだ。
俺たちはばか騒ぎをしているほうが冒険者生活でよくしてきたからこっちのほうが性に合うけどな。
ま、それも男女の違いという言葉で片付けれるけど。
「そういえばルーナ、お前ら今回の各国のメンバーについて知っていることはあるか?」
「……いや?」
正直、真っ正面から闘っても倒せるとは予想出来るが……まぁ、情報は武器だし、聞いてみるか。
「『ダルヤ・ジャミール』は三年の『海洋船長』の異名を持つAランク冒険者『ネモ』に加えて今年入ったAランク冒険者『天廻り』が入って大幅に戦力が増強されてしまっている。
『フェアリーガーデン』は最新鋭の魔道具を御披露目するつもりらしいし、何が出るか分からない状況だそして、ドルトマス王国は――――」
キュールは少し魔を置き―――
「全員が勇者たちだ。」
ただの代表にとっては最悪の言葉を、だがルーナにとっては怒りの言葉を口にした。




