火の精霊と土の精霊たちの怒り
「帰ったぞ……。」
「……懲りた?」
「……あぁ。」
俺はいつも通りに窓から寮の部屋に入る。
取りあえず、部屋着に着替えてっと……。よし、校庭の整備で疲れたし、もう寝るか。
「俺はもう寝るから起こすなよ。」
「ルーナ様、エラ様!!」
「ぐぼぁ!?」
エラに忠告してベッドに潜り込んだ瞬間、息を荒げたカリアが窓から部屋に突入し、俺の腹に頭突きされる。
い、いってえ……。一体こんな時間帯にカリアが俺の部屋に……?俺が設置した警戒網には何の反応もないが……。てか、女子に体の上を乗られるなんて、一部の人たちにはご褒美ではなかったか……?ま、俺はそういった物はきっぱりと捨てて来たけど。
「ルーナ様がた、大変です……!て、ルーナ様は?」
「……下、見て。」
「え、あ、る、ルーナ様ああああああああ!?」
エラに言われ、俺に気がついたカリアは顔を赤くして俺の上から離れる。
そりゃ当然か……。だって(一応)主である俺が自分の下にいたのだからな。
「す、すみませんルーナ様……!」
「そ、そんな事より、ど、どおしたんだ、こんな時間に。」
床で土下座をしてるカリアを宥めながら腹を抱えながら起き上がる。
こんな時間帯に来るなんて(比較的)常識人であるカリアにしてはおかしい。
「は、早く来て下さい……!今、下で取り返しのつかないことに……!」
「どんな状況なんだよ!?」
「……まさか。」
エラの奴は理解したような顔をしているが、俺にはさっぱりわからん……。
「ついに……『ノーム』と『サラマンダー』が……ぶつかってしまったのです!」
「……はい?」
あまりにも突拍子の、そして予想外の事態に俺は間抜けにも口を大きく開けてしまった。
『ノーム』と『サラマンダー』……特殊な事情を持つ者と貴族主義は元々とても仲が悪い。だが、今までは特に嫌っているだけで理性で考え、直接的な行動はしていなかった筈だけど……。
まさか、何かしらの原因でその均衡が崩れたとでも言うのか?
「既に、多くの人たちがそれに巻き込まれ、『ウンディーネ』も『シルフ』も巻き込んだ状況に……!」
「……私にはそこまで予想出来なかった。」
あまりの予想できる被害にエラは無表情ながら目を見開いていた。
「そうこうしている暇じゃないか!?」
「そういっているじゃないですか!」
「そうだった!」
俺とエラは急いで支度をし、部屋を飛び出した。
凄まじく……嫌な予感がする……!
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俺とエラがカリアに導かれてきたのは寄宿棟から少し離れた場所にある岩場である。
この学園、騎士候補たちが様々な状況に対応できるように土地を変えていてここもその一つだ。
確か、正式名称は『特殊訓練場』だったはずだ
「……これは。」
「何があってこんな……!」
俺とエラはこの状況に絶句する。
岩の多くは魔法によって砕かれ、至るところに血溜まりや苦しむ人たちが倒れていた。
これは普通じゃない。明らかにおかしい。何故こんなことに。俺の頭にはそれしか浮かばない。
「カリア!!」
「お姉ちゃん!」
怪我人を移動させていたクリアは血に濡れていた。だが、その足取りはしっかりしていた。
どうやら、かなりの人を移動させていたようだ。
「死ねぇ!!『ノーム』の奴隷が!」
「クリア!?」
「……うっさい。」
クリアは怪我人をカリアに渡し、背後から斬りかかってきたサラマンダーの生徒の剣を握力で握り潰し、驚愕する生徒胸ぐらを掴み、口から出た超音波で失神させる。
確か、あれは魔族の一種、『鬼』の使う特殊な技術『咆哮』だった筈だ。それも、鬼よりも強力な物だぞ……!
「ルーナさん、エラさん、向こうでケネスさんたちが戦ってます。早く、行って下さい。」
「……わかった。エラ、行くぞ。」
「……うん。」
俺とエラは再び走りだし、特殊訓練場の奥の方に向かっていく。
怪我してねぇだろうな……!あいつら……!
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「死ねぇええええええ!」
「邪魔ぁ!」
斬りかかってきたサラマンダーの生徒を蹴り飛ばしそのまま跳躍、多くの生徒の上を越える。因みにエラは別行動させている。コンビネーションをとるのは俺らはそこまで得意じゃないしな。
くそ、予想以上に人が多い。エラには別の方向に行ったし、一体何があるんだ……!?
「あ、ルーナさん!」
「何やってるのよ、ルーナ!」
絶妙なコンビネーションで相手を気絶させたシルクとアビーが心配そうな顔をして近づいてくる。
体の至るところに傷が出来てるし、肩が浮いている。かなりの時間を戦っていたようだな。
「それはこっちのセリフだ!お前らは何をしてるんだよ!?」
「それは、僕が説明しよう。」
岩の影から傷だらけのケネスが現れた。
ケネスは指揮する才能はあったけど接近戦の能力は俺らには遠く及ばない。そんなケネスがここまで怪我しているとなるとかなりの状態のようだ。
「ケネス、お前大丈夫か……!?」
「傷は既に塞いである。……実は……。」
そうやって、一呼吸を置いた後、話し始めた。
「前、ルーナ君が試験の時に主席になったでしょ?あれ、実は上級生には殆んど伝わって無かったらしいんだ。」
へぇ……。じゃあアネモ生徒会長が知っていたのは珍しい事だったんだ。
いや、一応この学園の自治組織である生徒会の会長だし、知っていて当然か。
「今日、昼時にヘイスティングズをルーナ君が一方的に叩きのめし、ヘイスティングズに関係があった上級生たちにルーナ君の存在が知られたしまって、その報復の為にルーナ君を襲おうとしていたらしい。」
俺を襲う?なんつーか……実戦を知らない素人どもが、何ほざいているのか。俺と相対し、攻撃を当てれるのはアルンたちや生徒会長ぐらいだろうに。
「それに感づいたエリカ先輩やジャスミン先輩たちが口論になり、寄宿棟のホール内で喧嘩が始まったのだけど……。結果的に生徒会や他のクラスの人たちを巻き込んで大抗争に……。」
要するに、俺は種火で俺の口論が貴族主義と特殊な事情を持つ者たちとの間にできた油の入った溝に火を入れた、というところか。
「……!ルーナさん、避けて!」
「ッ![夜風・瞬風]!!」
突如、上空から飛来する物を瞬間的に纏った黒い風で回避する。
一体何が落ちてきたんだ……!?
「……た、助けてくれ……。」
落ちてきたのは制服を着た青年。恐らく『サラマンダー』の生徒だろう。だが、何故ここまで飛んできたんだ?
「大丈夫ですか!?」
「なんだ……なんなんだ、あれは……!あんな怪物、人なのか……!?」
男は恐怖に青ざめた顔をしながら失神した。
怪物、ねぇ……。おおよそ、あいつらだろうな。あいつら以外に怪物なんて言われる筋合いはないだろうしな。
「俺はいってくる。」
「ルーナ君!?」
「ちょっ、ルーナ、何でそんな危険地帯に!?」
「いや、これは俺が間接的に起こしたようなものでしょ?なら、そのつけを払うのも俺の仕事だろ?」
俺は簡単に説明したあと、奥の方に向かって走りだした。




