アルンの怒り
「はぁ……やっと終わったな、リーダー……。」
「あぁ……。」
俺とアルンは校庭の作業を終えて、暇潰しにと校内を歩いていた。
あの後、俺はアルンの顔面を殴り付けて起こし、エラに説教された後に騒ぎを聞き付けたドリス学園長に説教され、罰として夕食抜き、校庭などの修復をしろと命じられ、つい先ほど終わらせたところである。
いやー、予想以上に時間かかったな。食堂も空いてないし、干し肉でも食べるか。
「なぁ、リーダー。」
「なんだ、アルン。」
俺は『アビス』から干し肉を取り出して食べているとアルンが少し疑いの目でこっちを見ながら話しかけてきた。
「リーダー、あんたがトリスタンを殺したんじゃないか?」
……気づいたか。
いや、こいつは何やかんや洞察力は高い。俺が糞聖職者トリスタンを殺した事を察するだろうことは気がついていた。
「……何故そう思う。」
「アルヴ教は死を重視する宗教だ。教えには死者を冒涜してはいけない、というものがある。それに対してトリスタンの死体を無惨な状況にし、更に燃やして灰するなんて普通はしない。」
「それで?」
「そんな冒涜めいた皮肉をした上、破門まで持っていくことができるのはリーダーしかいない。リーダーの実力、情報収集能力、印象改竄、それを踏まえた上で、だけど。」
「……見事だ。」
俺は手を叩きながら、アルンを称賛する。
よくそこまで推理できたものだ。意外とバレないものだと思っていたがやっと気づいた奴が現れてちょっと嬉しいな。
「俺っちとしては別にトリスタンが死んだとしてもどうでもいい。けど、リーダーが何でそこまで死者を冒涜したか、それが聞きたい。」
「何、お前が言ったはずだ。皮肉、だとな。」
「……皮肉?」
「そうさ。あの男はヒューマン以外の種族の根絶を図っていた。その為、最も簡単に使えるアルヴ教を重視していた。なら、復讐として使うなら、『死を尊重するアルヴ教』に『死を冒涜する殺人方法』、ベストマッチングしていると思わないか?」
「くっ、くくく。なんだ、リーダーも同じだったのか……!」
俺が満面の笑みを浮かべながら話していると、突如アルンが腹を抱えて笑い始めた。
な、なんだ……?同じ?つまり、こいつも……!復讐者だって言うのか……!?
「復讐をするのであれば、究極の皮肉で殺す。なんだ、当たり前じゃないか……!」
「……アルン、お前も。」
「あぁ、そうさ。俺も復讐者だ……!」
笑いを堪えながらこっちを見てくるアルンの瞳は狂人のようなどす黒い怒りが見える。
アルンと俺、妙に気が合うと思っていたがなるほど、同じ復讐者だったからこそだったのか。でも、アルンは何に復讐しようとしているんだ?
「なぁ、リーダー。俺が何故冒険者になったか知ってるか?」
「さあな。」
「俺っちは騎士になりたいんだ。」
騎士、ねぇ……。あの戦争以外は特に仕事のない奴らか。まぁ、今はアースガイア帝国と仲が悪くなっていると言うし、少しは仕事はあるか。
「俺っち、元は騎士の家系で親父は騎士の仕事をしながら病死した母親の代わりに男手一つで俺っちを育ててくれたんだ。」
「……。」
「けど、仕事中に暗殺者に護衛対象を殺され、爵位を剥奪され、真相に迫ろうとしてた矢先、何者かに殺された。」
……俺に負けず劣らずの悲惨な過去を背負っているな。しかも、この話の展開から予測するに、父親を殺した犯人って……。
「殺した犯人は……見た。この国の宰相、アースガイア帝国の皇帝、この二人だった。」
「なっ……!?」
俺は自分の予想の斜め上をいく言葉に驚く。
俺は同僚かと思っていたが……。まさか、現皇帝に現宰相か……。確かに、それなら貴族の世界に入った方が復讐しやすそうだ。
「あいつらは何があっても残酷に殺す。親父が殺られたように、権威の全てを地に落とした上で、殺してやる……!」
アルンは血の涙を流すような勢いで唇を噛み、怒りを露にした。
「かなり難しいのでは?」
「リーダーは……勇者たちだろ?お互い様だ。」
お、分かってるな。
「まあな。……取りあえず、そろそろ帰らないか?」
「分かってるぜ、リーダー。」
俺とアルンは互いの拳と拳をぶつけながら、寮に戻っていった。
――寮の中が凄まじい状態になっていると知らず。




