闘武と黒風
「……疲れた……。」
「当たり前だろ?」
俺とエラは放課後の校舎を歩きながら、呟いた。
あの後、壁を壊した三馬鹿を呼び出し、修復させたさいに、「放課後、第一校庭に集合な!あ、ちゃんと武器とか鎧とか着けてこいよ。」と、アルンが言ってきたから若干イラつきながらも校庭に向かって歩いているのだ。
「……ルーナ。」
「……分かってる。」
「「あの馬鹿どもにきっちりと落とし前をつけておかないとね。」」
青筋を浮かべながら俺たちは校庭にたどり着く。
校庭には既に多くの上級生たちが汗を流し、剣を振るっていた。
「よお!やっときたか。」
「……てめぇ。一体何のようだ。」
その中で、最低限の場所を守る鎧と見ただけでわかるほどの無骨な直剣を携えたアルンが笑顔で手を降っていた。
「いやー、一応ルーナやエラが俺らと同レベルだと言うことは調べれたけど、確かな実力なのか知りたいから、戦おうぜ!」
「……まったく。エラ、少し下がってくれ。」
「……わかった。」
俺はアルンの言葉を了承し、エラを後ろに下がらせる。
アルンの言葉が正しければアルンはAランク、SランクとSランクの戦いは『災害』と呼ばれているが、AランクとAランクの戦いもまた場合によっては小国が一つ消える程の激戦となりやすい。
本来なら俺らの周りにいる奴ら全てどかしたいところだが……怪我したら自己責任で。
「じゃっ、銅貨を投げるから落ちた瞬間開始な。」
「……いいだろう。」
アルンはコインを投げ、互いに少し離れた場所に歩き、俺は抜刀の構えを、アルンは剣を抜き前方に構える。
「【闘気術・瞬歩】!」
「[夜風・闇夜纏]!」
コインが落ちた瞬間、瞬きする一瞬で俺とアルンの剣が激突し、辺り一体の騎士志望の上級生が吹き飛ばされる。
く……!全力の闘気術の剣はやはり重い……!だからこそ、燃える!
「ぬおおおおお!」
「はあああああああああ!」
辺りに斬擊の後がつくほどの超高速の剣擊の中、俺とアルンは互いの剣にブラフ、緩急をつける。
基本的にAランク同士の戦いの場合、常人には見えない程の超高速の戦いの中、ブラフ、緩急、さらに第六感を最大限に生かして戦わなければ一瞬で殺される。
Sランク同士の場合、一瞬の剣擊で一掃されるらしいからたまったもんじゃないけど。
「[夜風・夜刀]!」
「【闘気術・業斬】!」
俺は後ろに飛び、黒い風の刃を射出し、アルンはそれを気を纏わせた剣で切り裂く。
「予想通りだ![夜風・瞬風]!」
風の刃を切り裂いた一瞬を使い、黒い黒で急加速した俺はアルンの背後に周りこむ。
これで決まりだ!
「【闘気術・陰爪】!」
「!?[夜風・下弦]!」
突如現れた二本目の剣を黒い風を纏った下からの斬擊で弾き飛ばす。
今気付いたが、アルンは左手に指輪がつけられているな。あの指輪、恐らくアイテムボックスの類いか。
「今のを避けるのか……!流石、『黒風』の異名に違わない実力だ……!」
「そっちも、『闘武』と歌われた最高峰の剣豪だ……!」
俺とアルンはそれぞれ剣を構えながら笑いあう。
闘武、それは俺と同じ時期に現れたとされる冒険者の二つ名だ。
――曰く、その剣は大地を切り裂き、海を割る。
――曰く、二振りの剣を携え、魔物たちを狩りながら世界を旅している。
――曰く、異端の技術を扱う。
噂に違わない、いやそれ以上にアルンは強い。久々に俺と同じレベルの冒険者と戦えて、意外と興奮している。
「じゃあ、そろそろ準備運動を止めるか。」
「分かってるよ。ここからが本来の戦いだ……!」
先ほどよりも速く、そして重い攻撃がぶつかり合い、空気が震え、辺りの騎士志望たちに真空の斬擊がぶつかり出血する。
なかなかだが……!
「【闘気術・双闘】!」
「[夜風・上弦]!」
俺は二本の剣による十字切りを空中に避け、そのまま黒い風で加速、回転しながら剣で攻撃し、アルンはそれを全身に巡らせた気を振り絞り耐えきる。
やはり、凄い実力だ。普通なら受け流すところを耐えるか……!
「[模倣・混沌獣『一角獣』]!」
「ぐっ……!?」
突如、地面から現れた偽物のユニコーンの角に右脇腹を抉られ、俺は上空に打ち上げられる。
なるほど、こう言う使い方も出来るか……!俺の魔力も連続の無詠唱での魔法使用で半分を切ったか……!
「[黄昏の精霊よ、暁の王冠の戴冠となり、滅びを与えよ!『トワイライト・ホーリーバースト』]!」
空中で留まりながらアルンの頭上に巨大な魔法陣を生み出し、瑠璃色の光がアルンを襲う。
「くく……!無詠唱ではなく詠唱を使った時点でルーナの魔力の底が分かったぞ……!」
鎧が消し飛び、全身から血を流しながらもアルンは不遜の笑みを絶やしていなかった。
「いいや、俺に魔法攻撃が当たった時点で敗北している。[紙纏め]」
俺が獰猛な笑みを浮かべ右手を握るった瞬間、アルンの体が爆発した。
俺がやったのは単純。辺りに霧散した魔力をアルンの体の周りに集め、爆発させたのだ。
辺りに魔力がなければ使えない魔法だけど……魔力があれば極めて強力な爆弾にもなる。
「ぐっ……あっ……。」
何とか生き残れたアルンはそのまま倒れ、気絶した。
予想以上にしぶとかったが……まぁ、倒せたからいいとしよう。
「[夜風・月光治癒]」
俺は自分の傷を癒し、アルンの傷も完全に癒しきる。
「……ルーナ。」
「どうした?」
「……周りを見て。」
エラに言われた通り周りを見渡すと悲惨な状況になっていた。
辺りの地面は剣擊の後で切り裂かれ、校舎の方まで斬擊が届いたのか、傷がついている。俺の攻撃を避けきれなかった騎士志望の上級生は血まみれで倒れ、避けれた上級生が肩に担ぎ、保健室に運んでいた。
うわぁ……やり過ぎた。
「……私が言いたいこと、わかる?」
「……わかる。」
珍しいことに、エラは無表情でかなり激怒しているようで青筋をたてていた。
え……エラが怒るとここまでキレるのか……!
「……Aランク同士の全力の戦いは小国を滅びるほどなのを忘れた?」
「す、すいませんでしてあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
俺はぶちギレたエラと他の上級生たちに土下座をした。
や、やり過ぎたああああああああ!マジでやり過ぎたああああああ!




