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悲劇への序章

「ルーナー!ちょっと井戸に水をとってきて~!」

「はーい!」

母親の呼び掛けに応じて俺は外にでる。地面の水溜まりには白銀の髪に黒い左目と赤い右目をした少年……俺が写っている。

ベッド脱走事件から早くも7年の歳月が過ぎ、俺は大きく成長していた。

(取り敢えず井戸水を取ってこよう。確か…あそこだったな。)

確か物見櫓の場所の近くにあったから……お、あそこだ。

この村は中央に井戸があり、その上に物見櫓のようなものがある。ここら辺には大きな建物が無く、直ぐに分かるから楽なんだよな。


「よし、ついたな。」

「おや、ルーナじゃないか。毎日偉いねぇ。」

「あ、クーリアおばさん。お早うございます。」

俺が井戸で水を汲んでいた栗色の髪をしたエルフのおばさんに話しかけらけた。

彼女の名前はクーリアといい、この村で生活しているエルフだ。おばさん、と呼んでいるが実際のところその見た目は20代後半位の非常に若々しい見た目をしている。

セレナが言うにはエルフは平均寿命が長く、短い者で200年、長い者だと1000年は生きているらしい。その為、若い頃の姿をしている者が多く、奴隷商に狙われたりする事もあるらしい。


「礼儀正しい子だねぇ。それに比べて私の孫ときたら…。」

(あ、これ長くなりそうだ。……さっさと帰ろ。)

「それじゃ、クーリアおばさん、バイバ~イ」

「ふむ、そうじゃな。」

俺は井戸から水を汲み上げ桶に入れ、家の方に走っていった。普通の桶では走ったら水がこぼれるが、この桶はオレガノが作った『魔導具』と呼ばれる魔法を発動させるために必要とされている詠唱を魔方陣の形にして物体に刻み、少量の魔力を注ぐことで発動する事ができる代物だ。


「たっだいまー!」

「お帰り、ルーナ。」

「ルーナお兄ちゃんお帰りー!」

俺が勢いよくドアを開け、家の中でセレナと金色の髪をしたエルフの少女が反応する。

少女の名前は『クリオラ』と言うルーナの一つ下の妹だ。

「ルーナ、帰って来たのか。」

「おっ帰り、ルーナ。」

「父さんにカイ兄、ただいま。今から狩りにいくの?」

奥の部屋から狩りの準備をしていたカイとオレガノが顔を出す。オレガノはカイとオレガノはこの家の裏にある山で狩りをして一家の生計を立たせているのだ。


「おうそうさ。なんたって今日は勇者様御一行がこの村に来るんだ。何でも、魔族との戦いに勝ってこの村に寄るんだと。」

「それなら、良いものを用意しといた方が勇者様御一行に良い印象を与えられるだろ?」

オレガノとカイは満面の笑みで俺に話す。

勇者様とはヒューマンが信仰している『アルブ教』の力で召還された異世界のヒューマンらしく、獣人の暗殺者、ドワーフの重戦士、ヒューマンの商人と神官、魔法使いのパーティーで、魔族と呼ばれる別の大陸の住民からの侵略からこの大陸を守ったらしい。

「ふーん、ありがと。じゃあ僕は左の山に行って来るで!」

「行ってらしゃい、夜までには帰ってくるのよー!」

「行ってらっしゃい、お兄ちゃん!」

「夜は広場で宴会だから早めに帰ってこいよー!」

「そうだぞー!」

(あぁ、俺はまともな家族の元に生まれたんだな…。)

「わかってる~!」

家族の声に返事をしながら俺はオレガノからもらった本が入った袋を片手に東の山に向けて走っていった。


ーそれが家族との最後の会話だと知らず。




「二度あることは三度ある」


一つ目の悲劇は前世での不幸


二つ目の悲劇は優しい家庭に生まれたこと


じゃあ三つ目は……?

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