ハーフエルフの目論見
あれから数ヵ月がたった。朝、俺はセレナから離乳食を食べさせてもらった後、ベッドの上で魔法の練習をしていた。
俺のベッドのある部屋は朝から夕方にかけて東側の窓が開けられており、ルーナが唯一使える魔法(それしか見ていないから)である『ウィンド』は初級の風魔法のため、外に向け発動する事で誰にも気づかれずに魔法の練習を行えるのだ。
ズキンッ!!
(ぐぁ!?)
今日は五時間だったな……。
頭が強烈な頭痛がおき始めたら止める。それを毎日行っているのだ。そして俺が毎日練習をしているせいか、日に日に魔法の持続時間が長くなっているのだ。
(要するに、この魔法を使う力『魔力』は運動選手と同じように『努力』と『才能』によって成り立っているのか。)
俺は魔法に対する考察をしている。彼が成長するにつれ考え事を多くしても頭痛が起きなくなっていた。そして彼には今、大きな問題がおきていた。
(魔力の消費が少なすぎる!)
そう、彼は今まで『ウィンド』を使っているだけで頭痛がおき、意識を失うこともあったがここ最近は頭痛しか起きず、意識が失うことがなくなってきたのだ。
俺は魔力を高めるため頑張った。いや、頑張りすぎた。あまりにも練習を頑張りすぎた結果、『ウィンド』の消費する魔力だけでは枯渇することがなくなっていたのだ。
(このままじゃいけない。このままじゃ暇潰しの道具がなくなってしまう…!)
この魔法を使う練習をただの暇潰しとして行っていた。それを失うのは非常にこまる!何せこの世界には嗜好品というものがほとんどなく、あったとしてもそれは貴族と呼ばれる面倒な人間しか持っていないのだ。
いくら寝ている時間の多い乳児だとは言っても起きている時ぐらい何かやっていたいのだ。
そして目をつけたのが魔法の練習だった。魔法なら誰にも邪魔されずに暇を潰す事ができるからだ。
(致し方ない。父親の部屋から本を盗み見るか。)
そして今日、ルーナは初めてこの世界の本に触れようとしていた。
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セレナは夜、セレナの故郷に伝わる昔話をした後、ポロッとこう漏らしていた。
『オレガノさんは元『魔導学園』の教師で今もいくつか本を持っているしそれをもってきましょうか…。確か世界中のおとぎ話を集めた本があったはずですし…。』
『魔導学園』と言う単語の意味はわからなかったが、この世界では本は羊皮紙で作られていて高級品である。もしかしたら、オレガノが持っている本の中には魔法に関係する事が書かれている本があるかもしれない。
そして俺はセレナを観察して本が置かれている場所を探し当てたのだ。
(取り敢えず、このベッドから降りるか。)
まずは『ウィンド』を発動させ、風でベッドから体を巻き上げて、地面に激突ギリギリのところで再度『ウィンド』を使い、地面にゆっくりと降りた。
(よし、成功したな。)
そのままハイハイをして動きつつ手や足などの地面に接する部分傷がつかないように風を纏わせるという特殊な動きをする。
実はこの魔法は中級風魔法『ウィンド・アーマー』と呼ばれており、魔力の操作に長けた者しか使う事しか出来ないのだ。
そんな事も露知らず、ルーナはハイハイで移動して遂に、
(よし、ここだったな。)
本があると思われる部屋にたどり着いた場所は台所とカイのベッドのある部屋との間にある小さな部屋である。
「ヒュー、ヒュー。」
(し、しまった……。)
予想外だった…!ここまで体力が無かったのか……俺!
ルーナはここに着くまでに多くの魔力と体力を使いもはや虫の息と言う状態になっていた。
どんなに高い魔力量を持っていても体は乳児であることを完全に忘れていたのだ。
(まっず……。このままじゃ俺は不味いかもな…。)
まずい……もう……眠り…た…い……。
「ルーナ!?何でこんなところにいるの!?」
母さん……?あぁ、そっか。そろそろ、セレナが俺に離乳食を食べさせにくる時間だったな……。
(か、母さん…。)
「ひどい熱……。まさか魔力暴走…?いえ、これはただの疲れ…?取り敢えず『キュア・ヒール』」
なんだ……この体の暖かい光は……。
セレナは俺の体に手を添え精霊魔法を発動させた。手から緑色の光が生まれ、その光がルーナの体に入っていく。
(元気が戻ってきた…?これが精霊魔法か…。)
「だめですよ~。ベッドの中から出ないでね~。」
そういってセレナはルーナを元のベッドに戻した。
(ぐぬぬ……。今回は体力がなかったから行けなかったけど体力をつけて本を読みに行くぞ…!)
「さて、食べさせましょうか。」
ルーナはセレナに離乳食を食べさせてもらい、お腹いっぱいになったルーナはそのまま眠ってしまった。
こうして、ルーナの目論見は砕かれてしまったのだった。




