エピローグ
「くー……。」
「ルーナ様……起きて下さい。」
「……ん?どうかしたのか、カリア。」
俺はカリアに揺さぶられ、目が覚める。
深夜、俺らは最後の仕上げを終えて戻ってきて、姉妹は二人とも仲良くベッドで眠っていて、エラほ無防備に腹を出して眠っていたから何時ものように床で眠っていた。
……二人とも、確か学園の用務員として雇われることが決定したんだったな。お祝いのために何かプレゼントを買っておいたほうがいいかな……?
今はその話しはおいておいてと。
「どうしたんだ、こんな時間に。」
俺は窓を見ながらカリアに問いかける。
窓の外は少し日の光が見え始めたぐらい。恐らく夜が開ける少し前辺り、職人たちが起き始める時間帯だろう。
ふと、気配を探れば、エラもクリアもいない。どういうことだ?
「と、取りあえずついてきて下さい!」
カリアは焦っているように俺の手を引っ張り、外に連れ出す。
………ま、予想はつくけどな。
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「あ、ルーナ君!」
「ルーナさんが来ましたよ!」
「あ、カリアちゃんも!」
「……遅い。」
「ルーナさん、エラさんに連れてこられたのですが、一体何が……?」
「……ルーナ様、遅いです。」
朝早くにもかかわらず寝間着姿のケネスやシルク、アビーやメイド服を着たクリアとアースリア、制服を着たエラが待っていた。
街にある小さな広場にたどり着いた時には既に多くの人がごった返していた。
ここか……こんだけ人が集まれば仕掛けを作動させても良いかもな。
「悪い。それでも、一体何が……?」
「あ、あれを……。」
人混みを避けながら前に進み、その中心までやって来て見たのは、赤く血に濡れた死体だった。
赤い塗料が壁に飛び散り、頭だけ切り離されて真正面に置かれ、体はバラバラにされて足元の至るところに散らばり、内臓は壁にへばりついていた。
これを見るに、一人だけでなく、複数の人間が殺されたようだ。
見るだけでも吐き気をもよおす。
(……もう、演技は止めるか。)
吐き気を耐えるように口に手を当てながら俺はほくそ笑む。
実のところ、これは俺とアースリアが作り出した物だ。壁にへばりついた血や内臓の多くは盗賊たちのもので、ずっと『アビス』の中にしまっていた物だ。
『アビス』は特性上『生きている物』は仕舞うことが出来ない。だが、死んでいるのなら、しまえてしまう。
それを利用し、多く死体と血を集めたのだ。『アビス』を使えば鮮度は落ちることは無いからな。
「えっ……?」
「どうかしたのか、ケネス。」
「この人、知ってる……!勇者様たちと行動を御一緒されたトリスタン・デ・カノン枢機卿だ……!」
顔を青くしたケネスが予想通りの反応を示し、それを聞いた周りの人たちが更にざわめきだす。
ケネスが言うのは予想通りだが、顔を青くしていたのはアビーやシルクなんかも同じだった。でも、まあこれも修正範囲内だ。これで『宣言』ができる。
「(懺悔しろ。懺悔して許されない罪に焼かれよ。)」
俺が小声で詠唱した瞬間、血が赤く光始める。
「なっ……!?」
「全員、避けろ![夜風・扇打『双』!」
俺が近くにいた人たちを両手に持った黒い風で弾き飛ばした瞬間、血が激しく燃え上がり、俺の背中が焼かれる。
「ぐっ……![夜風・月光治癒]」
火から抜け出した俺は焼けた背中に儚い光が纏い、傷を完全に無くなるまで癒す。
実は血と臓器は凄惨な事件を物語る舞台装飾だけではなく、血で描いた魔方陣のカモフラージュでもあるのだ。
火はアルヴ教において『最も苦しい処刑方法』といわれ、灰になるまでやかれ続け、最終的にはごみの中に捨てられるというものだ。
だから、それを利用した。
『穢れのない聖職者』とされる糞トリスタンが『穢れた存在』として燃やされる。世間的にはなんていう皮肉だろうな。
火属性に適性があるアースリアに頼めば簡単だったが、『宣言』が出来ないから今回はこの方法を使わせてもらった。
……俺にダメージが入るからアースリアは良いか顔をしなかったが。
「ルーナ君、大丈夫!?」
「ルーナさん!?」
「俺は大丈夫だ……!」
「……何、あれ。」
「なっ……!?」
エラが指を指す方向には火が無くなり、壁に焦げ目がつき、それがエルフの文字となって書かれていた。
エルフの文字は意外と知られている。なにせ、エルフたちの国『シンフォニー・ヒューム』の公用語はエルフの言葉である『森人語』だからだ。
母さんが俺に教えていたのはこの森人語だったな。
「……これは始まりに過ぎない。悪を殺す者は悪であれ。富は滅ぼされ、本は邪悪を背負う、剣は砕かれ、闇は照らされ、蛮勇は殺される。忘れるな、汝らが犯した罪を。忘れるな、復讐の業火を。」
「エラさん……、その言葉は……?」
「……壁についた言葉。」
「でも、どういう意味だろう……?」
クリアとカリアは言葉の意味を考え、エラは何かを察したように遠い目をしていた。
エラは察しがいい。これを行ったのが俺らだということは薄々感づいているだろうな。
「……わかった……!」
「え、アビーさん、本当!?」
「う、うん……。けど、この内容……とてつもなく恐ろしい内容だよ……?」
「それでもいい。アビーさん、行って下さい。」
二人に促されるまま、アビーは顔を青を通り越して白くさせながら、口を開いた。
「富、本、剣、闇、蛮勇、そしてさっき燃えたトリスタン様のお身体。ここから考えるれるのは……勇者様たちの抹殺。」
「「えっ…?」」
「富は商人のダンタロッサ。本は魔法使いのコーレナ、剣は剣士のグシウス、闇はアサシン、蛮勇は……勇者様。全ての符号が会っている。」
「た、確かに……でも、一体何故……?」
「……復讐。」
ここで、やっとエラが口を開けた。
「復讐……?確かにそう書いてあるけど……彼らは私たちの国を襲おうとしていた魔族たちを食い止めた英雄ですよ?復讐される動機なんて……あ。
」
「……そう、魔族たちならあり得る。それに……仮説でしかないけど……勇者たちがおぞましい罪を重ねていて……その被害者の知り合いが復讐していると考えれる。」
エラは淡々と言葉を紡いでいき、他の奴らも 顔を白くさせていく。
俺とアースリアは復讐した張本人だから別に顔を白くさせる必要がなさそうだ。
「はい、皆さん戻ってください!!」
火が鎮火し始めた頃に先生が焼死体を見せないようにバリケードを作っていく。
動きが手慣れてるな。恐らく、年に数回は訓練しているのだろうな。ようは避難訓練と同じなんだろう。
「さて、俺らも戻るか。」
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「……ルーナ。」
「どうした?」
「……あれ、ルーナたちの仕業?」
部屋に入ってすぐ、エラは俺に聞いてきた。
クリアもカリアもいるわけだし、言ってもいいだろう。因みにアースリアは外で待機させている。
「あぁ、そうだが?」
「……やっぱり。」
「え、ルーナ様が……?」
「ルーナさん、やはりそうでしたか。」
エラとクリアは納得し、カリアは困惑する。
「……別に、どうこうするつもりはない。ただ、何でそんな事したの?」
「私としては嬉しいけど……ルーナさんが一体なんで?」
「そうですよ……!ルーナ様の手を紛らわせる必要もなく、私たちが手を下したかったです!」
「書いてあっただろ?復讐だよ。俺も、アースリアも。」
そして、俺は己に起きた惨劇、悲劇を一切脚色無く三人に話していく。
もちろん、俺が転生者だということは隠している。何せ、俺ですらあり得ないと断言出来るものをこいつらに説明するのは面倒だからな。
「うぐっ……!なんて……酷い……!」
「あいつら……!ルーナさんたちになんてことを……!」
「……屑が。」
全てを聞き終えた瞬間、カリアとクリアが泣き始め、エラは怒りの顔をし、悪態をついていた。
予想以上に反響が大きかったな。
「……わかった。ルーナたちの復讐は黙認する。」
「はい……!」
「わかってる……!」
三人とも俺たちの復讐劇を認めてくれた。
俺としては別に認めてもらわなくて良かったが、少しは動き安くなっただろう。
「けど、ルーナ様、一つ約束してください。」
「ん、何だ?」
「絶対に……無関係な人を巻き込まないで下さい……!」
「……わかってるよ。」
カリアの願いを俺は受け入れる。
俺たちがただの怪物にならないようにするための誓いだしな、守るのは当然だろ?
「ルーナさん、今の時間、食堂に行くべきでは?」
「あ、そうだった!」
「……急ごう。」
時間を確認した俺とエラは急いで身支度をして勢い良く扉を開けて外に出る。
―――一つ目の復讐は終わった。そして、俺たちの波乱の学園生活が始まった。
次の章は復讐回ではありません。
ですが、復讐に繋がる重要なファクターでもあり、ルーナの本気が分かる章です。
次章 『剣魔祭と異端児』




