破門
「せ、聖戦だと!?」
「ほ、本当なの!?」
「繰り返される最悪の禁忌のこと……?」
「……屑を通り越して最早人ではない。」
それぞれがそれぞれで恐ろしい形相を浮かべている。
私としてもこの情報を知った時、最悪に対する恐怖と産み出そうとする者への怒りがこみ上げてきたものです。
『聖戦』とは教会が直々に行う大規模な戦争の事である。数百年前に実在したとされる古代のエルフたちの国を滅ぼしたのを最後に行われていない。
この戦争が最悪の禁忌とされる理由は残酷さである。聖戦が行われた場合、私たちは教会のため、相手は自国の為に戦うためどちらも後に引けない戦いとなってしまう。
その為、多くの聖戦があった場合、恐ろしいほどの死者が出ることは確定事項である。
故に、悲劇を繰り返さないように聖戦を最悪の禁忌としたのだ。
「しかも、今回の聖戦は『国と教会』ではなく『種族と教会』という構図。行えば多くの死者が出ることは目に見えています。」
私は静かに、そして冷淡に言葉を放つ。
羊皮紙には傭兵たちの人数、部隊編成、金貨の請求、その他様々な聖戦に必要な事柄が書かれていた。
もし、この聖戦が行われれば……多くの種族が滅びることとなる。
「弁明はありますか?」
私としてはここで弁明してもらいたいです。たとえモンストロが言っていた事が事実だとしても、私はトリスタン卿をアルヴ教の信者だと信じたい。
「それがどうした?」
まるで憑き物が落ちたかの様に全てを肯定する。
「たかだか、ヒューマン以外の『劣等種族』なんて、この世に存在する必要はありません。
彼らは私たちが搾取するためだけの道具であり、道具なんてものに信仰なんてありませんし、ましてや人と同じ国なんて必要ありませんからね。
彼らから全てを奪い、陵辱し、ヒューマンたちの下僕や奴隷として生かして置けばいいのですよ。
全ては我らの創造主が許していますから。」
私でもゾッとするほどの邪悪な笑みを浮かべながら心底楽しそうに話す。
確かに教義には『ヒューマンは他種族とは交わることを禁ずる』というものがあります。
確かに他の種族と交わる場合、半端者が生まれる可能性がありますし、何よりこの教義は種族の文化を肯定するための物。
断じて、種族を滅して良いというわけではない。
「ふ、ふざけるな!!」
「馬鹿にしているのか、外道。」
エルフとドワーフのアトラス卿とクリストフ卿は怒りを露にした。
私としても凄まじい怒りに襲われている。もう、トリスタン卿に同情の余地は……完全に無くなった。
「破門だ!トリスタン卿を破門させろ!」
「いいわ、よ。ここまでされて、ね。怒らない人はいない、は。」
「当たり前だ!」
「ごみはゴミ箱に。」
全員が満場一致で破門を承認する。
「満場一致。トリスタン卿、あなたはアルヴ教から破門します。」
「いいでしょう。例え、私がいなくても聖戦の火種は至るところにあります。私はそこに少し油をいれるだけでいいですからね。」
トリスタン卿は意味深なことを言いながら会議室から立ち去った。
モンストロ、貴方が行おうとしていた破門、何の意味もありませんでしたよ……。
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「破門された、それだけで問題ない。破門された時点で復讐は始まっているのだからな。」




