教王選
「では、議題を始めます。」
私の言葉と共に老人、美しい女性、エルフ、ドワーフ、美丈夫たちが円卓の席に座る。
枢機卿たちはそれぞれトーマス卿、ミネルバ卿、アトラス卿、クリストフ卿、そしてトリスタン卿、この五人だ。
場所はこの街の教会の地下にある会議室である。
議長はこの私、デルタが行います。
「では、教王選を始めます。教王になるにふさわしいと思う者に指を指して下さい。トーマス卿。」
「デルタ卿。」
「デルタ卿。」
「デルタ卿。」
「デルタ卿。」
「デルタ卿。………えっ?」
私がトーマスに指を指したと同時に他の枢機卿たちは私を指差し、トリスタン卿のみが驚きの声を上げる。
………私としては選ばれたのは意外でしたが、ここから正念場ですね。
「な、何故彼女なのですか?私は彼女の清廉さがよいと思ったのですが。」
「儂はもう年だし、ここは枢機卿の中でも信仰に厚い彼女が良いと思っただけだ。」
枢機卿最年長のトーマス卿が柔らかい笑みを浮かべる。
「私は同性だから、かしら。上に立つ人が同性ならサポートとか出来るかも知れませんし、何より信仰に全てを捧げていますから、ね。」
私と同性のミネルバ卿が美しい笑みを浮かべる。
「僕は誰にも媚びないから良いと思ったわけだよ。僕は貴族出身だから誰にも媚びないという事がどれだけ苦しいことかわかるわけだよ。」
枢機卿唯一のエルフであるアトラス卿が子供のような笑顔をする。
「私は特に教王に興味ない。けど、彼女のような差別をしない人間が上に立つべきだと理解している。」
枢機卿最年少のクリストフ卿は興味なさそうに壁の絵を見ている。
「な、何かむず痒いですね。」
私は少し笑みを浮かべ、もじもじとする。
私が他の枢機卿たちからそのように見られていたなんて少し、恥ずかしいですね。
「ふ、ふざけるな!!」
会議が終わりそうになり始めたらトリスタン卿が顔を赤くして『ラースピッグ』(豚の魔物。いつも怒ったような顔をしている。Dランク)のような顔をしている。
「何故私ではない!?私は勇者たちに付き添い、多くの人たちに教えを広めた実績がある!それなのに何故教王になれない!」
机に拳を振り下ろしながらトリスタン卿は心の激情をさらけ出した。
私としてはあのような外道に教王の位になんて行かせたくありません。
「私は……
「「「「「黙れ、貴様はアルヴ教の信者ではない!」」」」」
私が意見を言おうとした瞬間、トリスタン卿を除く他の枢機卿たちが声を揃えて理由を言う。
「教義において禁忌とされる奴隷を所持しておる。」
「更に、奴隷の密売にも加担しているわけだし、ね。」
「貴族たちに媚びて金をたんまりと貰ってる訳だし。」
「人の上に立つカリスマ性が微塵も感じない。」
「「「「「そんな奴に教王の位を与える価値なんてない!!」」」」」
それぞれがそれぞれの理由を話す。
トリスタン卿、私が知っているよりも多くの悪逆非道なことをしていたのですね……。同情の余地は何一つありませんね。
「そ、そんなの出任せだ!」
「ですが、これを見てからその言葉を言って下さい。」
そして私はモンストロから貰った記録球を持ち出し、机に置き、起動させる。
=======
「こ、これは……。」
「酷い……」
「うっ……トイレ。」
「……グズ野郎が。」
トーマス卿は余りの酷さに絶句し、ミネルバ卿は被害者たちに同情し、アトラス卿はトイレに駆け込み、クリストフ卿は素直に怒りを感じている。
ここまで来たのなら引き下がれない。
「な、なっ……!」
「そして、もう一つ、恐ろしい資料があります。」
そして、私は最後の切り札……アルヴ教最大の禁忌の言葉を放つ。
「トリスタン卿は……『聖戦』を引き起こそうとしています。………しかも、国と国ではなく、エルフ、ドワーフ、獣人、魔族、その全てを対象にして、です。」
その瞬間、会議室は揺れた。




