清廉の聖職者と復讐の足音
「………。」
「あの、デルタ様?」
私に執事のバトラーが話しかけてくる。
私はモンストロと名乗る謎の男から手渡された記録球を眺めている。
私はアルヴ教の信者として、あの男を許すつもりはない。けど、あの記録球だけではまだ足りない、あれだけだと教王選からは落ちるだろうけど、それだけでは被害にあった者たちの無念は晴れないだろう。
やるとしたら破門しかない。それ以外に考えられないのに、だ。
(……思考が誘導されている、か。)
これらの情報は全てモンストロからもたらされたもの。恐らく、モンストロの目的はトリスタンを破門させることだと思う。そのために、合法的に破門でき、なおかつその思考に誘導させやすい私を選んだのだろう。
「……恐ろしく冷静な男だな。」
「そのモンストロという男がですか?」
「ええ。」
となるとモンストロも予想外だったか……あるいは何かしらの情報を持っているのか……。
「もう一度見てみよう。」
「あ、そう言えば。」
何かを思い出したバトラーが懐から羊皮紙の束を取り出した。
なんでしょうか……これは……?
「バトラー、これは何ですか?」
「ええ、数日前に目に包帯をした翼の生えた少女が持ってきまして……。」
「内容は……な、何なんですこれは!?」
余りにも残酷すぎる羊皮紙の内容に戦慄を隠せれず、声を上げる。
「これは……!」
表紙には『トリスタン・デ・カノン枢機卿』という名前が書かれていた。
トリスタン卿……!モンストロからもたらされた情報とこの羊皮紙に書かれた情報があればトリスタン卿を失脚どころか破門させることもできる……!
「……あれ?」
ふと、私はとてつもない違和感に襲われる。
モンストロってどんな姿していたっけ……?モンストロが男だということは覚えている。けど、それ以外の情報に靄がかかって思い出せない……!
まるで、モンストロ自身が秘密を隠しているような、奇妙な違和感。
(モンストロ……!何者なの……?)
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「ルーナ様。」
「お、どうかしたのか?」
昼食時、俺は教王の暗殺された時にいた場所に寝転がっており、そこにアースリアがバケットを持ってきていた。
因みにクリアとカリアは今寮の管理人に面接しに行っている。何でも、『ルーナ様たちに頼りすぎるのはいけません!』とのことらしい。寮の管理人は実力主義者の上、奴隷を『人』として見るから雇ってもらえるだろう。
「何故、この場所を選んだのですか?」
「ここ、人があまりこないからな。……復讐の準備は出来てるか?」
「勿論です。それにしても何故トリスタンからなのですか?」
「簡単さ。誘き寄せ安いし、雑魚だからだ。」
寝転がったまま、アースリアの質問を簡単に答える。
トリスタンがどれだけ高名な聖職者だとしても所詮聖職者、グシウスやユウなどとは違い戦う者ではない。厄介な地位と権力は堕としてしまえば後は簡単だ。
その上、アルヴ教の戒めの一つに『教王が天に召された場合、その土地で新たな教王が選ばれる』から一年に一度ここに教王が来るからここで暗殺すれば相手がブリンガルにのこのこと来るのだ。
大がかりな準備が必要となるダンタロッサやコーレナ、とある場所に留まっているグシウス、行方が分からないスコールやユウよりも楽だ。
「ですが、もしルーナ様の記録球だけで破門出来なかったら、どうするつもりですか?」
「は?俺が記録球だけしか渡してないと思っていたか?」
「……他の枢機卿たちに他の情報を渡しているのですか。」
「その通り。」
俺は起き上がり、首肯する。
確実性を上げるために他の枢機卿たちに密売の情報、裏ルートの情報、秘密裏に処理された密告者の情報を渡してあるのだ。
例え、デルタに渡した物だけで不足するのなら他の枢機卿たちが情報を開示させればいいのだからな。
因みに、他の枢機卿たちはトリスタンの失脚、破門には肯定的だった。組織内の勢力争いはどこの世界でもあるものだな。
「ふふふっ、これでやっと始めれる。」
「ハハハッ!そりゃあそうさ。」
俺たちはお互いに邪悪な笑みを浮かべ笑い合う。
そうだ、これは始まりにすぎない。糞聖職者トリスタンへの復讐が終われば次の復讐の下準備が始まる。今度はもっと恐ろしくしていかないとな。
そして、俺は『宣言』する。
「懺悔しろ。懺悔して許されない罪に焼かれよ。」
因みに、バスケットの中はアースリア特製のサンドイッチだった。
めっちゃ美味い。




