瞳を失くした白翼
「どうなっている!?」
「も、申し訳ございません!!」
私は私兵たちに怒りをぶちまける。
なぜ、この宿に帰って来たらクリアがおらず、中に首輪がおかれているのだ!?あの首輪は魔法や物理では破壊することが非常に困難なはずですが……。
それに、奴隷の窃盗はこの国では死刑に相当する重罪。あの奴隷は希少価値の高い魔族ではありますが盗むほどの物ではないはず。リスクとリターンが割にあわなかったはずです。
「ともかく、逃げた奴隷を探しなさい。」
「はっ!!」
私兵はそのまま部屋から出ていき、私は机を蹴り飛ばす。
(逃がしはしませんよ……!)
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「お姉ちゃん!?」
「……その声はカリア?」
カリアが魔法の本を読んでいる時に窓からアースリアとカリアと瓜二つな『エンジェル』が部屋の中に入ってきた。因みにエラは外出している。
姉の姿を見たカリアは嬉しそうに涙を流し、クリアの方も包帯の下から涙を流している。
「お姉ちゃん、お姉ちゃん!!」
「良かった、生きてて本当に良かった……!」
そして、感情が抑え切れなくなった二人は抱き合った。
良かった……本当に良かった……!
「ルーナ様?ルーナ様も泣かれているのですか?」
「あぁ……ありがとなアースリア。お前のおかげでこいつらを助けることができた。」
片目から涙を流す俺をアースリアはそっと抱く。
俺はあの日から右目しか涙を流せなくなった。
大切なものの片割れを失くしてしまったから、なのかも知れない。
俺は自分の実力不足で助けれた筈のクリオラを助けれなかった。もし、クリアを助けれなかったら復讐を果たしても一生後悔することになるだろう。
それだけは、何としても回避しなければならない。
「お二方、私たちを助けて下さりありがとうございます……!」
「別に構わないよ。元々、助ける予定だったし。」
クリアの感謝の言葉を素っ気なく返す。
元々、俺は二人とも助ける予定だったし、お礼を言われるほどのことをした覚えはないからな。
「そういえば、クリア、お前のその目はどうした?」
「お姉ちゃんの目、監禁される前までそんな状態じゃなかったはずだけど?」
カリアが酷い状態だったからとても嫌な予感なんだが…。
「これは……カリアに手を出させない代わりの契約です。」
「契約?……あー……。」
「あ……。」
どうやらアースリアも理解したようで察したような声を出した。
「致死性の薬を樽一つ分、飲みました。」
「えっ……?」
余りにも残酷な言葉にカリアは息を飲む。
そりゃあ、あの糞聖職者トリスタンのことだ。ろくでもない内容だったんだろう。けど、俺でも予想外な内容だな。
普通なら死んでいてもおかしくない、いや確実に死んでいる。普通なら生きていることがあり得ないのに生きている……エラのような『加護』か?
「私は耐毒の『アビリティ』を持っていたから何とか生きられたけど……味覚と視覚がなくなったの。」
「……大丈夫なのか?」
「一応、生きていけれます。」
「……帰った。」
俺とクリアが話している途中にエラが帰って来た。その手には食事
「……うん、取りあえず風呂に入ってきたら?」
「……えっ?」
直ぐに物を置き、無理矢理浴室の方に押していく。
「……いいから。」
「は、はぁ……。」
そのまま、クリアは浴室の方に入っていった。
エラがこんな行動をするとは予想外だな。
「どうしたのですか?」
「……貴女も戻らないと。」
「えっ……あっ!!」
部屋に居たアースリアは部屋の時間を確認し、大急ぎで部屋から出ていった。
そう言えば、もう食堂が開いている時間帯か。時間の流れって早いな。
「……私とルーナは行っているで。」
「あ、はい。」
「……行くよ。」
「あ、あぁ。」
俺とエラは部屋を出た。
もしかして……エラがなんか不機嫌なのか?それだと困るような……いや、そんな感情があるって分かったからいいか。
(何でルーナはあんなにも女の子と一緒にいるの……?私だってもっと一緒にいたい。)