遭遇
俺たちが倒れた奴らの傷を癒し、意識を取り戻させていたら、ウォードとレティーナが戻ってきた。
見た感じ、怪我はしていなかったけど……何で言っていたんだ?
「えー、君たちに言える事はただ一つ、君たちはもう少し頑張れ!!」
……はい?
「君たちは余りにも弱い。弱すぎる。戦場に行ったら直ぐにでも殺られるだろうな!」
いや、俺らに負けているのに何言っているんだこいつ。
レティーナの方を見るが、レティーナ自身も余りにもふざけた言葉に怒りを堪えているように見える。『サラマンダー』の奴らは下卑な笑みを浮かべてこっちを見ている。
……おおよそ、ウォードと『サラマンダー』の貴族
「取りあえず走り込みを始めろ!」
「あの、先生。どこがいけなかったのか説明されないと納得できないのですが。」
無茶を押し通そうとするウォードにシルクが質問した。
あいつ、かなりの胆力があるな。しかも元騎士団長であるウォードに物怖じしていない。心のあり方がかなり強いと思える。
「最初に倒れた奴らは論外だ。この程度の攻撃くらい避けて当然だ!シルクとアビーは闘気術が甘い、以上!ケネスは指揮以外にも仕事しろ!エラは型に嵌まれ!ルーナは取りあえず隙を突くのを止めろ!」
余りにもふざけた言葉に俺たちは歯を食い縛り、怒りをこらえる。
闘気術を初見で避けるのは難しい。それなのに避けろとか馬鹿なのか?確かに戦場ならそうかもしれないがこれは訓練だということ忘れてないか?
シルクとアビーに対しては殆ど当て付けみたいな内容だな。言うことないなら言うなよ。
ケネスは指揮初心者の奴にあれもこれもと役割を押し付けるのは良くないことだぞ?
エラに関しては型にはまらない暗殺者であるエラにとっては致命的になりかねない。
俺に関しては……まぁ、いっか。
「分かったのならさっさと走れ!」
俺らはしぶしぶウォードの指示に従って走り込みを始めた。
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「……疲れた。」
「……あぁ。」
授業が終わり、俺とエラはいつもの部屋に入り、エラはふらふらとした足取りでベッドに倒れ、俺は近くの椅子に腰かけた。
あの後、俺らが走り込みをしている間に『サラマンダー』の奴らとウォードが模擬戦をしたものの明らかに手抜きをしており、その後俺らは休憩を挟まずに素振り等を行った。倒れる人が出始めた頃に授業は終了した。
その後の授業は殆どの奴らが熟睡していた。
昼食の後は魔法の実習だったため、多くのクラスメイトが良い結果を残すことができなかったらしい。
(ケネスたちも今日は疲れが貯まっていて外にでる気力が殆ど無いとか言っていたな。)
俺は冒険者として生活してきたから他の奴らよりかは体力があし、外にでも出ようかな。
ちなみにエラが倒れているのは単にこいつが魔法があまり得意ではないからだ。
「少し街の方に行ってくる。」
「……行ってらっしゃい。私は寝ているから……夕食までには帰ってきてね。」
「……あぁ。」
最低限の武装と動きやすい服を着て、俺は部屋から出ていった。
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「やっぱ街は賑わいがあるな。」
俺は市場を歩きながら、率直な感想を溢した。
商店の客引きの声、歓楽街の狂騒、平民たちの笑い声、魔道具の灯り、いつみても良いものだ。
「確かこのへんに……。」
「お、お兄さんは前の!」
「久しぶりだな、ガリオン。」
市場を歩いているとき、串焼き屋のガリオンが再び話しかけてきた。
「お兄さん、確か魔導学園に主席合格したらしいな。」
「何で知っているんだ?」
「俺の娘であるメリアが手紙で書いて送ってきたんだ。」
メリア……、確か朝に話しかけて奴か。
あいつがガリオンの娘だったとは……。世間は広いようで狭いな。
「あれ?ルーナじゃん。」
「お、ヨキシーじゃんか。珍しいな、お前が外に出るなんて。」
ガリオンと話しているとき、買い物をしていたヨキシーが話しかけてきた。
ヨキシーは裏庭の自家菜園で野菜とか鶏とかをを育ててるからあんまり外に買い物しに行くことが無いのに珍しくな。
「まぁ、たまには良いだろう。それに、あれもあるしな。」
「あれ?」
ヨキシーが指を指した方向に大きな人だかりができていた。
あれ……?この溝の中に死体の腐乱臭を混ぜたような気持ち悪い魔力、どこかで感じたような……。
「明日から五日間法王選が始まるからな。あれは最有力候補トリスタンだよ。」
「……!」
トリスタン、俺らの復讐対象の一人。俺の親父を殺した男。
……そうか、もう来ていたのか。
「……少し見てみるか。」
俺は少し人だかりに近づき、中心を見る。
中心には若い男がいた。全身に白い聖職者用の服で肌を出さないようにし、白い手袋を身につけた左手には背の高さくらいはある杖を持ち、右手には白い手袋のみがある。
顔には眼鏡を掛け、理知的な笑み浮かべ、信徒たちに挨拶をし、説法を行う。
「……帰るか。」
「あれ、聞かないのか?」
「俺はアルヴ教徒ではないからな。」
ガリオンが俺を引き留めるが、俺はそのまま歩いて行った。
あんな屑の説法なんて聞く意味も価値もない。それに、あの男の顔なんて見たくもない。
「く、くくく。」
つい、自分の心の奥底から漏れでた笑い声をあげる。
俺は、嬉しいのだ。
やっとだ。やっと復讐が始めれる……!九年間も待ちに待った復讐劇。それを歓喜せず、何が復讐なのだ。
「あぁ、後少しだ。後少しでお前を引きずり下ろせる。」
もうすでに楔は作り出された。後はそれを打ち込むだけだ。そうすればあいつは俺の姿を見ることなく失墜する。
そして、最後に殺すのは俺だ。最大の侮蔑と皮肉を込めた殺しかたで殺す。俺が求めた平穏を破壊したのと同じように、お前が求めた全てを破壊しつくして殺す。
それこそが俺らの復讐だ。
「さぁ、滑稽な惨劇の始まりだ。」




