閑話 月の始まり 中後編
「……ついたようだな。」
俺たちは馬車から降り、巣があると言う森の入り口にたどり着いた。
今回の依頼で俺らの役割は先鋒。最初に巣に入るのが役割だ。他にも後方支援や、偵察、前衛等がある。……正直に言えば、これを世間的には新米である俺たちに任せるような役割ではない。事実、俺ら以外のEランク冒険者は全員キャンプ地で待機らしい。
「これよりキャンプ地の設営を行う。Eランク冒険者がやるように。偵察のパーティーは偵察に向かえ。」
なんかフルプレートの青い鎧を身に纏った男がリーダーシップをとり、他の冒険者を指揮を取っている。
あの男は何度かギルド館内で見たことがある。たしか現Sランクの冒険者であるタリスマン・エーゲ。元伯爵家で剣を使った接近戦を得意としているはずだ。
「取りあえず、天幕とか張りましょうか。」
「わかった。俺っちは薪を取ってくる。」
「私とエラは天幕を張らせてもらいますね。」
「……うん。」
「なら、僕は昼食を作ってるよ。」
それぞれがそれぞれの分担を自分で決め、実行するために散らばっていった。
さて、俺も何かするか。
「君は……たしか先鋒のパーティーのリーダーだったね。」
「……何のようだ、タリスマン。」
後ろから爽やかな笑みを浮かべながやタリスマンが話しかけてきた。
「いや、ギルドの分担が妙におかしいと思って、君はどう思っているの知りたくてね。」
何だろう……。無性に腹の立つ。だが、言っていることは正しい。
「……おかしいの一言だろ。どうやら、ギルドは俺たちを魔物に殺させるつもりだろう。」
俺は複雑そうな顔をしつつ己の考えをタリスマンに伝えた。
考えてみれば単純なことだ。
組織と言うのは異端を好まない性質がある。異端が存在すると組織の運営が上手く回らないからだ。
そして、エリカは異常なまでの知能を持っていたが故に故郷を追い出された、言い換えるなら異端者だ。
異常な魔法を使う俺と異常な知性を持つエリカ。そんな二人が一つのパーティーに集まることがおかしいのだ。
(……となると。)
アルンやジャスミン、エラも何かしらの理由で異常と判断されたのだろう。
「……やはりか。」
おや、その口ぶりからすると……。
「タリスマン何か知っているのか?」
「(いや、少し心当たりがあるんだ。)」
タリスマンは何故か小声で話し始めた。
「(……それは何だ?)」
「(実は、ギルドの地下には秘密の牢獄があるんだ。反乱者をおいておく為のね。けど、そこにある一室に様々な拷問器具があり、ギルドに歯向かう冒険者やギルド職員をそこで拷問をかけるという噂があるんだ。)」
噂、ねぇ……。俺は見たことがないから信じれないがこいつの言うことには信頼性がある。
Sランク冒険者だと言うこともあるが、こいつ自身が非常に誠実で実直な性格をしているから、噂話などは他の人に伝える、なんてことは基本的にやるはずがない。
なのに、それを言ってきた。
「(……事実か。)」
「(……あぁ。何人かのギルド職員の服の裾から酷い痣が見えた。)」
成る程な。
「おーい、リーダー。飯の準備とテントの設営ができたぞー!」
と、アルンが大声で俺を呼んでいたな。
「(取りあえず、今できることはない。それだけは言っておこう。)」
「(……あぁ。)」
俺とタリスマンはそれぞれのパーティーの天幕の方に向かって歩いていった。
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「おい、本当かリーダー!?」
「本当ですかルーナさん!?」
「……!」
「……あくまで仮説だ。だが、ほぼ確実とも言える仮説だ。」
俺は自分のパーティーに俺の仮説を打ち明けた。無論、全員が驚き、絶句した。
打ち明けた理由は全員の共通の認識を作っておくためだ。共通の認識を作っておく事で、動きの方針を固め安くなるからだ。
「……だけど、僕たちがランクと見合わない危険な役割。ルーナと僕の共通の異端。組織と言う物の特性。……確かに筋は通ってる。」
一人熟考を重ねていたエリカは俺の仮説を指示した。
「……確かに、俺っちは普通の属性魔法が使えない代わりにおかしな魔法を使えたな……。それで小さい頃に親に捨てられたけど……。」
「私も、昔から幽霊とかが見えたり、幽霊たちを様々な物に入れたりできたけど……。それで教会の孤児院から追い出されたけど……。」
「私は……スラム出身だし……。致死性の毒を食べても平気だった。」
どうやら、他の奴らも何かしらの心当たりがあるようだ。
「けど、けどよ……。俺っちらがギルドの考えなんて越えてしまったら……。面白くないか?」
ふと、思い出したかのようにアルンが呟いた。
「そりゃあ勿論。」
俺は頷いて肯定する。
何せ、自分たちの筋書きを越えた働きをするんだ。相手側からしたら不愉快極まりないし、俺たちからしたらそれを見て笑い転げれるだろう。
「なら、話は簡単だろ?……全員が生きて帰ればいいんだ。」
……まぁ、その通りだ。
相手は俺たち全員の死を望んでいる。なら、俺たち全員が生きて帰る事こそがあいつらへの最大の嫌がらせになる。
「あら、それなら簡単ですね。」
「……うん。」
「全員が生きて帰れる確率は恐らく、そう高くはない。けど、やってみないとわからない。」
全員の意見がまとまったようだな。
「これからの方針を決める。」
「決まってるでしょ?」
「僕たち。」
「私たち。」
「俺っちら。」
「私たち。」
「……俺たちが。」
「「「「「全員生きて帰る!」」」」」
全員の心がこれで一つになった。
後は……。
「早く飯のスープを食べようぜ。」
「あっ!?すっかり忘れてた!?」
俺ら全員がそれぞれの場所に座り、昼食のスープを口の中に入れた。
……いつもは不味いと感じるスープだが、今日は美味しく感じるな。ここに仲間がいるからか?




