暗殺準備
少々、難産でしたが何とか書き上げることができました。
『ルーナ様。そちらは授業が終わりましたか?』
授業が終わり、校舎の陰となっていて人通りの少ない場所に来た瞬間、俺の脳内にアースリアの声が響いた。
ドルフィンズ・メロディか……。ここなら俺以外に誰もいないから直接接触してこれば良いのに……。
『あぁ、終わったよ。そっちは?』
『私たち奴隷は午前中しか授業がありません。そのため、午後からば自由なので言われた物の買い出しに行っております。』
買い出しの品物か……。よし、これで一通りの暗器を使用することが可能になったな。
『あの、ルーナ様。』
『ん?どうかしたのか?』
『私の分も取っておいてくださいよ?』
取っておいて……?あぁ、成る程な。アースリアは俺一人で復讐するのを良しとしていないのか。それなら問題ないのに。
『分かっている。教皇がきたら……俺の出番だ。その後、お前には説得をしてもらいたいんだ。』
『説得……?』
『あの糞聖職者トリスタンの奴隷であるクリアとカリアをこちらに引き入れたい。最悪の場合、殺してもかまわないが……、なるべく殺さないように善処しろ。』
クリアとカリアは復讐には何の関係のない存在だからな。復讐には不要なもの、殺る理由もないもの。復讐と関係のないものを殺すほど俺は落ちぶれていない。
復讐は何よりも高潔でなければならない。高潔でなければ……それはただの殺戮人形に過ぎない。
『一体なぜ……?……あぁ、成る程。無駄な死者を出したくないのですね。』
『その通りだ。……品物は東棟の近くにある木にかけておけ。』
『了解です。』
アースリアの肯定の言葉と共に通信が途切れる音が脳内に響く。
「さて……こっちはこっちで準備と行こうか。」
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「まずはここだな。」
俺が向かったのはこの街にあるアルブ教の教会だ。教会は毎年この街にくる教皇が休憩をとる宿でもある。暗殺にはうってつけの場所である。
「さてと、やりますか[夜風・黒纏い]。」
俺が開発した透明化の魔法を使い、裏口から侵入する。
それなりの量の魔力を持ってはいるけど、この魔法は魔力の消費量が多い。早く事を終えないと入ったことがバレてしまう。
「ほい、ほい、ほいっと。」
客室かと思われる部屋には魔法陣を魔力ペンと呼ばれる魔道具を使い描いていく。
描いた魔法陣は『特定の人物が入った時に使用者に伝える』だけの魔法だが、これが絶妙にいい。
単純な魔法ほど探知系の魔法に引っ掛からないからな。
「さて、次は……ん?」
次の魔法陣を描こうと、調理室に入った瞬間幽霊に出会うかのような悪寒に襲われた。
「何か原因が……?」
こう言う嫌な悪寒がする時は基本的にろくでもない事が起きる可能性が高い。てか、絶対に起きる。
「……まあ、いっか。」
魔法陣を描いてさっさと出れば問題ないしな。
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「……誰かが私の結界の中に入った?」
思い出したけど、あの場所は調理室だから普通の人も入る。多分それだろう。
けど……
「……この魔力……。ルーナ?」
私……エラの寮の同居人で、私の理解者、ルーナの魔力と良く似ている。
「……でも、何で……?」
ルーナは私が調べた中ではアルブ教の信者ではなかったはず……。教会に入る必要がない。
「……もし、ルーナだったのなら……これは隠さないと。」
私はベッドに広げていた羊皮紙を自分が持ってきたアイテムボックスの中に入れる。私がやろうとしている事は誰にも……話せない。特に……ルーナには。
(……ルーナには、知られたくない。)
一枚の羊皮紙を見つめ、思う。
ルーナは私にとって同居人以上の存在。思い人……では無いと思うけど……、こんな醜く穢れた私を見てもらいたくない。私はあの日から既に穢れている。そんな私が幸せになる権利は……無い。
(……ルーナ……、私がしようとしていることに……どうか、気づかないで……!)
私は最後の紙をしまう。
気づかれてはならない、気づかれてはならない。私の……教皇暗殺の依頼は。




