呪薬準備
「よし、置いてあるな。」
一通りの場所に魔法陣を描いた俺は、アースリアに指示した場所に必要な物を取りに行き、回収した。
予想以上に時間を費やしたから日が傾き始めていやがる。エラが部屋にいる手前、部屋での作業は無理だからここで済ませておかないと後の計画に支障が出てしまうからな。
「よいしょっと。」
建物の陰に座り込み、『アビス』から幾つかの矢と保健室から盗んだ薬品を取り出す。
今から作ろうとしている物の一つは毒矢だ。もし、万が一、部屋での暗殺に失敗、若しくは何かしらの理由で出来なくなった場合の最終手段の一つだ。
まず、矢に毒を塗る。そして、再び『アビス』にしまう。これだけの作業を繰り返す。
(……ここまではいい。)
必要本数の毒矢を作るのは簡単だ。何せ、矢に毒を塗ってしまうだけだからな。
だが、問題は次だ。
次に作ろうとしている物は本当の意味で難しい。
「……よし。アースリアの奴、言われた以上の品質のものばかりだ。これなら時間を幾分か短縮できるぞ……!」
アースリアが木に掛けていた袋の中には様々な種類の毒草が小さな袋に入れられて入っていた。
後から知ったことだが、アースリアは俺からの指示を出した日に、必要最低限の毒草を買い出していたが、何故か品質の良い毒草を今日、自分で採集に行っていたらしい。
「取りあえず……。」
俺は『アビス』から一本のナイフと金槌を取り出し、ナイフを自分の腕に突き刺す。
「ぐッ……!」
俺の口から苦悶の声が出る。
うん、普通に痛い。けど、これがないと作成は出来ないからな。
「[呪え、己の弱さを。憎め、己の怨敵を。禁忌を犯せ、懺悔を許すな。」
腕の止血をせずに、血溜まりの中央にナイフを置き、余った薬品や、毒草をナイフの上に置いて、詠唱する。
「冷酷に、冷酷に。薄氷に薄氷に。復讐を執行せよ。『カース・ドミネーター』]」
詠唱が終了した瞬間、ナイフの周りが変化する。
ナイフに滴る血、辺りに散らばる血が動き紅い魔方陣が形成され、中にある触媒は全て蒼い炎で燃え上がり、紅い光が魔方陣を照らす。
と、この魔法が終了するまでちょっと時間があるし、今のうちに止血しておこっと。
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数分が経ったら次第に光と炎が収まっていく。
燃え上がり、役目を終えた触媒の燃えカスを払い、完成した物を持ち上げる。
「……よし、まずは形はできた。」
持ち上げたのは、一振りのナイフ……先程、血溜まりに置いたナイフ……だ。だが、先程のナイフとは違い、刃の部分が角度によって紅や緑、白や黒など様々な色彩を生み出す。
「……試し切りをするか。」
何事も試す、そう思った俺は、自分の手をナイフで切りつけた。
さっきよりも……痛い……!
「……[ウィンド・ヒール]」
風低級回復魔法を自らの手に施したが、傷は回復しない。
「ぐううッ……!」
それどころか、裂傷のようなものが切りつけた場所からどんどんと広がっていく。
(……予想よりも遥かにいい。)
俺が作り出した物。それは呪詛武器だ。妹を間接的に殺し、死ぬ直前まで苦しめた物。これ程までに復讐に適した武器は存在しない。
そして、俺が使った魔法は俺のオリジナルの一つ、『カース』シリーズの一つだ。カースは呪詛に特化していて、どんな呪詛を解除でき、普通の呪詛を遥かに凌駕する呪詛をかけることができる物だ。ドリス学園長に使った『紙破り』もその一つだ。
「[夜風・呪刻解除][夜風・月光治癒]」
黒い風が俺の傷の呪詛を解除し、月光のような儚い光が傷を癒す。
「……と、やばい。」
集中が途切れて、俺はあることに気がついた。
儀式に集中し過ぎて……もう辺りが真っ暗だ。夕食を取らないといけないし、寮に戻らないと……!
出したナイフや、包帯などのものは全て『アビス』に押し込み、俺は持って全速力で寮に向かって走っていった。
ここからは少し、閑話を挟みます。




