授業
「ふぅ……。もう朝か……。」
俺はベッドから起きて制服に着替える。
酒場から帰った俺は、校内を巡回する警備員に注意しながら何とか部屋に戻り、そのまま寝てしまった。
いやー、案外交渉事は疲れるものなんだな。初めて知ったよ。
「くー…くー…。」
エラは……寝てるな。
てか、幸せそうな寝顔で寝ているけど、一応男である俺が同室なのに無防備過ぎないか?まぁ、何かするほど野蛮ではないけど。
「てか、起きろよ。」
「うー……?ルーナ……?」
声をかけたらすんなり起きたな。
「もう朝だぞ。」
「うん……。」
そのままベッドから降りて、そのまま
「きゅ~……。」
俺のベッドに突っ伏した。
「ちょっ!?」
「ちょっとまって~…。」
そのまま直ぐに立ち上がり、ふらふらとした足運びでタンスに向かい、制服に着替えた。
本当に大丈夫か……?ちょっと心配になってきたぞ……。
「じゃあ、食堂に行こうか。」
「うん……。」
エラはそのままふらふらとした足運びで俺に近づいてくる。
……しかたないか。
俺は倒れそうになったエラの体を支える。
「はぁ……ちょっと体を支えてやるよ。」
「……ありがとう。」
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「ルーナ君……どうしたの?」
「すまん、ケネス……。ちょっと手伝ってくれ……。」
エラのやつ……体を支えながら何とか食堂には行けたけど……。まだ危なっかしい足運びだからな……。こう言うときは友達を巻き込むのがちょうどいい。
「エラさん……?」
「くー……。だれ……?」
「えっと、ケネスです……。」
エラの奴、予想してたけど人の名前覚えていなかったのかよ……。ま、俺も覚えている人数はそこまでいないけど。
「取りあえず、席に向かいましょう。」
「……そうしよう。」
因みに学生食堂は西棟にある。その為、エラを連れていく時の皆の視線は生暖かだった。
(エラ……寝起き悪すぎだろ……。)
まぁ、それに手を差し伸べる俺も随分とお人好しだな……。ま、復讐相手には慈悲はないけど。
「あ、ルーナさんにケネスさん。それに……エラさん?」
「何で二人して運んでるのよ。」
ケネスが席取りをしていた場所にシルクとアビー、そして二人の後ろに『ゴースト』と『鬼』、そして普通のエルフよりも耳の長いエルフの奴隷がいた。
恐らくケネスたちの奴隷だろうな。
「あれ?アースリアは?」
「ルーナ様、アースリアさんは今、皆様のお食事を取りに行っております。」
「説明ありがとう。名前は?」
「……私は奴隷ですので、身分の違う存在に言える名前なんてありません。」
そう言って奴隷たちは主の場所から別の場所に向かってしまった。
はぁ……あまり、俺は好かれていないのかな……?あそこまで明確に拒否されるのは初めてだよ……。
「ディアナがあそこまで明確に距離をとるのは珍しいね。」
「……そうなのか?」
案外……ショックは大きいんだな……。
「あ、ルーナ様がた!お食事を持ってきました!」
俺が項垂れているところにアースリアが人数分の朝食を持ってきた。
いや、エラの分だけないが……。仕方ない、取ってこよう。
「そこの方の分も持ってきますので少々お待ち下さい。」
俺がエラの分の朝食を取りに行くのを静止して、アースリアが再び朝食を取りに行った。
「……なんか……。あいつに無理をさせているような気が……。」
「……多分、問題ない。あの人、好き好んでやっているから。」
なら良いのだけど……。
因みに朝食はスープとフレンチトーストだった。貴族が食べるような食事だったからか旨かった。
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朝食を食べ終わり、俺らは授業を受ける為に教室に向かう。……奴隷の面々は別の仕事があるらしく、そちらに向かうらしい。
「くー……。」
「(おい、寝るなよ。)」
隣ではエラが当たり前のように眠っているのを俺が体を揺らして注意する。
授業が始まって十数分で元は苦学生だった俺にとっては受け入れ難い状況だぞ……。
(まぁ、そこら辺は仕方ないか……。)
レティーナ先生の授業は『魔法基礎』。魔法の基礎的な原理を学ぶ学問ではあるが、エラや俺なんかの冒険者……いや、戦場に身を置いている者にとってはこの学問は不要だ。何せ、基礎がいくら出来ていようが戦いにおいては基礎をどう応用するか、又は応用をさらにどう応用するかを基準に考える必要がある。つまり、俺たちは既に基礎は出来上がっているから、別にサボっていても良いのだ。
「さて、ここまで君たちが今までやって来た事について復習しました。では、貴方たちに質問です。戦闘での魔法の役割は何でしょう。」
レティーナ先生の質問にクラスの大半が唸り声をあげ、頭を傾げて質問の答えを探し始めた。
(そんなの、簡単だろ?)
シンプルに千差万別だろ?
「はい、先生。」
「何ですか、エヴァン君。」
手を上げて答えようとしているのは眼鏡を掛けた小柄な茶髪のヒューマンだった。
服の上から見たかんじ体つきがやわだし、何より感じる魔力の量が少ない。恐らくガリ勉タイプの人間何だろうな。
「後方支援に徹して前衛のサポートをメインとする、というのが答えですか?」
「ぶっぶー。違います。」
エヴァンの答えをレティーナは両手をクロスさせて否定する。
「はぁ……簡単だろ?千差万別。それが答えだ。」
「ルーナ君、直ぐに答えを出さないでくださいよ……。ですが、正解です。」
レティーナは頭をやれやれ、と振り、全員の方向を向いた。
その顔は今まで見てきた顔の中でも誰より真剣そのものだ。
「先ほどルーナ君が言ったように魔法は千差万別の特性を持っています。ですが、その中でもほぼ全てに共通していることがあります。それは切り札と言う特性です。」
切り札、ねぇ……。俺の場合、無詠唱で使うことで魔法の切り札と言う特性を失った代わりに恐ろしいまでの汎用性を手に入れれたのだがな。
「簡単な攻撃魔法でも、相手に隙を与えることは可能なように、一つの戦場、一つの戦いにおいて魔法は勝利を導くものです。つまりは切り札です。」
それも一理ある。てか、世の中の魔法使いの多くはそんなところだろう。
「私が教えるのは、それらの基礎だと言うことを忘れないでください。……基礎だからと言って油断していると致命的な怪我をすることがありますよから。」
レティーナのナイフで心臓を刺したかのような冷えた言葉にほぼ全員の体が強ばる。
「じゃあ、今日はここまでね。あ、それと二日後、この学園に教皇がくることになっています。
教皇のありがたい説法を聞きに行きたい人は私のところに来て下さい。」
教皇、と言う言葉にクラス中が大いに湧いた。
何せ、現教皇の説法とはアルブ教徒において素晴らしいものだとか。
(だけど……これで揃ったな。)
復讐の材料が
「くー……。」
「結局、起きなかったのかよ……エラ……。」




