ドリス・ホワイトの会議
「して、今回のクラス、どうしようかのう……。」
儂ことドリス・ホワイトは悩んでおる。
儂が治めるブリンガル魔導学園の学園長をしておる。今、明日入ってくる生徒たちのクラス決めをするため、各クラスの先生を呼び出して会議をし始めるところじゃ。
「取りあえず始めましょう、学園長。」
隣の席に座る儂の秘書、アスフィめ……。今年がどれだけクラス決めが難しいかわかっておるのか?
「わかっておる、知的メガネ。それでは始めていく。」
手元にアスフィから渡されていた入学者リストをめくる。
まずはじめは確かヘイスティングズ・ナイト。まさに傲慢で悪徳な貴族の象徴見たいな存在じゃな。
「ヘイスティングズの小僧を受け持つ者はおるか?」
「はい、私が受け持ちましょう。」
手を上げたのは『サラマンダー』を受け持ったカーソン・ディアスか。ふーむ、こやつは貴族を優遇するきらいがあるが……まぁ、他に受け持ち手がおらんし、仕方ないな。
「わかった任命する。では次に行くのじゃ。」
他の生徒たちは意外とすんなりと決まっていったのう。まあ、偽悪のケネス・ブルームフィールドや、戦乙女と吟われたクリスティナ・スタッドの娘のアビー・スタッド等、異端や天才などは『ノーム』のクラスに入れておけばよいじゃろう。
『ノーム』は元々、異端の考え方をした者、特殊な出自をした者、何かしらの天才を育てる場じゃ。そういった経緯があるからか、今年も妾の子なんかがこのクラスには多いのう。
「さて、残りは後二名か。」
名前は……一人目はエラか……。平民じゃが成績も良く、魔法よりも剣術に秀でておる。そういった騎士を多く輩出する『シルフ』にいれようかのう。無論、決まらなかったじゃが。
「エラ……?まさか、『毒兎』か!?」
ん?『シルフ』を受け持つ先生が何か喚いたのう。それに、その名を聞いたとたんに辺りがどよめく。どうゆうことじゃ?
「毒兎とは、どうゆうことじゃ?」
「う、噂ですが、冒険者の間で敵に回すと危険と呼ばれている冒険者の名前と同じなんです。」
「噂じゃ確たる証拠にもならんのじゃが。」
「それだけではありません、私はたまたま、『エラ』という冒険者をギルドで見たことがあります。その時の服とは違いますが同一人物だと思います。」
ふむ……『毒兎』のエラか……。儂も少しばかり聞いたことがある。
曰く、依頼されたらどんな暗殺でもする黒い兎の獣人。
曰く、自分を探ろうとした冒険者を毒で苦しめてナイフで細切れにして殺した。
曰く、魔物退治よりも対人に強い毒使い。
多くの噂で共通したのは『黒い兎の獣人』『毒使い』『ナイフ使い』ということだけじゃ。じゃが、このエラとと言う少女は模擬戦の際に二振りのナイフを使って相手を一撃で倒したとリストには書かれておる。ほぼ、確定じゃろうな。
「して、誰がこの少女を受け持つのじゃ?」
手を上げる者、肯定する者はおらん。まぁ、致し方ないのう。何せ、嫌な噂を多くの者が知っているのじゃからな。
「なら、私が受け持ちます。」
少し考えていた『ノーム』の担任であるレティーナ・ムーマが手を上げた。あやつ自身、Aランク冒険者じゃし、ダークエルフという特殊な種族じゃから問題ないじゃろう。
……まあ、そのせいで他の先生の中で孤立しておる。元Bランク冒険者のハワード・メイヤーしか友人がおらんくらいじゃ。
「わかった。じゃあ、これが最後じゃな。」
最後は恒例として学年主席がなることになっておるのじゃが、今年はどんな子じゃろうな。
「ふむふむ……ルーナか……。てっ、ルーナじゃと!?」
「ルーナ君!?」
ルーナと言えばオレガノとセレナの息子じゃないか!?
「あの、学園長、このルーナという少年と知り合いですか?」
しょ、少年?ルーナとは女性につけるような名前じゃったはずじゃが……。恐らくセレナがつけたんじゃろう。あやつは昔から『ねーみんぐせんす』が無かったからのう。
「うむ、手紙でしか知らぬがの。こやつはオレガノとセレナの息子じゃ。」
「セレナさんの息子さん!?」
アスフィのやつは知らなかったようじゃな。セレナの親友であったアスフィも知らないようじゃし、他の先生も知らないじゃろう。
「なんで……彼がここに……?」
いや、レティーナ先生のみ知っておったようじゃの。しかも、何故か涙を流しておる。何故じゃ?
「レティーナ先生、どうかしましたか?」
「アスフィさん…彼をこの学園から不合格にできないかしら……?」
「えっ……?」
レティーナ先生……が何故か突拍子もないことを言っておる。いつもは冷静な性格をしておるのにここまで動揺するのは初めてみたのう。
「それは無理な相談じゃぞ、レティーナ先生。」
「そ、そんな……。」
「そして、なぜそこまで動揺しておるのじゃ?」
いつも通りしゃべってもらわんと調子が狂うのじゃが……。
「その……言えません。」
言えないんかい!?
「では、この少年を誰が受け持つ。」
「それでしたらわた
「受け持つ必要がないかと。」
……は?
ふざけた意見を言ったのはカーソン・ディアスか。よし、今度減給しておこう。
「その理由は何故じゃ。」
「簡単な話です。彼は危険すぎる。」
……ほう。正直に言って内心腸が煮えくり返るっておるのじゃが、元教員オレガノと私の元教え子のセレナの二人を侮辱するつもりかのう。
「彼はハーフ・エルフでありながら身分不相応の力を持ち、『黒風』『最悪の暴風』『皆殺しの鎌鼬』と呼ばれているAランク冒険者です。もし、力の暴走が起きれば止めれる人間は殆ど存在しないでしょう。」
カーソンが言った異名を聞いた瞬間、辺りが再びざわめく。
……儂も聞いたことがある。この街を拠点にして活動する冒険者。基本的にソロを好み、変幻自在の魔法で多くの魔物を討伐してきた。その中で巣に囚われていた女性たちを皆殺しにしたことで様々な冒険者が畏怖していると聞く。
まぁ、合格が決まっているし、何があっても入れされるがの。
「それに、彼は半端者。私たち人間とは違うただの『怪物』です。」
カーソンが再びふざけた言葉を発した瞬間儂は…
「いい加減にせよ。」
魔力を放出して恐怖を与える。これは儂の膨大な魔力の一部を出すことでできることじゃ。効果は大きく、レティーナ、アスフィを除く全ての教員が恐怖で体が動かせなくなっている。
「お主……いい加減にせよ。半端者だろうが怪物だろうが、ここは学舎。学びたい者が集いし場所。来るものを拒まずじゃ。」
「ひっ……!」
「して、誰が受け持つ。」
「私が受け持ちます!いえ、私が受け持たないといけません!」
ふむ、レティーナか。レティーナはAランク冒険者。彼と同じくらいの実力者じゃからよいじゃろう。
「これにて会議は終了とする。」
私は魔力を解除して会議室から出ていく。
そういえば、ルーナの両親や兄弟たちはどうしておるのか聞いておきたいのう。




