血の決闘
「殆どの生徒が倒れてるようだけど……流石はAランク冒険者の『黒風』と『毒兎』、と言ったところでしょうか。」
どうやら、レティーナは俺の冒険者としての実績を知っているようだな。
「その名前を呼ぶな!」
毒兎と言う名前を聞いた瞬間、エラは右二の腕からナイフを取り出しすぐさま投擲した。
毒猫、それはとあるAランク冒険者の異名だ。毒がついた二本のナイフをメインに使い、主に対人戦を専門とする冒険者だ。……噂では暗殺の仕事もしているらしいが、この場合伏せておく。
「おっと。」
レティーナは投擲したナイフを最低限の動きで体をずらし、避けた。
「……私は『毒兎』なんて言われるほどではない。私はただの『嫌われもの』だ。」
珍しく自分の感情を顔に出し、鬼のような顔、ほして唸るような声をエラの口から出ていた。
嫌われもの?一体何のことだ?俺の知る限りそんな異名を持った冒険者は存在しないはずだけど。
「……貴方は倒す。」
「私も貴方を倒させてもらいます。」
エラは腰から二本の紫色をしたナイフを取り出し、レティーナは虚空から八本の剣と八本の杖を出現させた。
どうやら二人は『本気』で戦うつもりだ。
「たく、しょうがないな。」
俺はエラから少し離れて腰にぶら下げておいた『アビス』から剣を取り出した。
俺が今回する戦い方は『援護』。俺よりも対人戦に慣れているエラに俺は恐らくついていけない。また、即興のチームだから連携か取れず噛み合わない。
なら、後ろでエラの勝利を導く。それが最も勝率が高い戦い方だ。
(けど、これで勝てるかどうかわからない。)
懸念はある。俺はAランクの冒険者の中でも単独で活動していることが多い。その為、今まで『援護』という戦い方をしたことがないのだ。
「……ありがとう。」
小さく呟いたエラは動いた一瞬で加速する。
「シッ!」
「はぁ!!」
エラのナイフとレティーナの剣の一本がせめぎ会う。
「フッ!」
エラは加速した勢いと剣に当たって止まった勢いを利用してレティーナの頭上を体全体を使って飛び越える。
うわっ、すごい身軽!俺はあんなに身軽に動くことができないから、ある意味参考になるな。
「しゃっ!」
体をひねり、レティーナの方を向いた瞬間再び加速して接近する。
「『八翼の偽罪』!!」
「させるか[夜風・黒魔導]!」
接近するエラに向けて杖から発射された光線が俺の手から生まれた黒い風がねじ曲げる。
これは前世で習った光の屈折と似たような原理でねじ曲げている。理科の成績はあまり良くなかったから、簡単に言うと魔力をねじ曲げて魔法の軌道を曲げているのだ。
「はあっ!」
軌道がずれたのを脇目にエラは突き進み、レティーナのすぐ近くにまで接近してナイフで下から切り上げる。
「えっ……?」
斬りつけられたレティーナのローブには一つの傷もついていない。
Aランク冒険者が使う武器の多くが業物。それを防ぐ程の硬さを持っているのか……!しかも、ナイフが通じないとなるとエラの攻撃手段が限られてくるぞ……!
しかも、エラは切り上げた直後だから完全な隙が生まれている……!
「『八戒の剣』」
虚空を浮かんでいた八本の剣が全てエラの方を向き、飛来する。
「くっ……!」
エラはそれを無理矢理体をひねり、避け、打ちおとして避け続ける。が、彼女の顔には余裕の表情はない。これも長くは持たないだろう。
(仕方ない、覚悟を決めるか……!)
「『それは憎悪、それは憤怒、それは絶望、これらをまとめて悲劇、これらを簒奪する事は許さない、この罪は俺が負うべき物だ。[罪の簒奪者]
体を防ぐように両腕をクロスしながら魔法を発動した瞬間エラを狙っていた剣が全てこっちに向かって飛来する。
「ぐぁぁ……!ぐぉおおおお!」
飛来した剣は両腕両腕にそれぞれ二本づつ突き刺さり、意識が飛びかけるような激痛を我慢して風で全ての剣を抜き取る。
くそ、なんて痛みだ。危うく意識が飛んでゲームオーバーになるところだった……!
「……え?」
「ルーナ君!?」
二人とも俺の取った行動に驚きを隠せていない。
まぁ、俺がこんな行動に出るとは予想外だったようだしな。
(くそ、大きな血管が斬れているのかわからないが血が止まらない、頭がクラクラする……!)
もう俺は戦闘不能になるだろう。なら……!
「せめてこれを残す……![これは契約、この契りは絶対に成就しなけらばならない。代償は我が血。血よ、唸れ。『ブラッド・ダインスレーブ]!」
俺は鞘から剣を抜き、辺りに飛び散った血に詠唱をしながら突き刺す。すると血が蠢き、赤い霧となり、エラの体に纏われる。
「……これ、は?」
「受けとれ……、俺の最大の強化魔法だ……!」
突き刺した剣にから手を離し、俺は意識を失った。
俺は、レティーナに……負けた。




