VS暴風
「レティーナ先生……。扉を破壊する勢いで入ってくるのは止めてもらいたいのですが……。」
「別にいいじゃない、その時は貴方が直すのだから。」
「私の魔力は貴方よりも少ないのですよ?壊したら貴方自身で直してもらえませんか?」
「私の精霊は『風』、土の壁を直すのは貴方の適性魔法である『土』のほうが綺麗に直せるでしょ?」
前でハワード先生とレティーナが話している。
ハワード先生……何故かお疲れのようだけど、本当に大丈夫か?
「せ、生徒の皆さんは校庭に行っておいて下さい。私はこの非常識なダメ人間に説教をしてきます。」
そう言ってハワード先生はレティーナの襟を掴み、教室の外に出ていった。
「……行くか。」
「行くしかないですね……。」
「行くっきゃないでしょ。」
「……行こう。」
「……行く。」
俺、シルク、アビー、ケネス、エラはそれぞれ呆れながら教室から出ていき、それを見た他の奴らは俺たちに付いていくように教室の外に出ていった。
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「さて、校庭にきたものの……何をするんだ?」
「さあ……何をするのでしょうか……。」
「まあ、何でもいいじゃない。」
俺とシルク、アビーは校庭に出てきて何をするのか予想を立てていた。
俺としては何かしらの実習の類だとは思うけどね。
ちなみに、ケネスは他の貴族の奴らと話している。まあ、貴族だし、学生時代から何かしらの関係を持ったほうがメリットは大きいし、何よりケネスの家は公爵の地位だからその関係は大きいものだからな。
「いやー、ごめんごめん。」
俺が考え事をしていたら上空からレティーナが降りてきた。
風の精霊の力で飛んでいるのか?でも、あそこまで上手く上空で態勢を整えることはできるものか?
「あ、先生!ハワード先生は?」
レティーナ先生にアビーが話しかけに行った。
確か、ハワード先生に説教されに何処かに連れていかれたけど……。
「ハワード?あぁ、説教が長かったから顔を殴って気絶させた。全く、元Bランク冒険者でも、あの程度だとがっかりだったでしたよ。」
へぇ……、ハワード先生、元はBランク冒険者だったのか。ん?じゃあ、それを倒したレティーナは一体、なんなんだ?
「ふ、副担任を一撃……?じゃあ、先生は!?」
「私かい?私は現役のAランク冒険者。確か『暴風』と言う異名がつけられています。」
Aランク……俺と同じくらいの実力者か……。
「え、Aランク……。英雄候補、勇者たちに迫る実力じゃないですか!?」
「……おい、私の前で勇者と口にしたな?」
ん?レティーナからとんでもない怒気と共に魔力を感じ……まずい!?
「『アガートラーム』!」
「アビーちゃん!?」
「させるか、『夜風・夜刀』!」
銀色に輝くグローブと俺の夜風がぶつかりあい、それぞれ霧散する。
なんて魔力だ……!かなりの高密度、かつ効率が極めて良い。これを何発も撃つことができるのか!?
「きゃあ!?せ、先生、いきなり何を!?」
「私はあいつらが大っ嫌いだ。あいつらの名前、異名、実績を聞いただけて怒り狂う程にな。」
「…………。」
レティーナ……あんたは俺と同じような存在か……。
「すまない、本当に取り乱してしまった。」
怒りを落ち着かせたレティーナはアビーに深く謝罪する。
「いえ、いいですよ!私も、軽々しく話しちゃったし。」
「ならよかった。気を取り直して、今から私対貴方たちと模擬戦をします。更衣室で着替え、武器を持って十分後、ここに戻ってきてください。」
「さっきの先生の怒り、本当に怖かった……。」
「勇者様をあそこまで嫌うなんて、かなり珍しいです……。」
アビーとシルクは勇者の事を嫌っているレティーナが予想以上を珍しいと判断したようだ。
ま、確かに魔族たちと戦った勇者たちはあいつらの本性を知らない連中からしたら、まさに英雄だろうからな。逆に勇者を嫌っている奴は基本的に少数派だしな。
「あの、ルーナさんは勇者様たちが嫌いですか?」
「……嫌いだ。一度、遠目ながら見たことがあるがどうにも胡散臭い。何かを隠しているような雰囲気をしていた。冒険者と言う、ある意味商人よりも信用が重要視される職業では胡散臭い、と言うのは信用できない証なんだよ。」
ま、『何かを隠しているような雰囲気』と言うのは嘘、あいつらが行った悪事の一端を俺は知っているからな。
「そう……ですか……。」
「まぁ、私もあんまり好きじゃないかな。だって、一度、パパの商店にダンタロッサが来たんだけど欲望に染まった眼で私を見ていたのよ?好き好きになれる理由が無いじゃない。」
あったことがあるのかよ……。ダンタロッサって俺の母さんを奴隷として娼館に売り飛ばそうとしていた奴だな。
「ダンタロッサか。僕のお父上もあの男を信用していませんでした。」
ケネスが貴族たちのグループから離れてこっちにきた。
ケネスの親父はたしか、悪事を働いているはずだが……。
「あの男は何処か恐ろしい物を持っているような感じがする、とお父上も言っておりました。」
ふーん、悪徳はダメだが、そういう第六感は良いんだな。
「てっ、早く行かないと更衣室が混んじゃうよ?」
あっ、確かに。
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「全員、来ましたか。」
俺たちは更衣室に置かれていた装備を着て、校庭に戻ってきた。
装備はレザーアーマーに、刃が潰された両手剣、それに魔法用の杖だ。
『ルーナ様には自分用の服からこんな紙以下の装備、脱ぎましょうよ。』
俺の頭の中からアースリアの声が聞こえる。
これは着替えている途中にアースリアの魔法『イルカの声』いわゆるテレパシーの魔法が俺の脳とリンクした。
今、アースリアの本体は倉庫の影で身を隠しているらしい。
『まあ、無いよりかはましだし、着ておこう。』
「剣を持ってきた人が五人、他は全て杖か……。』
因みに、剣を持ってきたのは俺とシルクアビー、ケネスや意外にもエラが持ってきた。
「それじゃあ、始めるぞ。」
合図と共にレティーナの魔力が高まる。
「『火よ、我が力を
「『水よ、その力を我に
「『我が体に力を宿せ
ケネスが、シルクが、アビーが魔法を繰り出そうとするなか、レティーナは……魔力を左手のグローブに流していた。
「魔道具使いか……!」
「[ファイヤ・ジャベリング]!」
「「アクア・サーペント]!」
「[フォーム・アップ]!」
「……よし、準備完了だ。」
それぞれが魔法を発動したのと同時に向こうも準備が終わったらしい。
「この程度の攻撃、これを本気で振るわなくてもいい!」
この魔力の高鳴り……!
「『スカーレット』!」
「[夜風・黒宝珠]!」
俺の周りに黒い風の塊ができた瞬間に紅い炎が視界を潰した。
魔法で防御してもこの熱量……。なんて火力だ。
「残ったのは……二人?」
辺りを見渡して見ると、シルク、アビー、ケネスが倒れ、他のクラスメイトたちも同様に倒れていた。
「……。確かに強かった。」
エラはどうやら無事のようだ。
……どうやって回避したのか不明だけど。
「二人、生き残ったようね。」
レティーナがこっちに歩いてくる。
さて、どう戦おうか。




