買い出し 五件目
「お、もう夕方か。」
ブラックマーケットから出てきた俺とアースリアに赤い夕日の光が彼らを照らす。
ブラックマーケットは薄暗いため体感時間と本来の時間に僅かながら『差』が出てくるのだ。
「そういえば、ルーナ様の持っているそのアイテムボックスとはどんな物なのでしょうか?」
「あぁ、これは父さんから三歳の誕生日プレゼントとして貰った物だよ。それがどうかしたのか?」
「朝方からかなりの量の物を買っていますけど重たくないのですか?」
歩きながら、アースリアが今日一日一緒に行動してきた俺に質問を投げ掛けてきた。
アイテムボックスと言う魔道具は本来、決められた量しか入れれない上入れた分だけ重くなるのだが、ルーナのアイテムボックスには資金、携帯食糧、衣服(アースリアの着ている服はアイテムボックスから出したもの)、魔道具などが入っているのに、ルーナはそれを平然と持っているのだ。
「これ、実はアイテムボックスって言ってるけど本当は全く違う物なんだ。」
「えっ……?そ、それはどうゆうことですか?」
俺の予想だにしない発言にアースリアは頭の上に幾つもの?マークを浮かべる。
「正解には『接続式魔導封印道具』って言う古代の封印装置の一種だ。古代ではこれを『アビス』と呼んでいたらしい。」
「あ、アビスですか!?」
俺は自分の持っているアイテムボックス……『アビス』の正体をアースリアに伝えた、そして言われた口を大きく開けて驚いた。
『アビス』とは『融合式魔導封印装置』や『崩壊式魔導封印装置』と呼ばれる国宝級の魔道具である。多く作られていなかったのか資料の殆どにも記述がなく、実物は存在しないと思われていた。
実は、ルーナがたまたま見つけた遺跡の中に記述があり、その記述と一致していたのだ。
ちなみにその遺跡はトラップが多く、ルーナですら浅いところまでしか入れていない。
「す、凄い魔道具じゃないですか!?」
「はっはっはっ!そうだけど俺にとっては軽いマジックボックスだよ。」
「(な、なんて鈍い人!?)」
驚きと嬉しさの余り、尻尾を大きく揺らすアースリアにルーナは笑いながら価値が分からないような言葉を言い、アースリアは小声で驚愕していた。
「て、そんなことよりヨキシーの店に行かないと閉まっちまう!」
「あ、確かそうですね!」
話題をずらし、走りだしたルーナに同意したアースリアも走りだした。
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「おい、できてるか!?」
「出来てますか、ヨキシー様!?」
「うるさいわよ……。て、私の店のドアがあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
全速力で走ってきたルーナとアースリアが飛び蹴りでドアを破壊し、音を聞いて奥から出てきたヨキシーはドアの状況を見て絶叫した。
「ちょっと、何してるのよ!?」
「いや、破壊してもお前ならすぐに直せるだろ?それなら勢いを止めずにそのまま突っ込んでいった方が早いだろ?」
「そうだけどぶざけるなあぁぁぁぁぁぁぁ!」
ドアを破壊した俺に問い詰めたヨキシーでも、俺の弁明や言い訳がない返答にまたしてもヨキシーは絶叫した。
「……本当に何でこんなことするのよ……。もういいわ。取り敢えず直す。『土の精霊よ、その大いなる体に存在する眷属の傷を癒せ、[ユグドラシルの解呪]」
ルーナに問いただすのを諦めたヨキシーは壊れたドアを一瞬で直した。
「やっぱり凄い魔法だな。」
「ふふ~ん、そうでしょ。」
ルーナが笑顔で称賛し、自分の魔法が誉められて嬉しかったのかヨキシーは(無い)胸を張ってどや顔をした。
「それより、私の服はどこにあるのですか?」
「あぁ、ちょっと来て。戦闘衣の詳細な採寸したいからね。」
「分かりました。」
ヨキシーにお願いされたアースリアはそのまま店の奥に行き、俺は朝と同じように店の中を見て回った。
「お待たせしました、ルーナ様。」
「お、帰って来たか、アースリア。」
数分後、アースリアとヨキシーが帰って来た。アースリアは黒を基調としたメイド服のような鎧で、胸当てや籠手などがついていなければただのメイド服のようだった。
「ど、どうですか、ルーナ様。」
「似合ってるよ。」
「あ、ありがとうございます!」
俺からの感想を聞いたアースリアは尻尾や羽を大きく揺らし、顔を紅潮させながら笑みを浮かべて喜んだ。
奴隷になってからアースリアは罵倒されることはあっても喜ばれることは無かったからだ。
「ねえ、本当に彼女は奴隷か?」
「彼女の金の首輪を見れば分かることだろ?」
喜んでいるアースリアを見ながらヨキシーはルーナに質問し、ルーナは呆れながらそれを返答した。
「たまに奴隷をつれた買い手が来ることもあるけど、あんな風に表情豊かな奴隷はいないからちょっと気になったのよ。」
「そうか。」
「……何か秘密でもあるの?」
「……!」
ふと、ヨキシーがこぼした質問に俺は口角を上げながら驚いた。
俺とアースリアには『勇者たちへの復讐』と言う恐ろしい秘密がある。そして、俺とアースリアの本当の関係は『共犯者』でもある。
「いや、そんなことないよ。」
「……そう、なら私はもう聞かないわ。」
「わかった。アースリア、そろそろ行くぞ。」
「あ、はーい!」
ヨキシーと話しを終わらせた俺は喜びで満ちているアースリアに呼び、それに従ったアースリアが俺の隣にきた。
「バトルクロス一着とメイド服五着、合計で金貨二十枚ね。」
「あいよ。」
代金を言い渡されたルーナは予測以上の大金に項垂れながら『アビス』から金貨二十枚を取り出し、カウンターに置いた。
「それとルーナ。人生の先輩として一つ忠告しとく。」
「ん、なんだ?」
「『秘密を打ち明けれるような友達、できるといいわね。』」
「……分かった。」
ヨキシーからの忠告の重みを理解した俺はまだ口角が下がりきっていないアースリアと一緒に店を出た。




