買い出し 三件目
「大丈夫か?」
「だっ、大丈夫です……。」
ギルドで鼻血を出したアースリアに回復魔法をかけて直した俺は、ギルドの近くにある公園に来ていた。
「そ、それで、次の店はどこに行くのですか…?」
「ん?市場の方に行こうかと思ってな。」
「市場?」
「あぁ、携帯食糧もそろそろ底が尽きそうだし、近くに闇市場もあるからそっちにも行きたいからな。」
「闇市場とは何ですか?」
市場に向かう理由を簡単に説明した俺にアースリアは素朴な疑問を質問する。
「合法、非合法のものまで何でもそろう場所だよ。」
「そ、そんなのばれたらだめじゃないですか!?」
「…………そうまでしても手にいれたい物……復讐のための道具を手に入れるためだ。」
闇市場に行くことを大声で否定したアースリアに対して、俺はクリオラを殺した時の情景を思いだしながら理由を言った。
闇市場には非合法である呪詛武器が多く流れ込んでいる。あの糞魔法使いは妹をそれで殺していた。なら、俺たちがあの女を殺すのにそれを使うのもまた道理である。
「……そうですか。なら、私は特に何も言いません。」
「それならいい。……と、そろそろ飯時だな。ちょっと歩くぞ。」
「あ、はい!」
身に纏う重苦しい気配を明るい気配に一変させた俺は歩いて行き、その後をアースリアがあわてて追いかけて行った。
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「ここが市場だ。」
歩き始めて数分後、二人は街の西側にある屋台が立ち並ぶ市場にたどり着いた。
市場には活気が溢れ、食材や軽食を買いに来た平民、骨董品を買い奴隷に持たせている貴族、商品を質に入れている商人、様々な人間がそこにいた。
「す、すごいです……。私はこんな風に多くの人で賑わっている場所なんて初めて来ました……。」
「そうなんだ。」
「(こんなところにルーナ様と一緒にこれて私はとても嬉しいです!!)」
「ん?何か言ったか?」
「いっ、いえ何も。」
頬を赤めらせこの状況を楽しんでいるアースリアの小声が聞こえなかった俺はそのまま歩いて行った。
「お、お兄ちゃんたち、ちょいと俺の店によってきな。」
二人が並んで歩いているとき、近くで串焼きを売っていた黒髪の大柄なヒューマンの男が二人に話しかけてきた。
「何の肉だ?」
「おう、この串焼きはオークの肉を使っているんだぜ。ちなみに一つ銀貨一枚だ。」
串焼きに興味を持った俺が素材を男に確認し、豪快に笑いながら何の肉か言った。
オークとはCランクに分類される人型の魔物である。ゴブリンと同じ単一性別の魔物で、人間寄りの豚の姿をしており、人間を拐い、生殖の道具としている。
そんなオークだが、そこから取れる肉は非常に美味とされており、流通量も多いため庶民には親しまれている食材である。
「ルーナ様!私、この串焼きが食べてみたいです!」
「お、そっちの奴隷の嬢ちゃんは乗り気だけど主の兄ちゃんはどうするんだい?」
「……わかった。買おう。何個食べたい。」
「五個です。」
「じゃあ十個程買おう。」
二人の気迫に押し負けた俺はしぶしぶとマジックボックスから銀貨を十枚出した。
「おう、毎度!そういえば兄ちゃんたちは魔導学園に入るのか?」
串焼きを渡した男が俺に聞いてきた。
俺は迷いなく
「一応、そのつもりだ。」
と、答えた。
「俺の娘もそこに入る為に試験を受けるからよろしくな!あ、俺の名前はガリオンっていうんだ。」
「……わかった。」
ガリオンという串焼きの屋台の店主から頼まれたことを了承し、二人は歩きながらオーク肉にかぶりついた。
「「美味しい(です!)」」
そして、二人は声を揃えて絶賛した。
オーク肉は脂身が少なく、またかかっているタレの辛味も良いスパイスとなっていて銀貨一枚という価格よりも良い品物だった。
「あ、あっという間に食べおいてしまいましたね。」
「そうだな。それじゃあ、他の買い出しに行くか。」
「はい!」
食べ終えた串を近くの木の箱の陰で燃やした。
「あの、ルーナ様、」
「ん、なんだ?」
「その、手を繋いでもらえませんか?」
串を燃やし終えたルーナに、頬を赤めながらアースリアは俺に頼みこんだ。
「……何故?」
「それは、その……はぐれないようにするためです。」
「……わかった。」
アースリアの意見に一理あると思った俺はアースリアの手を握った。
ルーナ自身が感知能力に優れていると言っても獣人のように魔力で個人の判別は出来ない為である。
「よし、行くか。」
「はい!」
はにかんだ笑みを浮かべたルーナとアースリアはそのまま市場を歩いて行った。




