買い出し 一件目
「………ん?」
朝、意識が目覚めたものの、不思議な感覚に襲われた。
昨日、確かに床で寝た筈なのにベッドの上におり、隣には裸で眠っているアースリアの姿が目に映り、彼女の柔らかい乳房が右腕に触れていた。
幼い顔立ちと身長の割に不釣り合いな体つきをしており、背徳的な雰囲気を醸し出す。
「…………なんじゃこりゃあああああああああああああああああああ!?」
「ふぎゃにゃあああああああああああああああああああああああ!?」
余りにも予想外な状態に驚き、無防備なアースリアの腹に無詠唱で風魔法を叩き込み、壁まで吹き飛ばした。
アースリアも起きた瞬間、腹に魔法がぶつかり壁に受け身を取れずにぶつかった為、悲鳴をあげた。
「な、なにしてんだアースリア!?」
「いえ、その……、余りにも薄着なので寒いかと思いまして……。ベッドの中に入れたのです。」
「たく……。俺らは共犯者だから身分の差とかそういうまどろっこしい関係は無しだって。」
「ならこれは私の意思で入れました。」
「……………」
笑いながら俺の言葉に従うアースリアに呆れながら外に出るしたくをする。
その様子を不思議そうにアースリアは見つめる。
「なにをしているのですか?」
「なにって…買い出しに行く準備だよ。」
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「ここがブリンガルの街、ですか…とても美しいです。」
「そうか?まあ、俺も初めて見た時は見惚れたからな、当然か。」
外に出る支度をした俺とアースリアは街のメインストリート、通称『スクールコース』を歩いていた。
この道の奥に魔法学園があるため名付けられており、脇の道には高級な店が多く佇んでいる。
「あの………本当にルーナ様の服を着させてもらっていいのでしょうか…。私はそんな身分では無いのに…。」
困った顔をしながらアースリアは俺に抗議する。
アースリアには俺の私服の一着を貸していおり、上は簡単なシャツに下は極々普通な長いズボンを履いていた。なお、背中と腰に穴を開けて翼と尻尾を出せるようにしてある。
これは奴隷の中ではかなり優遇された服装であり、様々な場所に買われたアースリアでもほとんど着た事の無い服である。
「ある程度着飾っておかないとバカ貴族が沸く。」
アースリアにうんざりとした表情をしつつその事情を俺は説明した。
この国は貴族制であり、貴族以外は名字を名乗っておらず、貴族は様々な特権を持っている。その為、些か傲慢な貴族は他の貴族や平民に物をせびってくる貴族もいる。そして、奴隷は一応物の扱いをされているため譲渡が可能である。
なお、ゴーレンスのギーン家は元々騎士の一族でゴーレンスはそこから出奔してきたのだ。
「ーとまあ、簡単に言えばバカな貴族から共犯者を守る為に着飾っているんだ。」
「確かに……復讐が終わるまであなた様から離れるつもりはありませんからね。(その後も離れたくありませんし…。)」
「そう言うわけだ。」
シシッ、と笑う俺を見て頬を赤めながらアースリアは笑った。
俺自身、身内には何かと甘いところがあるため、身内の危機は望んでいない。それは自身の平穏に繋がるからだ。
(まあ、あいつらは何が何でも許さないけどな。)
あの地獄を記憶は九年たった今でも鮮明に思い出す事ができる。
あいつらがいると平穏なんて来ないからだ。
「よし、ここだな。」
「……ここは?」
アースリアがゴーレンスに渡された紹介状に記名されていた店名を俺は確認した。
メインストリートから少し外れた細い道の奥にひっそりと一件の石造りの服屋がたっていた。 木の看板で『ブティック・オーレナー』と書かれてなかったらただの民家だと思っただろう。
「やってるかヨキシー?」
「ちょっ!?いきなり開けていいんですか!?」
主の余りにも身勝手な行動に驚いているアースリアを置いて店内に入る。
「やってるわよ……。全く、あんたって男は…。」
声に反応した店内の奥から若いエルフの女性が出てきた。
「それで、何のようなの?」
「あぁ、彼女の採寸とゴーレンスからの紹介状をわたしにきた。」
「し、失礼します。」
俺に紹介されてアースリアはおずおずと店内にはいる。
「ふーん、ドラゴニアスかー。よし、ちょっと採寸するから奥に来て。」
「は、はい!」
優しそうな笑みと新しい獲物を見つけた狩人の目をしたヨキシーに動揺しながらアースリアは奥に入っていく。
「さて、俺は店内を回ってよっと。」
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「あ、ルーナ様、採寸終わりましたよ。」
「お、そうか。」
アースリアたちが奥に入って数十分後、奥から二人が戻ってきた。
「これで私の服が着れそうです!」
「本当……、何て物を作らせようとするのよ……。」
喜んでいるアースリアの隣で地面に手をついてヨキシーは項垂れている。
どうやら、想像以上に無理難題を言わされたようだ。
「それと、アースリアの服を頼めるか?」
その状況を見ていた俺が呆れながら話しかけた。
「スリーサイズは図ったし尻尾と翼とかならすぐにでも出来るよ。」
「そうか、なら頼むは。」
「じゃあアースリアちゃん、好きな服を選んできて。」
「分かりました。」
割りきったのか立ち上がったヨキシーは右手でグッドの手をし、アースリアは適当な服を探しに行った。
「選んで来ました!」
「…………おい。」
服を探しに行ってすぐに幾つかの服を取っ手きたがそれを見た俺は顔をしかめた。
「何で全部メイド服なんだよ。」
アースリアが選んできた服が全てメイド服だったのだ。
「身分上、私はルーナ様の奴隷ですから、このような侍女の服装をしていた方が目立たないかと…。」
「………確かに。」
ぐぅの音も出ない正論を言われたルーナはそのままうなだれた。
「よし、じゃあ今から加工するから夕方位に取りに来て。」
「わかった、じゃあな。」
「あ、ありがとうございます!」
ヨキシーはテーブルに頬をくっ付けながら時間を指定し、俺とアースリアは店内から出てった。




