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閑話兄の記憶 前編

「ふーむ……。」


ルーナはオレガノから貰った本を食い付くように読んでいた。

ルーナはこの本が読めるもののそこに書かれていたのは魔法初心者であるルーナには到底理解出来ないような魔法が書かれており、宝の持ち腐れの状態になっていたのだ。


(くそっ、初級の魔法の隣に神級の魔法が書かれていたり、開いたとたんに魔法が発動したり、とんでもない本だな!!)


この本の作者に悪態を付きながらルーナはこの本を読んでいく。

この本はとてつもない宝だということを理解しているからだ。


「おーい、ルーナー!」


ふと、ルーナが本の魔法を解除した時、外から大きな声が聞こえてきた。そして、家の中を走り回るような音とともに一人の少年が部屋の中に入ってきた。


(こ、この声は……!!)


「な、なんだよカイ兄さん。」

「狩りに出かけるぞ!!」

「断る!!」

息を荒げて部屋に入ってきたきた少年の提案をばっさりと切り捨てる。

カイはこの村で猟師をしている父親の手伝いをしながら猟師を目指してるルーナやクリオラの義理の(・・・)兄である。

オレガノ曰く、昔働いていた場所の同僚が不運な事故に巻き込まれ死亡し、その妻である女性も出産のさいに死んでしまったのだ。そして残された赤ん坊をオレガノが引き取り、育てているのだ。


「だってよー。そんな小難しい本を読んでいるより外で狩りをして魔物を捕まえてたほうがずーーーと楽しいじゃん!」

「けど、知識は力になるし情報は経験にもなるから重要だよ?」

「いいからいいから!」

「わ、わかったよ……。」

余りにも押しの強いカイにとうとう根負けしたルーナは渋々と魔導書をマジックボックスに入れ、狩りの格好をして兄の後についていった。


===========

「よーし、じゃあさっさと狩りを初めようぜ!」

「いや、兄さんの狩りの方法ってたしか……。」

「まず、匂いで探して、見つけたら気配を消して近づいて一撃で仕留める、簡単だろ?」

「いや、それハーフ・エルフには無理だから!?」

狩りの方法を説明したカイにルーナは切れのいいツッコミを入れる。

人間の中で随一の身体能力と直感、五感を持つ獣人の狩りの方法では身体能力はヒューマンと大差のないハーフ・エルフのルーナには出来ないからだ。

そもそも、ルーナは狩りをしたことがない。何せオレガノが狩りを禁止していてルーナを連れていかないからだ。カイは何度も勝手に狩りに行き多くの獲物の捕らえてきた経験があるがルーナにはそんな経験は存在しない。

つまり、狩り初心者のルーナにそんな高等テクニックは身体能力以前に出来ないのだ。


「わかってるって。だから他の方法で仕留めるのさ。」

「な、なんなだよ。」

「それは……実戦で試してあげるよ!」

「ぶもぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

カイが声を荒げたと思ったら後ろから凄まじい鳴き声と共にルーナの背後に大きな緑色の猪の魔物『グリーン・ボア』が現れたのだ。


「なっ!?[風よ、大いなる風よ、荒れ狂う嵐となりて我が怒り、我が恨み、我が怨嗟を体現せよ、我が名はグリザリア![テンペスト・バースト]!!」

「ぶもぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」

ルーナが体の方向をグリーン・ボアに向け、魔導書に書かれていた属性魔法を唱えた瞬間凄まじい暴風が発生してグリーン・ボアの体を遥か彼方まで吹き飛ばした。

テンペスト・バースト。それは風属性の魔法の中で最上位の魔法の一つであり、堅牢な城を一撃で荒野に変えたとされる伝説の魔法。そしてこの魔法の継承者がおらず、廃れてしまった失われた技術(ロストテクノロジー)の一つでもある。


「な、なんつー魔法だ……。くそ、頭が痛いし体が重い……。」

「す、すげぇ……。こんな属性魔法初めて見た……。」

そんな高位の魔法と露知らず余りにも強力な魔法

とその余波で木々が吹き飛び土が抉れた惨状にルーナとカイは現実逃避をしそうになってしまった。


「なあ、兄さん……。」

「ああ、わかってる……。」

「「全速力で隠蔽しよう。」」

ルーナは倒れた木々を退かし、カイが土の精霊魔法を使い抉れた場所に土をかけて夕方まで隠蔽作業は続き、夜になりそうになった時に家に帰り、居間を見たら


「遅かっわね……カイ、ルーナ。」


笑顔と優しい声音とは裏腹に凄まじい怒気を撒き散らすセレナがイスに座っていた。

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