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閑話兄の記憶 後編



「な、ななな、なんだい母さん。」

「そ、そうだよママ、何でそんなに怒ってるの?」

声を震わせ、顔をひきつらせながらもカイとルーナはセレナが怒っている理由を問うた。

セレナは一呼吸を置いて笑みを浮かべつつ怒気を撒き散らすと言う器用なことをしながら切り出した。


「貴方たち、今日、山で何をしていたのかしら?」

「そ、そりゃあ猟に決まってるだろ、なあルーナ。」

「そうだよ、僕はカイ兄さんに連れられて猟に参加したんだよ!」

怒り浸透のセレナの問いにカイが正直に答え、ルーナも正直に答えた。

口裏を合わせるようなことをする事はなかったもののセレナ(ははおや)をなるべく煽らないように正直に答えたほうがいい、と無意識に理解したからだ。


「それは後でカイを怒るとしてそれはいいわ。」

「(ふう、危なかった。)」

「(危なかった、じゃないよ!俺は怒られること確定じゃん!?)」

「(いや、だってカイ兄さんが先にルールを破ったから仕方ないじゃん)」

「(ぐぬぬ…)」

二人の解答を聞いて怒気をいくらか弱まり、セレナは安堵の表情をしたもののカイは怒られる事が確定して、その事から逃げれた弟のルーナとアイコンタクトで口論をしていた。

二人ともなんやかんや仲がいい。


「もう一つあるのだけど、良いかしら?」

「「は、はい!」」

(な、なるべく返事だけしよう。)

再び怒気を纏ったセレナに驚きながらも兄弟は返事をする。

後怒られる可能性があるのはルーナが魔法を使ったことだけだが、それに触れられると色々と面倒な事になるため墓穴を掘らないようになるべく返事だけをするようにルーナは心の中で精神統一をした。


「今日、山で風の精霊(・・・・)たちが凄まじい勢いで飛んで行ったのが見えたのだけど…何かしってる?」

「(あ、やべぇ。)」

「(ばれてるじゃん!?)」

セレナが極々当たり前のような口調と雰囲気で質問し、ルーナとカイは身体中から脂汗を流し、笑みを引きづった。

実は精霊魔法と属性魔法は本質的には同質のものであり、例えば火属性の属性魔法を使った場合、火の精霊と交信する力が強い存在ならそれらを感知するとが出来る。

今回はルーナの使った[テンペスト・バースト]が極めて風の精霊と交信する力が強いセレナが感知したのだ。


「さ、さあ、僕は知らないよ……。」

「お俺も……。」

「それならいいわ。」

((あ、危なかった~~!))

上手く口裏を合わせたルーナとカイの答えにセレナは納得したのか纏っていた怒気が霧散し、いつもの笑顔だけが残った。


「ルーナはもう寝なさい。カイは残るように。」

「はーい!」

「は、はい……。」

ルーナはセレナに言われた通りに部屋の方に向かい、そのままベッドで眠ってしまった。


========

「ルーナ……。」

夜の居間でセレナは思い悩むように頭を抱えていた。

カイを一通り怒り終えたセレナはカイを寝室に行くように命じて、一人、大きな悩みに直面していた。

(ルーナ……。あれだけの魔法を僅か三歳で使えるなんて…。)

セレナの悩み、それはルーナの魔法である。

セレナは家に帰って来たルーナから体に付着した僅かな魔力から凄まじい魔法を使用したことがわかったのだ。


(もし、ルーナが大きくなったら確実にこの村から出ていくと思う。私もそうしたもの。そうなると確実に彼の魔法が俗世の目に当たり……ルーナは壊れる(・・・・・・・)。私のように。)

この世界において魔法とは強力な攻撃方法であり、一つの戦略にすら匹敵するものである。

そしてルーナは強力な魔法と膨大な魔力量を持っている。その為、確実に国家に目をつけられて……死ぬまで戦い続けることになりかねない。セレナは昔、冒険者と呼ばれるモンスター退治を専門とする何でも屋だった。そして多くのモンスターを殺していき、その成果と美貌から『麗風』と呼ばれ、国家にさえ目をつけられてしまい、多くの厄介ごとを押し付けられ、今では精霊魔法を使うだけでセレナの位置を把握できる魔法があるくらいだ。


(ルーナは私以上の魔法使いになると思う。それだけの素質と才能がある。)

「守らないと……。ルーナを、守らないと……!」

手を強く握りなからセレナは一つの誓いを立てた。

余りにも高いルーナの魔法使いとしての素質と才能を腐らせないように、国や種族としてのしがらみに捕らわれないようにするための誓い。


この日からセレナはルーナが魔法を使うことを黙認し、平穏な将来を願った。


ルーナはこうして優しい性格になり、成長していった。

だが、何よりも愛していた家族の命を奪われ、もう二度と平穏な人生を歩むことはできたくなった。



そして、あの悲劇から九年の歳月がたち、物語は動き出す。

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