閑話父親の記憶 前編
「「「「誕生日おめでとう!」」」」
「ありがとー!!」
俺は今年、三歳となった。
そして、二年前に産まれたエルフの妹クリオラを含めた家族に祝われた。
俺自身は「家は貧乏だから、祝わなくてもいいよ。」と言ったものの「エルフには三歳、五歳、七歳の誕生日にその誕生を祝うという伝統があるの。それに…ルーナは本当は祝われたいのでしょ?」というエルフの伝統と母親の勘(当たっている)というセレナの言葉に負けたのだ。
「さて、どんどん食べるか。」
「「「はーい!」」」
俺たち三兄弟は元気よく返事をしてご飯を食べはじめた。
いつもの食卓は野菜スープと硬いパン、時々猪の肉が出る程度だか今日は違う。
テーブルの中心には五本の角を持つ鳥の魔物『ホーンターキー』の丸焼き、小さいながら機敏な動きをする『ライダーフィッシュ』のフライ、山菜のサラダが並び、ルーナの前には柔らかそうなパンが置かれている。
「このお肉美味しい!」
「美味しー!」
「そりゃあ、俺っちが狩ってきた鳥だからな、旨くて当然さ!」
「優しい味付けの料理だね、セレナ。僕は君みたいな優しい料理を作れる程の優しさを持つ女性に選ばれて嬉しいよ。」
「私もです…。あなたがいてくれたおかげでこんなにも楽しい家族と一緒に過ごせ嬉しいです
…。」
「セレナ…。」
「あなた…。」
(((あーまたやってる。)))
俺とクリオラがホーンターキーの丸焼きを美味しいそうに食べ、自分が狩ってきたものが喜ばれてカイははにかんだ笑みを浮かべ、オレガノとセレナは桃色の世界を周りに作り、それを見た三人はやれやれと首を振った。
そんなこんなで楽しい時間を過ごしていった。
「そういえばルーナ。」
「ん?どうしたのパパ。」
「何か欲しい物はあるかい?」
ふと、フライを食べていたオレガノがサラダを食べていた俺に質問してきた。
(うーん、欲しい物かぁ…。)
俺は頭の中で考える。
俺自身が欲しい物はオレガノが持っている魔法について書かれている本だが、そんなものよりもこの家族という前世では味わえなかった『家族の愛』という本当に大切な物を手に入れれてルーナは満足しているのだ。
「特にな-」
「特になし、はダメだよ。」
俺が欲しい物はないと考えて言おうとしたら却下された。
「ルーナ、君は小さい頃から余り泣かないおとなしい子だった。大きくなってからも余り僕たちに頼らなかった。だから、今日くらい君の我が儘を聞きたいんだ。」
(そうだったんだ…。)
オレガノは自らの心の内を明かし、父親の心の内を知った俺は驚きながらも顔にそれを出さなかった。
「……じゃあ、パパが持っている魔法の本。」
「……え?い、いや、おもちゃとかじゃないの?」
「だって魔法を使う方がおもちゃで遊ぶよりも楽しいんだもん。」
「………」
(ん?そんなにか?)
余りにも達観した言葉にオレガノは顔の表情が固まる程おどろいき、それを見た俺は余りの驚きっぷりに疑問の顔していた。
「い、いいの?ルーナ。本当にいいの?」
「パパ、どうかしたの?」
「そんなもの頼むより弓を頼んだ方がいいぞ?」
ルーナに本当にいいのか確かめるセレナ、どういう状況か呑み込めてないクリオラ、自分の願望だだ漏れのカイ、家の中は騒然とした。
「わ、わかった。持ってくるよ。」
そう言ってオレガノは倉庫の中に入り、一冊の羊皮紙でできた大きな本を持ってきた。表紙には見たことのない言語で書かれているものだった。
「これは前に働いていた『ブリンガル魔導学園』の同僚からもらった本だ。……あ、明日からこの本に書かれている言葉がわかるように特訓するぞ。それでもいいのか?」
「うん、いいよ!」
「じゃあ渡そう。」
(やったー!これでもっと多くの魔法が使えるようになれる!)
父親と約束をした後オレガノの手から本を手渡されて、俺は心のそこから嬉しくて、舞い踊りそうになった。
「あ、それと、これも渡しておくよ。」
そう言ってオレガノが俺に渡したのは極々普通な麻布の袋だった。
「パパ、これなに?」
「これは『マジックボックス』といってかなり高額な代物だよ。これもあげる。それと、使い方は……。」
(マジックボックス?てことはこんなかに物を入れれば色々な物が持ち運べるのか。)
オレガノがこの麻布の袋について説明している中、俺はこの袋の使い方を考察していた。どっちも魔法が好きなため、人の話しを聞いていないのだ。
「………本当に似た者同士ね。親子だからかな?」
「………確かに。」
「……?」
そんな親子をカイとセレナは呆れた視線で見て、クリオラはこの状況を理解していなかったのだった。




