控え室の交錯
「よし、みんな揃ったな。」
「……うん。」
「いよっしゃあ……!早く戦いたくてうずうずしてきたぜ。」
「ええ。……最も、私はただ癒すだけですが。」
「そうだねー。さすが最強の回復術師『血濡れ』の異名にそぐわないね。」
全員が朝食の取り終えた後、各々が支度とウォーミングアップを行い、外に出る。
見た感じ昨日の精神的な疲れは残っていないようだ。しかも、自分の体を動かし他の奴等の動きを見たが全員が最高のコンディションになっていることは間違いない。
因みにウェルは今日はこの宿の手伝いをするらしい。会場までの道のりが長くて行く前に倒れてしまうらしい。
「さて、行きますか!」
「「「「おう!!」」」」
全員腕を突き出し、上に勢い良く振り上げて会場まで歩いていく。
さぁ……この戦い、勝たせて貰いますか……!
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『はいはーい、今会場は大盛況していまーす!』
会場に近づくに連れて屋台が多くなり、空中に浮かぶ幾つもの画面には朝早くから多くの人が混みあっていることを実況が話している。
会場は古代の円形闘技場を改修して産み出された、会場の中心に異世界への転移装置がある。
この転移装置から飛ばされた場所では死ぬか装置の場所に戻ることで元の世界に戻れて何より向こうでの傷や死はこの世界ではなかったことになるらしい。だが、転移先はランダム要素が深く関わり、集団で飛ばされることもあれば全員がバラバラの位置に飛ばされることもあるらしい。
うん、普通にすごい。俺でもその魔道具の解析は不可能だろう。それを生み出した古代の文明は称賛できるしそれだけの文明が何故滅びたか不思議でしかたない。
「お、リーダー。あそこが受け付けっぽいぞ。」
「行くか。」
多くの武装した人だかりが出来ている場所をアルンが指を指して俺たちはそこに向けて歩く。
うーん、順番待ちをしている人の筋肉の動かし方や呼吸法、歩法を見る限り武術に関しては素人ではないけど殺しあいを想定してない道場剣術である奴が大半、実践で磨いてきた奴が極少数と言ったところか。
「次の人……て、ルーナ君!?」
「誰かと思ったらラルじゃなねぇか。」
「(……消そうかな?)」
順番が回ってきて呼び出された場所に向かったらブリンガルのギルド支部受付嬢であるラルが剣魔祭の受付を行っていた。
そして、俺に気がついたラルは頬を赤め口を塞いで驚き、何故か後ろから凄まじい殺気の気配がする。
これは……触れないでおいた方がいいかもな。面倒な事になりそうだし。
「取りあえず、さっさと受け付けを行いたい。」
「あ、はい!えっと……ブリンガル魔導学園の第二パーティーでいいですね?」
「ああ。」
「それでは、こちらをどうぞ。」
仕事の顔に戻ったラルは羊皮紙に何かを書き込み、木箱から小さな水晶が入ったバンクルを人数分取り出して俺たちに渡す。
これは……魔道具か。おおよそ、連絡手段か地図の役割でもしているのだろう。
「なあなあリーダー。あの女の人は誰だ?」
「……ブリンガルのギルド支部の受付嬢のラルだ。俺がお前たちと出会った頃からの知り合いだ。」
「(……消そう。うん、消そう。)」
控え室に向かう途中、俺の肩に腕を回して子供っぽい笑顔をしてくるアルンに俺はラルについて説明する。
あと、後ろから凄まじい殺気を明確に感じとれるけどもう放置でいいよな?
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「やあ。」
「……お前か。」
俺は控え室についたのと同時に他の奴等から離れ、天井を支える柱に寄りかかっているネモに話しかけられる。
本来なら敵同士である俺らが話をするのはあの場で渡されなかった『テキワカール』を入手するためだ。
「それで、これが『テキワカ
「君がですかー!」
「ごふぉ!?」
ネモから『テキワカール』を受け取ろうとした瞬間、女性が俺の腹に突っ込み柱に打ち付けられる。
青みがかった緑色の髪を短く切り揃え、同じ色の目の一つにモノクルをつけ、戦闘に向かなそうな燕尾服を着ており、どことなく男性的な雰囲気を出している。
にしても、いてぇ……けど、体内での出血の感覚はない。回復魔法を使わなくていいだろう。
「えっと……どちら様?」
「……何故、ここにいるんだいオラシオン。」
「そりゃ、僕も参加者だからサ。」
オラシオンと呼ばれたエルフの女性は起き上がって、不敵な笑みを浮かべる。
俺も立つか。
「あぁ、彼が協力者であるオラシオン・ムーアだ。」
「……彼?つまり、男か。女みたいな顔立ちだな。」
「貴方も似たようなものサ……。」
内心驚きながらポーカーフェイスで隠しつつ立ち上がった俺の言葉にオラシオンは呆れながらツッコミを入れる。
まぁ、確かに俺とオラシオンはどことなく似ているような気がするな……。女っぽい男みたいだ。
「てか、ムーアってレティーアと似てるな。」
「それはそうサ!僕とレティーアは年の離れた姉弟なのサ!」
元気そうに話すオラシオンに納得する。
成る程、レティーアと姉弟だったのか。確かにレティーアも魔道具をメインで使うAランク冒険者だったな。
それでも俺とどこか似ているのは一体何故なんだ?まさか……この二人とセレナ母さんが姉弟なのか?
(いやいや、そんなことはないだろう。)
その考えを一瞬で排除する。
そんな物語、現実にあるわけがない。てか、その場合レティーアかオラシオンが死ぬ直前に真実を俺に告げて絶命する落ちじゃないか。それは幾らなんでも気が引ける。
「……それで、『テキワカール』を早く渡して欲しいのだが。」
「あ、あぁ。これだ。」
思考を切り替えてネモに『テキワカール』を要求してネモに血のような赤色に染まった粉が大量に入いっている巾着のような袋を貰う。
これが、『テキワカール』か。使い方は恐らく粉を散布して付着する。すると発光とか魔力で察知できるとか何かしらのアクションを引き起こすのだろう。
「取りあえず説明するね。この『テキワカール』は僅かな血を染み込ませて付着させると発光する魔道具……正確には『魔生具』だ。これには下手人全員の血が染み込んでる。」
やっぱりな。
けど、よく血を全員分集めれたな。何かしらの魔道具でも使ったのか?
「それじゃあ俺はこれで。」
「じゃあね。」
「バイバーイ。」
受け取った『テキワカール』を腰に着けた『アビス』に入れた後、俺は仲間の方に戻る。
さて、これで集中して闘いに望めるな。
(……?なんだ、今の気配は。)
俺はふと奇妙な気配を感じる。
なんだろうな、人を人と思っていない下衆の気配がしたが……気のせいか。
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「あれが、チート野郎のルーナか。」
僕は僅かに殺気を放つ。
全く……数日前、侍女に大金を払って『ヴァンパイア』を買わせに向かわせたのに持ってこないし昨日は僕のお姉さまに近づいた奴があのチート野郎だったし、今日はそれと合うしで最悪の気分だよ。
「けど、勝つのは僕だ。僕が勝つ。」
僕には勝つための作戦がある。それを実行すればあのチート野郎を倒せるしお姉さまがこっちを向いてくれる。
絶対に勝ってやる。たとえ……どんな手を使っても。最悪、お姉さまが死んでも、ね。




