決闘
「さて、勇者様の実力を確かめて見ますか。」
「僕は闘いたくない……。」
「甘ったれてんじゃねぇよ。剣魔祭に出るんだ、少し位羽目を外しておいた方が丁度いい。」
無駄に豪華な装飾をされた剣を構えながら闘いを拒むユウヤに向けて、俺は拳を構えながら狂暴な笑みを見せつける。
決闘の会場は庭園の一部にあり、地面は硬い土出来ていて整備がしやすそうだ。
因みにスーツは脱いで仕事に使う軽装の黒い鎧に黒い外套を纏っている。
「どっちが勝つと思う?」
「そりゃあ、ユウヤだろ。」
「私もそう思います。何せ、私たちの中で最も強いのですし。」
「それだったらルーナだって負けてないよ。」
「……うん。ルーナが勝つ。」
リングのの近くでカガリとリリカが勝敗を自分たちの見解だけで予想し、その隣でエリカとエラが見ただけでわかる情報を把握して俺の勝利を確信している。
俺たちの噂を聞いた奴等がこの決闘を見るために集まっていた。当然か、何せ本物の勇者サマの実力をしっかりと見れるのだからな。
全く、俺たちは見せ物ではないのだがな。
「じゃあ、この銅貨が落ちた瞬間、決闘を始める。」
「いいよ。こうなったらやけだ。勝ってやる……!」
俺はユウヤから了承を得て左手の親指で銅貨を俺とユウヤのいる場所の中間地点に飛ばす。
俺は体内を巡る魔力を加速的に廻す。廻す、廻す、廻す。あの剣の間合いよりも深くに一瞬で入る……!
そして、コインが回りながら落ちる、落ちる、落ちる。
―――――そして、落ちた。
「[夜風・瞬天]!」
俺は黒い風を纏い、目にも止まらない速さでユウヤに近づく。
対するユウヤは直線に動く俺をそのまま剣で振り下ろして対応するつもりだ。なら、ここで急か
(……!なんか……ヤバい!!)
加速しようとした瞬間、本能が、第六感が警告を発する。こういう時の警告はかなりヤバい証拠だ、従うか!
「せりゃあ!」
「ッ!![夜風・下弦]!」
ユウヤの剣が振り下ろして俺を斬ろうとした瞬間、俺は黒い風を横の方に射出して避ける。
そして、黒い風を解除して後ろに飛ぶ。
「これは……!」
俺を斬ろうとした剣を見て眼を見開く。
剣が地面を切り裂いていた。普通ならかなり高度な技術と高い能力を持った一流の剣士にしか出来ない芸当、それを武術の初心者があっさりとこなす。
なにか、あるのか。
「そっちからこないのなら……こっちから行かせてもらうよ!」
「ふんッ!!」
俺ですら目に見えない速度で動き、一瞬で近づいたユウヤは俺に剣を振り下ろす。
その剣を両手で挟んで受け止める。言うなれば真剣白羽取りをおこなったのだ。
成る程な。近くからじゃなかったら気がつかなかった……!
「魔道具か……!それも、かなり質の良い……!」
「当たり前だ。何たってこれは古代の勇者が生み出した作品の一つだ!俺らは全員が同じ製作者の物を一つ、又は二つ持っている。現地人に勝てると思うな……!」
語気を少しずつ荒げるユウヤに少しずつ俺は圧されてく
……じゃあ、潰すか。俺を見くびった罰だ、借り物の力を使うお前にはぴったりのな。
「[カース・ギルティチェーン][夜風・瞬天]」
「ぐわっ!?」
俺は両手に赤黒い魔法陣を作り上げ、ユウヤの剣と腕に魔法陣の同じ色の鎖を巻き付ける。
そして、剣から手を離し、鎖を持ったまま地面を蹴り、そのままユウヤの頭上を飛ぶ。次の瞬間、剣と腕に巻き付いた鎖に引っ張られユウヤは頭から地面にぶつける。
『カース』シリーズの魔法は元は呪詛精霊魔法を無詠唱で使えるように調整して生み出したものだ。そして、呪詛精霊魔法の反則級の強力な呪詛を使うことは出来なくなったが、一部の『カース』に魔法その物に干渉する特性が出来たのだ。
因みに、無属性の呪詛よりも普通に呪いは強い。
「くそ、離せ!」
「あんたの剣は滅茶苦茶切れ味がいい。けどな、この鎖は魔法の影響を受けない。どのみち、もう勝ち目がない。[ウィンド・アップ]」
腕を拘束されてもがくユウヤの腹を白い風を纏った足で蹴り飛ばして場外に叩き出す。
正直に言って興醒めだ。この程度の実力だと『ユウ』を想定とした訓練とは程遠い。
「おい、大丈夫かユウヤ!」
「今すぐ治します!『ヒール』!」
頭から血を流すユウヤをリリカが白い光を生み出すとみるみるうちに傷や鎧が治り、果ては剣に巻き付いた鎖が解除された。
あれは……魔法ではない力が作用しているな。恐らく、死んだときその数分前に戻す『時間時計』の上位互換『時間修復』か。とんでもない加護を持っているな。
敵として回るとなると面倒だが、この状態で攻撃したら確実に怒りの矛先がこっちに向く。それは避けないとな。
「俺の勝ちだ。」
「てめぇ!手加減してもらってその態度はなんだ!」
はぁ?手加減した?いやいや、どう見ても手加減せずに実力で倒したのだが?
「そうだそうだ!」
「ユウヤ様がこんなにあっさりやられるはずがない!」
「さすがユウヤ様!この程度の相手に全力を出さないとはさすが勇者!」
……気がついたら全員が俺の敵になった。てか、あの結果を見てどう手加減したと解釈出来るんだ?
「(……ルーナ。)」
「(……どうかしたのかエラ。)」
何故か非難の声を浴びせられながら広間に戻っているときエラが小声で話しかけてきた。
全く……こいつもか?
「(……あの男、恐らく自分以外の精神に直接作用する能力を持っている。)」
「(成る程な。おおよそ効果は『自分に対する解釈を自分の都合良く解釈させる』特性か。)」
「(……うん。けど、リリカやアカネ、私やエリカ、アルン、そしてルーナの実力を知っている人たちは効果がなかった。恐らく、能力の影響は個体差があるんだと思う。)」
俺はエラと小声で話している時にふと、考えが浮かんだ。
俺たちの加護って……何かしらの魔道具で見れるのでは?そうでなければ異世界人であるユウヤやタクヤたちが自分の能力を理解出来ないのだから。
「なあ、エラ。」
「……ん?何。」
「俺たちの加護ってさ……何かしらの魔道具を使えば見えるんじゃないか?」
「……戻ったら調べる。取りあえず、王城にでも潜入する。」
「俺もいく。興味が湧いた。」
俺とエラは潜入の計画を立てながら広間に戻っていくのだった。




