狂気の笑み
「……ふぅ、食った食った。」
俺は食事を満腹になり、満足感を楽しみながら適当に気配を消して広間の中の情報を収集する。
このパーティは選手だけでなく貴族たちも参加しているからな、もし何かしらの依頼が受けた時にこの情報がメリットに働くかもしれないしな。
「……?なんだあれは。」
「あぁ、あれは例の勇者らしい。」
広間の中心に人だかりが出来ていることに疑問を覚えていると隣でローストビーフの塊を一人で食べていたキュールが説明してくれた。
へぇ……あの人だかりから分かるがタクヤのようなタイプとは全く違うのだろうな。何せ、タクヤは誰よりも暗殺者としての特出する才能を持っている反面、影が薄いから陰キャなのだろう。
「ちょっとちょっかい出してこよう。」
「全く……殺しあいがしたいだけだろ?」
「そうともいう。」
俺は僅かながら殺気をだし、口角を吊り上げて勇者に向かって歩き始めた。
屑勇者の『ユウ』と直接的な戦闘になった場合の訓練相手程度にはなるだろうしな。
「やあ。」
「……よく俺の気配に気がついたな。」
「そりゃ、かなりの殺気をばらまいているんだ、分かりやすすぎるよ。」
「……ふん。」
人混みのに近づいたら姿を消したタクヤが話しかけてきた。
話しかけられる直前にやっと分かったが……こいつ、本当に暗殺者としての才能がありすぎるだろ。前世のそっち系の業界の人に学んでいたのなら本当に優秀なんだろうな。
「まさか、ルーナも優也に興味を持ったのか?」
「まあな。……そうだ、そのユウヤって奴にとりつないで貰えるか?」
「いいけど……。」
俺は少し小声でタクヤにお願いを聞いてもらい、人混みの中に入っていく。
うぅ……人の熱で暑い。
「……ふう。」
「あ、大丈夫ですか?」
「……ああ。」
人混みの中心に入った瞬間、僅かによろけたところを黒髪青目のヒューマンの少女に支えられた。
身長は恐らく日本人の女性の一般的な身長だろうか……それに、黒髪なのに青い目なんて珍しいな。遺伝子の影響で基本的に青と黒をかけても黒とかにしかならないのに。
「……どうかしたのか?」
「……綺麗……。」
「梨々香、どうかし……た……の……か……?」
何故か俺に見惚れているリリカに話しかける筋肉質な男も俺を見て何故か口をあんぐりと開けている。
おいおい、口を開けるのはいいけど、幾らなんでも無防備過ぎないか?俺だったらこの一瞬で口に手を入れて内臓を取り出すことだって出来るんだぞ?
「てか、さっさと手を離せ。」
「あ、ご、ごめんね。」
「おいおい、助けてもらってその言い種はないだろ?」
「そこの筋肉だるま、口を開ける時は注意しろ。無防備に開けていいのは自分の周りに顔見知りがいるときだけだ。」
「い、いきなりなんだよ。てか、筋肉だるまじゃなくてカガリ・テンコウって名前があんるだが。」
「敵対者、特に暗殺者がいた場合口に手を入れられてそのまま脳とか心臓とかが引っ張り出されるぞ。」
「ッ!!」
カガリの話を無視して俺はリリカの手を振り払う。
「それで、勇者はどこにいる。」
「あ、あぁ……あれだよ。」
カガリが親指で指差した方向には青い鎧を着た騎士がいた。
顔立ちは童顔で髪色は茶色っぽい黒、目は群青色で無駄に爽やかな笑みを浮かべて貴族の少女たちの話し相手をしている。
鎧があるから見えないが……気配からして弱いな。幾ら治安の良い日本からきてもあそこまで気配が軟弱な奴は見たことがない。
「ん?君は誰だい?」
「俺はルーナ。参加者だ。」
「僕はユウヤ。それで、その参加者のルーナさんが何のようかな?」
「決闘を申し込みにきた。(断ったら……ここら辺の奴等を殺す。)」
「ッ!!」
俺は僅かに殺気をユウヤにぶつけながら小声で脅す。
無論、殺すつもりはない。脅しはただの方便だ。最も、それを知ることはこいつには出来ないだろうがな。
この剣魔祭には変わった風習があり、前日のみ、法律で基本的に平民が出来ないとされる『決闘』を可能とするのだ。
決闘とは、一対一で闘うものだ。こんな方法を使うのは癪だけど、実力を計るには丁度いい。
「……分かった。受けよう。」
「「「「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」」」」
ユウヤが決闘を受諾した瞬間、辺りにいた貴族の少女たちは歓喜の声をあげた。
うるさっ!?いったいなんなんだ!?ま、どうでもいいけど。
「それじゃあ、外でやろうか。」
「……こうすれば殺さないのだな?」
「あぁ、あれは嘘。お前を決闘に誘い出す方便だよ。」
「……本気に見えたが?」
「当たり前だよ。出来るのだから。」
「……君は一体何者だよ。」
俺は作ったような笑みを消し、恐ろしいまでの邪悪な笑みを浮かべると同時にユウヤの顔に恐怖が滲む。
何者か、か。言うつもりはなかったが、言うか。
「俺はルーナ。心の中に怪物を飼う者。さぁ、
一緒に即興の喜劇を始めようか。」




