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5 隠された過去

緩やかに流れる川に沿って、赤や黄色の鮮やかな屋根の歴史ある家々が立ち並ぶ美しい街。

この街が、ランドルフとハリエットが恋に落ち、テオとマルセルが命を散らした場所だ。


カメリアと私は、ウェーバー家とモンターン家の関係を調べるため、この街を訪れた。


話してくれたのは、かつてウェーバー家の屋敷で働いていたという老婦人、マルタだ。


マルタは、「モンターン家の若いのが知らないのも当然だね。」と言う。


「あの事件はモンターン家からしたら、隠しておきたい不祥事なのさ。」


両家の因縁は12年前に遡る。


ウェーバー家には、当時16歳の娘ロザラインがいた。

ロザラインはテオの姉、ハリエットの従姉妹にあたる。


そのロザラインが誘拐された。 

犯人は、バルサザという名の青年だった。

彼は、モンターン家の使用人だったのだ。


ロザラインを攫って逃走したバルサザは、地元警察の捜索により森の奥で発見された。

発見時バルサザはロザラインを抱きしめる形で拘束しており、ロザラインの身を案じた警察によって銃殺された。


「ロザラインお嬢様はおけがもなく無事にお帰りになった。

でも、心が傷ついちまったんだろうね、それからすぐ出家しちまったよ。

今じゃ修道女になられて、教会にいらっしゃるよ。」


ウェーバー家はモンターン家に謝罪を求めた。

しかしモンターン家は、事件の責任は全てバルサザにあるとし、モンターン家は無関係という姿勢を貫いたのだという。


「モンターン家の奴らはそう言ったけどね、あたしらウェーバー家側の人間はそんなの信じちゃいないよ。

モンターンの奴らがバルサザに命じたに決まってる。」


ウェーバー家とモンターン家は、どちらも紡績業を営む実業家である。

モンターン家は、当時急成長していたウェーバー家を

商売敵として敵視していたという。


「モンターンの奴らはウェーバー家に嫉妬したんだろ。

だから嫌がらせにロザラインお嬢様を誘拐したんだとあたしは思うね。」


マルタはそう言うが、モンターン家側は誘拐について関与を認めていない。

また、警察の調べでもモンターン家が支持したという証拠は見つかっておらず、バルサザ1人による犯行として事件は処理されている。


しかしこの事件以来、ウェーバー家はモンターン家を憎んでいるのだ。

モンターン家の側も、言いがかりをつけられたとしてウェーバー家に対し恨みを持っている。

両家の関係は修復不可能な状態なのだ。



「モンターン家とウェーバー家の因縁は存在していたのですね。」


カメリアは「そのようですわね、ヒルダ。」と頷いた。


「誘拐事件についてはもっと詳しく調べなければなりませんわね。

モンターン家がどのように関係していたのかわかりませんから。

当事者の方にお話を聞けたら1番良いのですが。」


私たちはロザラインに話を聞くため、彼女がいるという教会へ向かった。


教会は街の中心部から少し離れた場所にあり、平素は神聖な静寂に包まれている。

しかし、カメリアが足を踏み入れた時、教会の前には人だかりがあった。


ざわめく人々の中には、依頼人ベンヤミンの姿もあった。

ベンヤミンはこちらに気づくと、「あぁ、カメリア様。来てくれたんですね。」とカメリアに会釈した。


「でも、遅かったみたいです。

本当に、酷い結末だ…。」


ベンヤミンは顔面蒼白だった。

カメリアは「いったい何が起こったのですか?」と問う。


「殺し合いですよ。

ルイスも、ハリエットも、ランドルフも、みんな死んでしまった…。」




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