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4 友情と失望

挿絵(By みてみん)


「ベンヤミン様、貴方はランドルフとハリエットを引き離そうとした何者かがいるとお考えなのですわね。

その人物が両家には因縁があると偽り、またテオにランドルフとハリエットの婚姻を告げ口したと。

そしてその人物こそ、マルセルなのではないかと疑っておられる。」


カメリアの確認に、ベンヤミンはこくりと頷いた。


「誤解をしてほしくないのですが、マルセルは決して悪どい男なんかじゃありません。

それから、ハリエットに横恋慕したのでもないです。」


ベンヤミンは挽回するように言った。

彼は友人を疑うことに罪悪感を感じているのだろう。


しかし、彼の主張が本当ならばマルセルの動機がわからない。

私は「ではベンヤミン様は、マルセルが2人が結ばるのを阻止しようとした理由はなんだと思うのですか。」と尋ねた。


「マルセルはアイデン子爵家の次男という高貴な生まれでしたが、その身分を窮屈に感じていて両親や兄に反抗していました。

だからマルセルは、同じ生きづらさを抱えるランドルフと通じ合っていたんです。」


大人でも子供でもない彼らは、言葉にできない生きづらさに悩み、社会に反発していた。

理解してほしいけれど、こどもだからと簡単に片付けられたくはない。

同じ悩みを抱える少年同士でしか孤独は埋められないと、そう感じていたのかもしれない。


「マルセルはランドルフが唯一の理解者だと思っていたし、ランドルフにとってもそうだと思ってた。

でもランドルフが必要としていたのは、同性の友人ではなく異性の恋人だった。」


ベンヤミンは苦しげな表情で、「俺はマルセルの孤独に気づいていながら、何もしてやれなかったんだ…。」と目を潤ませた。


カメリアは、「ご友人だった貴方は、マルセルのお気持ちをよくご存知だったのですわね。」とベンヤミンに寄り添うように語りかける。


「けれども、恐れながら貴方の推理は間違っていましてよ。

マルセルはこの惨劇を操った人物ではありませんわ。」


カメリアははっきりと言い切る。


「なぜそう思うのです。」


驚いたベンヤミンの問いに、カメリアは「理由は2つございますわ。」と言う。


「ベンヤミン様の話では、マルセルはハリエットのご両親がランドルフとの恋に反対すると考えていたのでしたね。」


もともとハリエットの両親は、娘とルイスの婚約を望んでいた。

ルイスとの婚約を破綻にし、アイデン子爵家の顔に泥をぬる選択をハリエットは両親は許さないだろうと、マルセルは危惧していたのだ。


「それならば、わざわざ両家の長年の因縁を捏造する必要はないでしょう。

そんなことをせずとも、ハリエットの両親とルイスという恋の障害があるのですから。」


両家の因縁は、マルセルによって捏造されたものではないのだ。


カメリアは「それからもう一つ、こちらが最大の理由ですわ。」と続ける。


「マルセルが自身の死を利用して2人を引き離そうとしたと、ベンヤミン様はお考えでしたわ。

でも、ランドルフがテオに復讐するかどうかは賭けになりますわ。」


結果的にはランドルフはテオに復讐したが、ランドルフがそうするとは限らなかったはずだ。


「ランドルフはハリエットのために、テオとの和解を望んでいた。

直前のランドルフの言動からは、ハリエットへの愛よりもマルセルとの友情を優先するとは考えずらいですわ。

ランドルフが報復して初めて両家の仲は険悪になるのですから、この計画はとても杜撰ですわ。」


マルセルはアイデン子爵家の者であり、モンターン家の血縁者ではない。

テオに殺されるだけでは両家の溝を決定的にすることはできないのだ。

マルセルが測ったとすれば、ランドルフがテオに報復しなければ、自分の死が全くの無駄になる計画である。


ベンヤミンは混乱した様子で髪をかきあげた。


「でも、マルセルはわざとテオの怒りを煽るようなことを言ったんです。

それに自分でナイフを引き抜いた。」


カメリアは「マルセルは最期、満足した表情を浮かべていたのですから、その時点で彼の目的は達成していたのではありませんこと。」と主張する。


「マルセルは、ランドルフが自分を忘れないと確信したから満足したのですわ。」


たとえ恋人ができようとも、目の前で死んだ友のことをきっと忘れはしない。

そう確信したから、マルセルは微笑んで逝ったのだ。


ベンヤミンは力が抜けたようにソファに沈んだ。


「あぁ、すまないマルセル。

君を疑ってしまったなんて…。」


ベンヤミンは目頭を抑えて俯いた。


マルセルの疑いは晴れた。

しかし、私はまだこの事件に疑問が残っていた。


「カメリア様、ウェーバー家とモンターン家の間には、因縁が本当にあるのでしょうか。

もしそうなら、なぜベンヤミン様が知らなかったのでしょうか。」


カメリアは「私もヒルダと同じことを考えていましたわ。」と同意する。


「それから、ランドルフとハリエットの婚姻をテオに告げ口したのは誰なのかも気になりますわ。

その人物はどうやって秘密を知ったのでしょうか。」


そしてカメリアは真剣な眼差しで言うのだった。


「この事件にはまだ解けていない謎が残されている。

私の探偵としての役目はこれで終わりではないのですわ。」





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