「刻式」
数日後。
閃は、牧やクレアの協力を得ながら、あの時自分の身に起きた謎の力について詳しく調べていた。
調査の結果、いくつかの事実が判明してきた。
まず、測定の結果、閃のエーテル波が普段と変化していること。
この点については、閃自身も感覚的に理解していた。
フレアⅢでの脱出時、閃が無意識に発動していたスキル。
自身を中心に特殊な電磁場を展開し、その範囲内の時間の流れを遅らせるというものだった。
有効範囲は、生身の状態で約30メートル。
ED搭乗時には約300メートルまで拡大される。
さらに最大持続時間は、閃の体感でおよそ10秒。
短時間ではあるが、その効果は絶大。
ただし、エーテルの消費量も多く、発動中は他のスキルを併用できなくなるという制約もあった。
今回の件は、エーテルという存在に未だ解明されていない領域が数多く残されていることを、改めて関係者たちへ認識させる出来事となった。
◆
閃は、その調査結果を烈に話していた。
「はー……なるほどな」
烈は感心したように頷く。
「でも、なんで急にそんな力が出たんだ?」
烈は率直な疑問を口にした。
「これはあくまで俺の予想なんだけどさ」
閃は少し考えてから答える。
「前にファイと戦った時、イノが俺たちに自分のエーテルを分けてくれたやん?」
「あぁ」
烈も覚えている。
「俺とイノって、エーテルの波長がやたら合うというか……相性がいいんだよ」
「だから多分、その時にもらったイノのエーテルが、ずっと俺の中に残ってたんじゃないかと思う」
閃はそう言った。
烈はしばらく黙り込む。
そして、小さく呟いた。
「イノが……助けてくれたんだな」
仲間を守ること。
それはイノが最も強く願うことだった。
あの時、閃の中にあった“必ず助ける”という強い思い。
誰一人見捨てないという覚悟。
それが引き金となり、残されていたイノのエーテルと閃自身のエーテルが共鳴した。
その結果として、あの現象が起きたのかもしれない。
閃の脳裏に一瞬だけイノの後ろ姿が浮かんだのも、その影響だった。
「もし、イノがいなかったら——あの時、俺たち全滅してたかもしれない」
閃は静かに言った。
「あぁ……」
烈も小さく頷く。
2人の間に、しばし静かな時間が流れる。
遠く離れた場所にいるはずの仲間が、知らないところで自分たちを救っていた。
その事実が、2人の胸に深く残っていた。
◆
「ところでよ、“名前”は考えてるのか?」
烈がふと思い出したように言った。
「あぁ、もう決めてる」
閃は即答する。
「“刻式”」
その名を聞いた烈は、思わず笑みを浮かべた。
「かっけぇな!」
素直な感想だった。
これまでとは異なる新たな力。
その名は確かによく似合っていた。
「……変な使い方、すんなよ?」
烈がイタズラな笑みを浮かべ言った。
「グヘヘ」
閃はアホ毛をカールさせた。
そして、2人は顔を見合わせ笑った。
刻式——
それは偶然生まれた力ではない。
仲間を救いたいという強い意志と、イノから託されたエーテルが生み出した新たな可能性だった。




