「メル再動」
閃はシャワーを浴び終え、食堂へ向かっていた。
その時——
突然、後ろから抱きつかれる。
「くぉっ!?」
驚いた閃のアホ毛がピンッと立った。
振り返ると、そこにいたのはメルだった。
「メル!久しぶり!!」
閃はぱっと表情を明るくする。
「せっちゃーん♡寂しかったァ♡?」
メルも満面の笑みを浮かべていた。
以前と変わらない、甘えるような口調。
だが、その服装には一つ変化があった。
赤いワンピースの上から、オルフェのブルゾンを羽織っている。
その姿を見た閃は目を輝かせた。
「おぉ!ついにメルもオルフェの一員になったんだ!」
嬉しそうに言いながら、閃はメルのツインテールを軽くつつく。
「えへへ~♡」
メルは機嫌よさそうに笑った。
エドワードの一件の後、メルは正式にオルフェへ所属するため、1ヶ月以上日本支部を離れていた。
そして今日、ようやく戻ってきたのである。
メルのオルフェでの役職は防衛隊員。
各国のオルフェ支部には、EDやファクターだけでなく、自衛戦力としてSD防衛部隊も配備されている。
もっとも、日本支部は少し特殊だった。
ファクターズに加え、訓練生も在籍しているため、SDによる防衛を必要とする場面がほとんどない。
そのため、日本支部に配備されているSDはわずか2機だけだった。
メルは、その貴重な防衛戦力の一員として正式に配属されたのである。
◆
メルがオルフェへ入った理由について本人は、“ヒマだから”、あるいは“さすがにタダ暮らしするほど図々しくないから”——と軽い調子で話していた。
だが、それが本音なのかどうかは誰にも分からない。
元天華連盟の強化兵。
しかも最高戦力であるΩクラス。
その経歴を考えれば、本来なら簡単に受け入れられる存在ではない。
しかし、日本支部での生活態度や日頃の様子が評価され、危険性は低いと判断されたのである。
そもそもオルフェは、その組織の性質上、世界中の様々な勢力から狙われやすい。
さらにエーテル保有者の保護を掲げる以上、防衛戦力と抑止力は必要不可欠だった。
その点において、メルの存在価値は非常に大きい。
戦闘能力だけを見れば、彼女は間違いなくトップクラスの戦力だった。
メルは、イギリスにあるオルフェ本部へ渡り、様々な面談や適性検査、心理検査を受けることになる。
そして——
最終的に問題なしと判断された。
こうしてメルは正式にオルフェの一員となり、防衛隊所属として新たな立場を得たのである。
◆
メルはトーマスや松永への報告を終えた後、食堂へ向かった。
そこで偶然、閃の後ろ姿を発見した。
せっかくの再会ということもあり、2人は少し遅めの昼食を取ることにした。
それぞれ食事を受け取り、向かい合って席に着く。
「どうだった?本部」
閃が尋ねた。
「やっぱ本部だけあってデカかった」
メルはフォークを動かしながら答える。
「難しかった?」
「ぜーんぜん?」
「めんどくさかっただけー」
メルはあっさりと言った。
閃をはじめとするエーテル保有者たちは、一般職員とはまったく異なる手続きや教育課程を受けている。
そのため、メルのような通常職員がどのような審査や研修を受けるのか、実はよく知らなかった。
「せっちゃん達はどうだった?」
今度はメルが尋ねる。
すると閃は少し考え、
「もう、色々ありすぎて——」
「なになに~?」
メルが興味津々な様子で身を乗り出す。
こうして2人は食事をしながら、それぞれの不在期間に起きた出来事を語り合った。
久しぶりに流れる、どこか穏やかな時間だった。




