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エーテルコード:ヴァリアスワールド  作者: エトコッコ
天華天明篇

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第14話「模擬戦①」


閃と別れたあと、ハーリーは残っていた仕事を手際よく片づけると、マークに連絡を入れた。


『博士、ちょうどよかった』


「どうされました?」


ハーリーが尋ねる。


『先ほどまで、トーマス総帥と連絡を取っていたんだが——』


マークは、先ほど共有された情報について話し始めた。


天華天明による襲撃。


実は、イギリス本部が襲撃を受けたのとほぼ同時刻に、日本支部も攻撃を受けていたという。


そして——


日本支部を襲撃した部隊には、例の紫色のレギオン——ワイバーンレギオンの姿があった。


さらに、搭乗していたのがΩクラス強化兵であることも確定した。


「やはり、そうでしたか……」


ハーリーは表情を曇らせる。


『ああ。ただ——』


マークは少し間を置いた。


『どうやら、我々が考えていたより複雑な事情があるらしい』


「複雑な事情……?」


ハーリーは聞き返した。


ワイバーンレギオンのサキ。


彼女は、自らの意思だけで天華天明に協力しているわけではない。


日本支部での戦闘によって、その事実も明らかになっていた。



「なるほど……」


ハーリーは、静かに頷いた。


『それはそうと——』


『博士の方は、何かあったのかね?』


「あぁ、そうでした」


ハーリーは思い出したように言った。


「マーク本部長に、ご相談がありまして——」


先ほど閃から聞いた提案について話した。


ミラを一時的に日本支部へ派遣し、ファクターズと共に訓練や任務を経験させること。


その間、本部の戦力を補うため、他支部からファクターを派遣してもらうこと。


『ふむ……』


一通り話を聞いたマークは、少し考え込んだ。


「それに、“新型”も近々ロールアウト予定ですし、タイミングとしてもちょうどいいかと……」


ハーリーは言った。


マークは厳格な人物ではある。


しかし、決して頭の固い人間ではない。


必要性と合理性があれば、新しい提案にも柔軟に耳を傾ける。


それはハーリーをはじめ、長く彼と仕事をしてきた者なら誰もが知っていた。


『……わかった』


しばらく考えた後、マークは答えた。


『まずは他支部と連絡を取ってみよう』


「ありがとうございます。よろしくお願いします」


ハーリーは笑顔で言った。



一方——


地下にあるED訓練所には、5機のトルーパーが並んでいた。


そのうち4機に乗っているのは、ユイン、エミリー、ソフィー、アリシア。


そして、残る1機には——


(久しぶりだなー、この感覚)


閃が乗っていた。


機体は、元々ミラが使用していたトルーパーだ。


EDのコクピットは基本的に共通規格となっている。


そのため、操作そのものに戸惑うことはない。


しかし——


(やっぱ、バサラヲとは全然違うな)


バサラヲは閃専用に開発された機体。


対して、今乗っているトルーパーは量産型。


同じEDとはいえ、実際に動かした時の感覚には明確な違いがあった。


今回、閃がトルーパーに乗っているのは、ユインたち4人が普段どのような訓練を行っているのか、実際に間近で確認するためだ。


訓練所の観測室には、他の職員たちに混じって烈の姿もあった。


『まずは、普段通りトレーニングしてみて』


閃は通信で4人に言った。


『はい、先生!』


ユインとエミリーが元気よく答える。


『よろしくお願いします……』


ソフィーは相変わらず、消え入りそうな声だ。


『はぁーい♪』


アリシアは、いつもの調子で緩い返事をした。


そして——


4機のトルーパーは、それぞれ普段行っている訓練を開始した。



(……ん?)


4人のトレーニングを見ていた閃は、少し意外に思った。


実戦経験はほとんどないと聞いていた。


しかし、実際に目の前で見るトルーパーの動きは、まったく悪くない。


それどころか、個々の技量だけで見れば、日本支部の訓練生と同等——部分的にはそれ以上かもしれない。


もっとも、日本支部では個々の能力を伸ばすだけでなく、チームとして連携して動くことを前提に訓練している。


単純に比較できるものではない。


それを踏まえても、4人には閃が予想していた以上の実力があるように思えた。


そして——


同じ光景を観測室から見ていた烈も、同じことを感じていた。



30分ほど経ったあと。


「よし、みんな。15分休んで」


閃の指示で、4人はトレーニングを中断した。


それぞれトルーパーから降り、小休憩に入る。


閃もトルーパーから降りると、4人のもとへ向かった。


「4人とも、体は温まった?」


「うん!」


ユインが元気よく答える。


「ちょうどいいよ!」


エミリーも笑顔で言った。


「……はい」


ソフィーは小さな声で答える。


「ええ」


アリシアも頷いた。


「よし」


4人の様子を確認し、閃は頷く。


「じゃあ、休憩が終わったら、俺と模擬戦しよう」


「え、本当に!?」


ユインの目が一気に輝いた。


「うん。4人とも、動きよかったよ」


閃は素直に評価した。


「そーかなぁ」


エミリーは嬉しそうに笑う。


「あとは、模擬戦で、みんなの動きの癖を見たい」


トレーニングだけでは見えない部分もある。


相手がいる状況でどう動き、どう判断するのか。


それを確かめるには、実際に戦ってみるのが一番だった。

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