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エーテルコード:ヴァリアスワールド  作者: エトコッコ
天華天明篇

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第11話「提案」


天華が日本支部を襲撃する、1日前の深夜。


ミラは、格納庫にいた。


目の前には、エウリューラが格納されている。


ミラはしばらく黙ったまま、その機体を見上げていた。


すると——


「ミラさん」


後ろから声をかけられた。


ミラが振り返る。


「あら、閃くん」


そこにいたのは閃だった。


「どうしたんですか?こんな夜中に」


閃が尋ねる。


「ちょっと気分転換してたの」


「閃くんは?」


「僕は散歩してました」


「そうなのね」


ミラは笑顔で返した。



「閃くんって——」


ミラがふと口を開いた。


「ファクターズのリーダーでいること、プレッシャーに感じたことある?」


閃は少し考えてから答える。


「最初の頃は多少ありました」


「でも、リーダーだからって、何でも1人でやるわけじゃないし」


「むしろ、仲間に頼りっぱなしですよ」


閃は笑顔で言った。


「そっか……」


ミラは小さく呟く。


そして、閃の顔を見つめた。


「本当にすごいよ、閃くん」


「て、照れますなぁ……」


閃は顔を赤くしながら、照れくさそうに目を逸らした。


その頭の上では、アホ毛が左右にふりふりと揺れている。


(あ、また動いてる……)


ミラは思わず、揺れるアホ毛に目を奪われ、その動きを目で追っていた。



「エウリューラは——」


ミラは目の前のエウリューラを見上げながら、静かに口を開いた。


「本来、もっと力のある機体なの」


閃もエウリューラを見上げる。


「でも、ファクターである私が……その力を引き出せてないの……」


ミラは俯いた。


「あの時、あのレギオンが見逃してくれなかったら……私は間違いなく死んでた」


「そしたら、この場所も……ここの人たちも——」


ミラは少し言葉を詰まらせる。


「あの子たちも、守れなかった……」


「ミラさん……」


閃は小さく呟いた。


「……ごめんなさい。こんな暗い話」


ミラは申し訳なさそうに微笑んだ。


「いえ……」


閃は首を横に振る。


「ミラさんの気持ち、すごくわかります」


それは慰めるためだけの言葉ではなかった。


閃自身——そしてファクターズも、これまで幾度となく九死に一生を得るような経験をしてきた。


「俺たちも、何度もあったんです」


閃は自分たちの経験をミラに話し始めた。


宇宙でのフレアⅢ攻略戦。


あの時、もし運よく《刻式》が発動していなければ、ファクターズは全滅していた可能性が高い。


そして、エジプトでの人造魔獣との戦い。


あの時も、G.H.O.S.T.の2人が駆けつけてくれなければ、自分は死んでいたかもしれない。


「だから僕も、後から色々考えることありますよ」


閃は言った。


ミラは、静かに閃の話を聞いていた。



「そんなに色んな経験をしてきたのね……」


ミラは感慨深そうに言った。


目の前にいる可愛らしい少年からは、とても想像できないような経験ばかりだった。


「ありがとう。閃くんの話を聞いてたら、何だか勇気が湧いてきちゃった」


ミラは柔らかく微笑んだ。


「よかったです」


閃も笑顔で答える。


「……もう一つ、相談してもいい?」


「いいですよ」


閃はすぐに答えた。


「ありがとう」


ミラは少し考えてから、口を開く。


「ケガが治って復帰しても……これからどうやって訓練していけばいいのか分からなくて……」


ミラは言った。


本部には4人のハーフファクターがいる。


しかし、エーテルファクターはミラだけ。


そのため、どうしてもできることには限界がある。


それは今に始まったことではない。


ミラはこれまでも、試行錯誤しながら訓練を続けてきた。


だが——


ワイバーンレギオンとの敗北を経験した今、これまでと同じ訓練を続けるだけではいけない。


もっと強くなりたい。


エウリューラの力を、もっと引き出せるようになりたい。


そう思う一方で、具体的に何をすればいいのかが分からなかった。


「だから……」


「これから私ひとりで、どうやってレベルアップしていけばいいのかなって……」


ミラは少し困ったように笑った。


閃は腕を組み、少し考え込んだ。



「うーん。確かに……」


閃は腕を組み、しばらく考えた。


「一番いいのは——」


「ミラさんが一時的に日本支部に来て、僕たちと一緒に行動するってのが理想ですね」


「え?私がファクターズと一緒に?」


ミラは目を丸くした。


そんな選択肢は考えたこともなかった。


「日本支部には、ミラさんと同じ風のファクターもいるし」


「ファクターズと一緒に色んな任務に参加してたら、嫌でもレベルアップするかなーって」


閃は笑いながら言った。


ミラの表情が、ぱっと明るくなる。


確かに——


今のミラにとって、それはかなり理想的な環境だった。


同じ風属性の音から学べることも多いはずだ。


そして何より、数々の実戦を経験してきたファクターズと共に行動できる。


「ミラさんがいない間は、アメリカかイタリアからファクターを派遣してもらって、本部をカバーするとか」


閃は続けた。


「それなら……」


ミラの目がさらに輝く。


しかし——


すぐに不安そうな表情になった。


「でも、本部が許してくれるかな……?」


「うーん……」


閃は少し考える。


「ダメ元で相談しときましょうか?」


「いいの?」


「もちろん」


閃は笑顔で答えた。


「ありがとう、閃くん!」


ミラも嬉しそうに笑った。


「その代わり——」


閃はミラの右腕に巻かれた包帯を見る。


「今は治療に専念してくださいね」


「うん!」


ミラは笑顔で頷いた。


そんな2人のやり取りを、少し離れた場所から、不安そうに覗いている人影があった。


(……2人とも、何話してるんだろう)


ソフィーだった。


(なんか、すごくいい雰囲気……)


(ミラも、すごく笑顔だし……)


ソフィーはじーっと2人を見つめる。


そして、胸の奥がそわそわしていた。

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