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エーテルコード:ヴァリアスワールド  作者: エトコッコ
天華天明篇

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第7話「シスターズ」


「おっ、噂をすればだね」


ハーリーが声を上げた。


その視線の先を見ると、5人の女性がこちらへ向かって歩いてきていた。


すると——


その中にいた青髪に褐色肌の少女が、閃と烈の姿を見つけた瞬間、真っ先に駆け出した。


エミリーだった。


「わぁぁ!本物のファクターズだー!」


エミリーは目を輝かせながら、2人のもとへ駆け寄ってきた。


「あっ!博士、こんにちはっ!」


途中でハーリーに気づき、元気よく挨拶する。


「はい、こんにちは」


ハーリーも笑みを浮かべて答えた。


エミリーは改めて閃と烈を見る。


「あたし、エミリー!」


満面の笑みを浮かべ、自己紹介した。


「上矢 閃だよ。よろしくね、エミリー」


閃も笑顔で答え、エミリーと握手を交わした。


「新井 烈だ。よろしくな」


烈も続いてエミリーと握手する。


「よろしくねっ!」


エミリーは嬉しそうに、2人の手を握り返した。



「ちょっとエミリー!抜け駆けしないでよー!」


後ろから声が飛んできた。


閃と烈がエミリーの後ろを見る。


声の主は、ユインだった。


そして、その後ろには残る3人の姿もある。


「シスターズが揃ったね」


ハーリーは笑いながら言った。


シスターズ——


ミラ、ユイン、エミリー、ソフィー、アリシア。


イギリス本部に所属する5人のファクターたちの愛称である。


ファクターズのような正式なチーム名ではないが、普段から仲が良く、その姿がまるで姉妹のように見えることから、周囲のスタッフたちに“シスターズ”と呼ばれていた。


ミラが一歩前へ出る。


「初めまして。私はミラ・ヴェネット。エウリューラのEDファクターです」


ミラは丁寧にお辞儀をした。


しかし、その姿は痛々しい。


頭には包帯が巻かれ、骨折した右腕も固定されていた。


「ミラさん、ケガは大丈夫ですか?」


閃が心配そうに尋ねた。


先ほどハーリーから、比較的軽傷だったとは聞いている。


それでも、本人の姿を目の前にすると、やはり気になった。


「ええ、大丈夫よ」


ミラは微笑んで答えた。


そして、少し目を伏せる。


「……こんな情けない姿で、恥ずかしいわ」


どこか申し訳なさそうに、ミラは言った。



「私は李 雨音——ユインです!」


続いて、ユインが元気よく自己紹介した。


「あ、あのっ!」


「ん?」


突然声を上げたユインに、烈が反応する。


ユインは烈の方を向くと、その姿をまじまじと見つめた。


そして——


「烈さん!……いや、“烈師匠”!!」


「し、師匠!?」


あまりにも突然の呼び方に、烈は目を丸くした。


「私の師匠になってください!!」


ユインは真っ直ぐな目で烈を見つめながら、勢いよく頭を下げた。


「師匠って……」


烈は完全に困惑していた。


「弟子ができたね」


その隣では、閃がニヤニヤしながら烈を見ていた。


アホ毛がクルンッとカールする。


(えっ……!?)


ミラは目を見開いた。


(今、髪の毛変化した……?)


自分の目がおかしくなったのかと疑うように、閃の頭を二度見する。


「ユイン、いきなり烈くんを困らせちゃダメだよ?」


ハーリーが苦笑しながら言った。


「う……」


ユインは我に返ったように烈を見る。


「ご、ごめんなさい……」


ペコッと頭を下げた。



閃は、さっきからユインの背後に隠れている人物が気になっていた。


もっとも——


ユイン自身が小柄なため、全く隠れきれていない。


身体の大半が普通に見えていた。


「ほら、ソフィー。挨拶は?」


ユインが後ろを振り返って言った。


「…………」


ソフィーは、ユインの背後から恐る恐る顔を覗かせる。


閃と烈を見ると——


「…………ソフィーです」


今にも消え入りそうな声で、それだけ言った。


そして、すぐにユインの後ろへ顔を隠してしまう。


すると、エミリーがソフィーの頭を優しくポンポンと撫でた。


「ソフィーはね、極度の人見知りなの」


「そっか……」


閃は頷いた。


見れば分かる。


閃は心の中でそう思った。



最後は、アリシアだった。


「わたくしはアリシア・デル・メール。よろしくお願いしますわ」


アリシアはスカートの両端を軽くつまみ、優雅に広げながら挨拶した。


その仕草は、いかにも良家の娘といった丁寧な所作だった。


これで、シスターズ全員との挨拶を終えた。


(なるほどな……)


閃は改めて5人を見る。


ミラ、ユイン、エミリー、ソフィー、アリシア。


5人ともタイプはまるで違うが、全員が目を引くほど可愛らしい。


本部へ向かう前、なぜかクレアがやたらとそわそわしていたのを見て、閃は不思議に思っていた。


その理由が、今になって何となくわかった。


「ねぇ、ここにはどれくらいいるの?」


エミリーが尋ねる。


「まだ未定だよ」


閃が答えた。


「じゃあ、ここにいる間、私たちを鍛えてください!」


ユインがすかさず言った。


「ユイン……」


ハーリーは苦笑いする。


「まだ2人はここに来て間もないんだから……」


「……あの」


それまで静かにしていたソフィーが、小さな声で口を開いた。


「……そろそろ任務の時間だよ?」


「あ!本当だ!」


エミリーが慌てて時間を確認する。


「それでは、また後で」


ミラが2人に微笑みかけた。


そして、シスターズは揃ってその場を後にした。



「みんな、個性的だろ?」


去っていく5人の後ろ姿を見ながら、ハーリーは笑って言った。


その表情は、まるで娘たちを見守る父親のようだった。


「皆さん、可愛いですね」


閃が言った。


「あはは。あの子たち、他支部でも評判なんだ」


ハーリーは楽しそうに笑う。


「烈ちゃんなんて、鼻の下伸ばしちゃって……」


閃がニヤニヤしながら烈を見る。


「伸ばしてねぇよ!!!」


烈は即座に否定した。


そんな2人のやり取りを、ハーリーは笑いながら見ていた。



「あの……ハーリー博士」


ふと、閃が声をかける。


「ん?なんだい?」


閃には、少し疑問に思っていたことがあった。


「ファクターズに、音って女の子がいるんですけど」


「もちろん知ってるよ。ミラと同じ、風のファクターの子でしょ?」


「そうです」


閃は頷いた。


「君たちファクターズは有名も有名。オルフェで知らない人なんていないよ」


「あはは……そうなんですね」


閃は少し照れくさそうに頭を掻いた。


「それで、音のエーテルスキルを使えば……ミラさんのケガも、すぐに治せるんじゃないかなって思って」


今回の派遣が決まった時から、それが少し気になっていた。


音の《治癒のウィンド》があれば、ミラのケガを治し、すぐに戦力へ復帰させることもできるはず。


それは閃だけではなく、他のメンバーも同じように考えていた。


しかし——


それを踏まえた上で、今回の人選には何か理由があるのだろう。


そう考え、その場ではあえて尋ねなかったのだ。



閃から一通り話を聞いたハーリーは、少し間を置いてから口を開いた。


「実はね……確かに、その話もあったんだよ」


「でも——あえてそうしなかったんだ」


ハーリーは少し複雑そうな表情を浮かべた。


「あえて、ミラのケガをすぐに治さないためにね」


「……?」


閃と烈がハーリーを見る。


「ミラはね、自分自身にすごく厳しい子なんだ」


ハーリーは、先ほどミラたちが去っていった方へ目を向ける。


「シスターズの中では、一番早くファクターに覚醒したこともあってね……ずっと頑張りすぎてたんだ」


「その中で、今回の敗北……」


ハーリーは少し間を置いた。


「今のミラを完全に回復させたら、きっとすぐに訓練を始める。そして、また戦おうとするだろう」


閃と烈は黙って聞いていた。


「だから、今回はあえてケガを治さず、自然に回復するまで休ませることにしたんだ」


「身体を休ませるのはもちろんだけど——」


「今のミラには、心を休ませる時間も必要だからね」


「……そういった事情があったんですね」


閃と烈は納得したように頷いた。


2人はようやく、今回の人選の理由を理解した。

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